村人もフルエレも出撃 (短縮化済2025)
「イェラ一隊を率いて南林の伏兵に気付かれぬ様に潜め、伏兵を討つ伏兵って訳だ!」
「有難い。必ず成功させよう」
長身の美女はイェラという名前の様だ。彼女は言葉少ないが、衣図の信頼が厚そうだった。
「野郎ども魔法瓶はバッチリ持ったか? お前らの故郷を守る為、ニナルティナ大都会のヒヨッコ共に野蛮人パワー見せつけてやれ!! 一人でも多くやつらを地獄に道連れにしろ!」
魔法瓶とは魔法力で爆発する手りゅう弾である……
「大将ーーー!!」
「うおーやってやるぜっ」
男共に雪乃フルエレは圧倒されるだけだった。
「よっしゃ、リュフミュラン義勇軍出陣!!!」
そう衣図が叫ぶと男どもが一斉に飛び出し整列し、ひと塊となって戦場のただ中に出撃して行く。
「各自魔法防御展開、守備力向上詠唱……突撃ぃーーー!!」
(うわわ、うわ、始まっちゃった!)
そこに最後にヨボヨボのお爺さん達までもが続こうとして驚いてコケた。
「わ、わしらも遅れず行くぞ~」
「うひょー」
(え!?)
「あ、あの人達も、行っちゃうんですか!?」
フルエレは腕を組み割と平然と砦に残るリズに慌てて聞いた。
「病気や飢饉で死ぬのも、戦争で死ぬのもその人の自由なのよ」
優しさなのか投げやりなのか無関心なのか、よく分からない事を無表情で言うリズ。
「放っておけない、私も行く!」
早く砂緒に会いたいという事が半分だが本当にお爺さん達が心配という気がして、発作的に魔輪に飛び乗っているフルエレ。
「ちょちょ、ちょい待ちなさいっ」
ガシッ!
リズが慌ててサイドカーのハンドルを掴む。
「私は死にたくないから行けないけど、これを貸して上げるわ!」
手首に付けていた金属のリングをフルエレに渡し、そしてそれを手首に付けろというジェスチャーを繰り返した。
クイクイッ
「貴方魔力はあるのよね? 魔力に応じて魔法と物理両用の防御魔法陣が出るリングよ、これを付けて! 爺さん共より何より自分自身を守るのよ分かった?!」
結構サバサバしたいい加減な人かと思っていたが、その目は真剣でフルエレの身を真剣に案じてくれてはいるようだ。
「有難うございます……気を付けて行ってきます」
「気を付けなさい!」
雪乃フルエレは一瞬振り返ると、構わず魔輪で戦場に疾走り出した。