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七華、再会麗しい人野外陽光の下で…前


 フルエレ一味も既に島に上陸していた。兵達から入場のチェックを厳しく受ける。


「無礼だぞ貴様ら。私達は式典出場者だぞ……」

「申し訳ありません。あくまで保安上の観点から……」


 担当の紳士が謝罪する。


「とにかく砂緒、貴方馬鹿な言動はしないでね」

「おとなしくしててよ、フルエレの晴れの舞台なんだから」

「本当です。砂緒殿は空気が読めず突拍子も無い事をしますからな」

「酷い言われようだぞ……」


 フルエレと猫呼に続き、クレウまでもが便乗して砂緒に注意する。イェラは少し可哀そうだと思った。


「おいちょっと待て! 何でクレウにまで言われなきゃならん?」

「この際だから言いますが、私は貴方が嫌いです。フルエレさまは私が守りますので」

「殺されたいのか?」


 久々に砂緒の手から電気が発せられた。


「ちょっと二人共、いきなり喧嘩してトラブル起こしちゃだめでしょ!!」

「フルエレ……顔がニヤけてるのだ……」

「モテモテで良いわよね」


 猫呼が肩をすくめた。


「あーー良いですよ、私は一人で散策でもしておきますから」

「お願いね、変な事しないで」


 フルエレが念を押した。


「私の事を……馬鹿な小学生と思っていないですか?」


 砂緒はふてくされながら皆がいる場所から離れた。



 砂緒は慌ただしく走り回り警備する兵達を横目に、小島の海が見える神殿を見て廻った。


「フルエレと二人で来たかった物です。とても風光明媚ですね……」


 砂緒は海を見渡そうと少し崖に近寄ってみた。同じように崖から遠くの海を見ている女性が見えた。


「誰だろう……何だか凄く絵になっている……後ろ姿が美しい……」


 美女らしき女性はひたすら遠くの海を見つめている様だった。砂緒は吸い込まれる様に歩いて行った。ある程度近付いた所で砂緒は声を掛けず立ち止まった。


「……あら?」


 潮風に髪をなびかせ海を眺める美女が振り返ると、七華(しちか)リュフミュラン王女だった……


「……しちか……」


 砂緒は名前を呼ぶと、しばらく声が出なかった。



「父が同盟には当然参加するが、何かが面白く無い! と駄々をこねてしまって……それで(わたくし)が式典に参加する事になりましたの……でも貴方がいるとは思いませんでしたわ」


 最近ないがしろにされがちな砂緒は、七華がとても美しく異次元の存在に見えた。


「………………すいませんでしたっ!!」


 砂緒は突然土下座をした。


「まあ? 何ですの突然」


 七華は口に手を当てわざとらしく驚いて見せた。


「リュフミュランに居る時、貴方と関係を持ちながら、突然姿を消してしまってすいません。当時は未熟者ゆえ、どうして良いか分からなくなり、フルエレの旅立ちに合わせて突然ぶっちぎって逃走してしまいました。本当に申し訳ない。貴方を傷付けるつもりは無かったのです……」


 砂緒は土下座状態のまま謝罪し続けた。


「傷付ける……何がですの?」


 砂緒は顔を上げた。


「いえ、その逃走した訳で……」

「あーあー、そう言えばティータイムの雑談中に最近見ない何か誰かいましたっけ? それは砂緒さまの事ですか? って侍女に言われて、あーそんなのが居たかしら? って程度でしたわよ」


 砂緒は立ち上がった。


「そ、そうなのですか? 私は……実は恥ずかしながら、ずっと貴方と過ごした甘い時間を思い返してばかり、時折何でも無い物体が七華のシルエットに見えて首を振る事も……また会いたい……そんな風にばかり思っていました」

「……そ、そうなの? ふ、ふ~ん、私はそうでも無かったかしら」

「であれば良かったです。傷付けた訳じゃ無ければ」

「でもフルエレとは……いつまでも幸せに暮らしましたとさ……なんでしょう?」

「え、ええそれはもちろんですとも」


 七華は砂緒の声と表情でそれが嘘だと瞬間的に分かった。七華は妖しい笑顔を浮かべると、スッと砂緒の手を取った。


「ねえ……お城のお庭みたいに、人目を盗んで……林の中に分け入ってみません事?」

「……え? は、はい……そうですね」


 砂緒は指を絡め手を強く握り返し、唾を飲み込んだ。リュフミュラン時代の経験から、七華が言う事が何を意味するのかすぐに諒解した……



「あれは……もしかして砂緒か? 誰なんだよ……あの女は?」


 それを警戒して見回り中のセレネが、遠くから発見してしまっていた……

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