引き金 魔法の光の盾 (短縮化済2025)
「うおおおおお!」
ドドドドド……
ゲシゲシッ! カンカンッ
雪乃フルエレが呆然と見守る中、衣図ライグ達は凄まじい勢いで敵に突っ込み戦闘を繰り広げる。
「わわわ、衣図さん達戦いながらどっか行っちゃう、どうするのよ!」
だがフルエレ達の周囲にはまだ残された敵兵士達もいた。ケチらされ恨みのこもる敵兵達が、見るからに弱そうな美少女と村人に逆襲しに向かって来る。
ドドド……
「危ない!」
サイドカー付き魔輪に乗ったフルエレが、腕輪を発動させて巨大な光の壁を作った。十数人全員が隠れる程の巨大な光の壁が現れる。
シュババーーッ!!
「皆後ろに入って!!」
「凄い」
「ほいほい」
バシッ!
ガシーーンッ!
飛んで来る全ての矢や魔法がバシバシ跳ね返される。普通の魔力ならこれ程までに大きく完璧な防御など出来ない物であった。
「ちょ、ちょっとこれいつまで持つのよ!?」
「よし皆今じゃ、投げまくれ!」
「ふぉふぉ魔法瓶をくらえい」
この隙に、じいさん達が袋に沢山持ってきた魔法瓶を猛烈に投げまくった。
ぽいぽい、ドドーーーーン!!
「ギャーッ」
投げ付けた魔法瓶が襲い来る敵一団を吹き飛ばし、思わずフルエレは目を閉じる。
(あ、ああ……)
「あっ」
ふと気付くと最初は必死過ぎて全く目に入っていなかったが、足元には魔銃を握り締めたまま絶命している若い兵士の死体が転がっていた……
(うっ衣図さん達が倒した敵兵の死体……)
「……」
フルエレが地面に転がる死体を見つめ一瞬戦場を忘れている直後だった。
「おのれっ!」
「な、何じゃ? ゲッ後ろを忘れておったっ」
巨大な魔法シールドの裏側に回り込む事を思い付いた一人の敵兵が、最後尾にいた爺さん兵をけり倒し剣を振りかぶって切り殺そうとしていた。
(危ない!?)
バンッッ!!
振り返ったフルエレは片手で防御魔法陣を立て掛けたまま、とっさに若い兵士の心臓を正確に撃ち抜いていた。
どさっ
「あ……撃っちゃった」
「うひょっ助かったぞい」
倒された爺さんは、撃たれたばかりの兵士の死体を押しのけて立ち上がり再び魔法瓶を掴んだ。
ぐいっ
(う……)
ドドーーーン! ダンダン……
一見無謀にも思える村民部隊の戦いだったが、もぬけの殻となっていた砦への侵入を防ぎ残敵の掃討という役割は果たしていた。
同じ頃、騎馬突撃を開始していた衣図ライグは多少苦戦し始めていた。やはり元々の数の差が大きく先程の様に騎馬隊の突破力だけでごり押し出来る状況では無かった。
(やっぱ甘かったかな?)
その時であった。
ギョバアギャアアア!!
異様な駆動音を立て、猛烈な勢いのバックで魔戦車が目の前の中央部隊のただ中に飛び込んで来た。
ドッバァアア!
「うわぁわああ?」
「何だこりゃあ!」
「ハハハハハ」
その砲塔上には、腕を組んで仁王立ちして立つ砂緒の姿があった。彼は次々に魔戦車を潰して行き、ようやく最後の6両目に乗っかった時、その中の魔導士達は錯乱して全速後退で振り落とそうとして、遂に敵味方部隊を巻き込み始めていた……
ギョバーッゴリガリッ
「おっおい、お前ら此処にゃ味方が居るぞっ!?」
ギョバババッ
「ギャーーーッ!」
「魔戦車がっ!?」
「どけっお前ら!!」
ニナルティナ歩兵部隊は次々にキャタピラに踏まれまいと大混乱に陥って、衣図達との戦闘処では無くなっていた。
バキバキバキ
メキメキ……
「すげえな、何事だっ」
あまりの出来事に唖然とする衣図の真横を砂緒の魔戦車が駆け抜けて行った。
ドドド……
ギョバーーーッ
「ハハハハハハハ、これでラストッ!」
ボコッ!
その直後、砲塔上に立つ目付きの悪い少年砂緒がしゃがんだ瞬間、最後の魔戦車はベコベキと大きくひしゃげて行く。
(これが砂緒さんか?)