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砂緒、早く魔ローダーを止めてっっ!!

 バシィイイッッッ!!!

ココナツヒメの魔ローダーの氷の刃の様な透明で巨大な長い剣が、居並ぶ各国代表に向けて高速で振り下ろされるが、それが人々の頭上に激突する直前、フルエレの防御魔法陣ブレスレットが展開して光のシールドが剣を受け止めた。


「何ですの!? 人間が私の魔ローダール・ワンの剣を受け止めるですって!?」


 ギリギリと音を立て、フルエレのブレスレットが剣を受け止める。当然の話だが、この防御魔法陣はそれ自体が巨大な盾であるばかりで無く、バッファーともなっており、衝撃も逃がす役割もあった。そうでなければフルエレの、か細い腕や背骨は簡単に折れてしまうだろう。


「きゃーーーーー、だめぇーーーーなんとかしてえーーーー!?」


 巨大な剣を受け止めるフルエレは大声で叫んだ。と、実はその横ではフルエレに突き飛ばされ少し離れた場所で、久しぶりに全開で硬化した砂緒が、スピネルの魔ローダーデスペラード改の剣を受け止めていた。


「砂緒がここにっ!?」


 スピネルは一瞬ぎょっとした。


「スピネルさんそちらは良いですわ。こっちの方が要人が集まっていますわ! こっちに来て一緒に剣を連打してください!!」

「はっ」


 スピネルは砂緒を放置して、魔ローダーをフルエレに向かわせた。


「そらそらそら!!」

「二機の攻撃に何時まで持ち堪えますかしらっ!!」


 ココナツヒメとスピネルは揃ってフルエレの防御シールドに向けて、巨大な剣を振り下ろして連打し始めた。

 ガシッガシッガシッ!!!


「きゃーーーーーーーーなんとかしてぇえええええええええええええ」

「ふ、フルエレこれは一体何ですの??」


 各国代表者と偶然舞台上にいた侍女や使いの人々は逃げそこない、仕方なくフルエレを中心に集まる。


「フルエレ!! すぐに向かいます!!」


 砂緒がフルエレを助けようと叫んだ。


「来ちゃだめっ!!」


 即座にフルエレが言い返した。


「え?」

「そこの可愛いメイドさん、私の胸元に宝石が入っているから、向こうの銀髪三白眼に投げて渡してあげてっ!!」


 突然フルエレに声を掛けられた璃凪(りな)は驚いた。


「早くっ!!」

「は、はい、失礼致しますわ」


 璃凪は慌てて緊張で震える手で、フルエレの胸元に指先を突っ込んだ。


(あ、嗚呼あああ、少し汗ばんだ淡雪のように真白い柔肌に私の指先が触れている……)


「何してるの?」


 一瞬妖しい目をした璃凪をじとっとした目で美魅ィ(みみい)が睨んだ。


「早くしてっ!!」

「は、はい……失礼します」


 震えて宝石がどんどん胸の谷間の奥に押し込まれるが、なんとか引っ張り出す。


「それを銀髪三白眼に!」

「銀髪三白眼さん宝石を!」


 璃凪は魔ローダー蛇輪の始動鍵宝石を砂緒に投げた。投げた瞬間にキラッと煌めいた。


「砂緒! 誰かスカウトして蛇輪でこいつらを退けて!! 早くっ!!」

「わかりましたっ!! 魔呂に乗れる方来て下さい!!」

「わ、私がっ!!」


 美魅ィが恐々手を挙げた。


「瑠璃ィ、早く来て下さい!!」


 美魅ィを無視して砂緒が突然瑠璃ィを指名した。


「へ? な、何でウチがおるん分ってるんや??」

「も、もう何だっていいでしょ、このままだと皆死んじゃう、王子は預かります、瑠璃ィさま凄く強いのですから、早く敵をやっつけて下さいましっ!!」

「よっしゃあ! 王子を頼むで!!」


 瑠璃ィは気絶したままの王子をメアに傾けた。王子は意外な程重かった。


「うわ凄い重いです。上に乗って襲われても絶対抵抗出来ない~~うーー」


 メアは足を踏ん張って王子を支えた。その間もバシバシと二機の魔ローダーは攻撃を続けている。


「ええい、鼠の様にちょこまかと何をやっているの!」

「だめっ、ブレスレットに一個ヒビが入って来た。早くして砂緒!!」


 両手を高く掲げて防御魔法陣を張るフルエレだったが、まだまだ魔力は無尽蔵に出てきたが、ブレスレットの方が限度を越えそうになっていた。


「が、がんばりなさいよフルエレ」


 七華は声が震えた。


「行くで彼氏さん!!」

「ぃやん」


 瑠璃ィは宝石を受け取ってあたふたする砂緒をお姫様抱っこすると、ぴょんぴょんと物凄い脚力で各所を足場にしてジャンプし、会場の目の前で片膝を立てて座る魔ローダー蛇輪の操縦席に滑り込んだ。


「宝石を嵌めました。瑠璃ィとにかくあの二機を倒して下さい!!」


 言いながら砂緒は下の座席に行くとシートベルトを締めた。


「何で彼氏さんウチが瑠璃ィって分かったんや?」

「何故って、聞き覚えのある三十代から四十代を思わせる声色に」

「ウチ、二十九やで」

「程よい肉付きのよく熟した身体に量感のあるバスト、おまけにラ・マッロカンプ使節として来た……となれば瑠璃ィの可能性が高いと考えました。瑠璃ィは謎の屈強な男共を配下に従えていました。恐らく歴戦の魔法戦士か何かだろうと」

「こっわ、何なんこの子、めっちゃ怖い犯罪者ちゃうん? 胸とか見てない言うてたやんか」

「決して卑猥な目で見ていた訳ではありません。戦う者として実力を測っていただけですから」

「でもそうや、ウチは魔ローダー動かせるで、では立つか!」


 瑠璃ィが操縦桿を握ると蛇輪の目がビカッと光った。


「スピネルさん、あっちの魔ローダーを動き出す前に!」

「ハッ!!」


 フルエレのシールドをガシガシ攻撃していたスピネルは、言われるとすぐに蛇輪に向かって走った。


「来ました!!」

「見えてるわっ!」


 距離的には短いが立ち上がった蛇輪に対して、走って来たデスペラード改が蹴り倒そうとする。

 ガシッ。

蹴り倒そうと振り上げた足の足首を蛇輪が掴むと、そのままグイッと持ち上げて簡単にデスペラードを倒してしまう。倒されたデスペラードはくるりと身をかわしてすぐに立ち上がる。


「む、この魔ローダーパワーあるわ。何て名前なん?」

「日蝕白蛇輪と言います」

「え、ええ、何やて?」

「蛇輪で良いです」

「も、何でもええ」

(でもこの魔ローダー、神聖連邦帝国の指揮官用魔ローダー四旗機の一つ、ウチの桃伝説(ももでんせつ)よりもパワーがありそうや……こんなど田舎村に何でこんな凄い機体があるんや……)

「で、この魔ローダーの武器は?」

「鉾があるのですが、忘れて来たそうです……代わりにSRVという魔ローダーの標準的な剣を持っています、あと手刀が強力だそうです」

「分かったっ!!」


 蛇輪はまずは剣を抜かずに、ファイティングポーツを取った。


「早く助けて!!」


 フルエレは叫んだ。


「今度は絶対に負けん!!」


 スピネルは剣を振り上げて切り付けた。


「遅いわ!!」


 蛇輪はヒラリとかわすと、足を掛けてデスペラードをよろけさせ、さらに腕を掴んで捻り上げて、警察官的な動きで地面に倒し込んだ。一連の動きは目にも止まらぬスムーズな早業だった。


「何っ何が起こった!?」

「何ですか、瑠璃ィは凄く強いではないですか何者??」


 戦闘に関してはド素人の砂緒やフルエレが乗った蛇輪とは異次元の動きだった。


「一機潰す!!」


 さらに瑠璃ィはすかさず容赦無く全身の力を込めて腕を捻り挙げる。

 グキィッッ!! ボキイイイ!!


「があああああああ!?」


 いとも簡単にデスペラード改の腕は根元から折れ、さらに力を込めて捻じり上げた。


「まだまだ!!」


 瑠璃ィの乗る蛇輪はそのまま体を回転させ、腕を根元からねじ切り引きちぎった……


「ぎゃあああああああああ」


 中に乗るスピネルの肩に形容し難い激痛が走る。


「何ですって……」


 ココナツヒメ以下、その場に居た全員が状況を忘れる程の早業であっけにとられた。


「きゃーーーーーーーっ瑠璃ィさま、いえ謎の美魔女剣士R子さま強すぎです!! こいつも早く倒してくださいな!!」


 メアが飛び上がって喜んだ。と同時に王子を床に放り出していた。


「あっいっけな~い、テヘッ」

「くっ、あの機体を先に倒してからにしますわっ!」


 ココナツヒメは一旦各国の要人を諦め、瑠璃ィの蛇輪に向かった。


(ほっ……透明の魔ローダーが離れたッ!!)

「皆さん、あの透明が戦闘を開始した隙に全員バラバラに逃げるのよ!」


 フルエレは小声で言った。


「わーーー王子目を覚まして下さい!!」


 メアは必死に王子の頬をビンタしまくったが目を覚まさなかった……



 一方その頃、瞬間移動して来た三機の内の一機、サッワの魔ローダー・エリミネーターは降下した直後から一目散に当初の手はず通り、駐機してある式典用にカラフルな塗装が施された、ユティトレッドの量産型魔ローダーSRVに向けて走っていた。


「ヒャッハーー!! 居たじゃねーか、間抜けな面して動く前に全部潰してやるよヒャハハハ」


 悪役丸出しの台詞を吐きながら、サッワは剣を振り上げると、まず座ったままの艶々の深いメタリックグリーンに塗装されたSRVの頭上に向けて剣を振り下ろした。

 ガシャッ!!

所謂兜割りの状態でグリーンのSRVは破壊された。そのまま破壊されたSRVに足を掛けて倒すと、二機目に向かう。


「次はどいつだーーー!? お前か? 赤いの!!」


 動かない敵に向かって大得意のサッワは、今度は艶々のメタリックレッドに塗装されたSRVの胸を思い切り蹴ると押し倒し、腹部に剣を突き立ててぐりぐりした。

 ドゴーーーン!!

何かの装置に当たったのか、赤いSRVは爆発した。


「ひゃはははは、弱い弱い!!」


 サッワは残り一機となった、メタリックブルーの機体に向けて剣を振り上げる。


「こいつを壊してココナツヒメさまに褒めてもらうんだ、くくく」


 サッワは完全にココナツヒメに魅了されていた。


「やらせるかーーーーーー!!!」


 そこにセレネの駆るSRVⅡルネッサが到着した。


「な、なんだコイツ、や、あるのか!? か、掛かってこいよっ」


 突然ちゃんと動く魔ローダーが現れて、慌てふためくサッワ。


「こんな雑魚にかまってられん、早くフルエレさんの元に向かわねば」


 ルネッサは細い長剣を構えた。


「うりゃーーーーー!!」


 サッワのエリミネーターは闇雲にルネッサに襲い掛かった。

 シャシャッ!!


「なに!?」


 闇雲に剣を振り回して襲い掛かるエリミネーターの動きを全て軽やかに交わし、懐に滑り込んだルネッサは、剣を軽やかに振り回すと、両腕を簡単に切り落とした。


「ぐわああああああああ」


 中のサッワは両腕を押さえて叫んだ。


「弱いっ!!」


 セレネは容赦無く、操縦席のある腹部に剣を突き刺した。


「スピネルさん助けてっ!!」


 ズバンッ!!

エリミネーターはいきなり爆発した。


「うおーーーーーセレネ様強い!!」

「セレネさま万歳っ!!」


 見ていた兵達から歓声が上がった。

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