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ウェカ王子さま誘拐事件 下


「瑠璃ィ! お前魔ローダー動かせる上に強かったんだな! 僕は鼻が高いぞ! よくやった!!」

「ぼんぼん! なんで今日に限って裏道行こう思たんや? 悪い偶然にも程があるわ!!」


 二人同時に言葉を発した。


「あ~~裏道通ってどっか近くの漁村に行こうと思ったのは、瑠璃ィが蛸が好きだとか言ってたからな。市場には蛸が無くて、漁村に直接買い付けに行こうと思ったんだ!」


 ウェカ王子は少し恥ずかしそうにして言った。


「え……そうやったん? めちゃめちゃ優しい子やんかいさ~~」


 瑠璃ィはそんな細かい事を覚えていた王子に軽く感激した。


「それで、この騒ぎは何なんだよ? 何で僕がここに捕まってるとか分かったんだあ?」


 瑠璃ィはセクシーなメイドさんが瑠璃ィをハメようとして、それが偶然に王子が代わりに捕まってしまった事を解説した。


「ヤバイよ……全然ヤバイじゃん……急がなきゃ!!」

「へ? 何がヤバイのんや? 悪人は捕まって一件落着ちゃうのん?」

「今度は僕も乗せてお城に急いで!!」

「う、うん……ほいなら乗り~~」


 瑠璃ィは王子を抱えてピョンピョン飛ぶと、操縦席に乗り込んだ。


(瑠璃ィは何者なんだ!?)


 二人を乗せた魔ローダーホーネットは一路城に急いだ。



「早馬が来て、王子は瑠璃ィ殿が無事保護、悪人共も全員捕まったようですぞ!」


 城に知らせが来て一同から歓声が上がる。


「良かったです……王子が無事で本当に良かった……罪は償います……」


 セクシーなメイドさんは既に縄で縛られ、逃げられない様にされていた。


「ちょい待ちーーーーーー!! 皆の衆、ウェカ王子から重大発表があるでーーー!!」


 突然メイドさんを取り囲む人々の前に、小脇にウェカ王子を抱えた瑠璃ィが走って来て現れた。


「おおお、ウェカ王子をまるで米俵の様に小脇に抱えて、瑠璃ィ殿はなんと偉丈夫な!!」

「よくぞご無事で!!」

「王子!!」


 家臣や将軍、執事やメイドさん達から歓声と安堵の声が口々に上がった。それを見終わると、瑠璃ィからパージされたウェカ王子が、適当なお立ち台を見つけ、その上に登る。


「あーあー、皆の者良く聞け、よく集まってくれたな」


 人々は王子の重大発表を固唾を飲んで見守った。


「この愚か者どもめーーーー!!! ヒャハハハハハハ、まんまと騙されたな!! この僕が手塩にかけて組んだ巧妙なシナリオにな! 虚構の僕が誘拐されたというシナリオに、実際の小悪人を巻き込み、徹底的なリアリティを追求した迫真の演技、虚構と真実が入り交じった斬新な展開、どうだお前たち本気で僕が誘拐されたと思っただろう!! はははははは。よしメイド一号、ご苦労だったな、帰って良いぞ」

「???」


 重要なのは主犯はメイドさんでは無く、王子自身の自作自演だという事を力説した。


「……え? 王子何を……??」 


 セクシーなメイドさんは戸惑った。王子は不器用にバチバチウインクした。


「ホンマは、あかんねんで……」


 瑠璃ィは風向きが変わる前に、すかさずメイドさんの縄を解き、耳元で囁いた。


「な、何を勝手な事を! 詮議も済んでおりませんぞ!!」

「王子! 今回の件は明らかに一線を越えております!!」

「冗談だった! では済みませんぞ!!」

「ユティトレッドにお礼に向かっている王がご帰還次第、必ず報告させて頂きます!!」


 一通り口々に非難すると広間を去って行った。



 深夜。


「王子、瑠璃ィさま、本当にすみませんでした! 私はおいとまし、お城を出ます。地元の村で待っております。いつでもどの様な罰でもお与え下さい……」


 セクシーなメイド服から一転、地味な村娘服に着替えた元メイドさんは鞄を持ち、二人に別れの挨拶をした。


「こらこらこら! お前が出て行ったら、普段の聡明な王子としての名声を、自ら貶めてまでお前を庇った意味が無いじゃん!!」

「え……、居ても……いいのですか? 何故??」

「何故って、みんな僕の事を馬鹿王子馬鹿王子言って笑ってるのに、お前だけが真剣に僕の相手をしてくれてたじゃん! お前が消えたら毎日がつまらなくなるだろ!!」

「王子……私の事、そんな風に……」


 メイドさんの頬を涙が伝っていた。


(あらまあぼんぼん可愛いとこあるやん!)


 しかし周囲から馬鹿王子言われていた事は、しっかり認識していたようだ。


「ま、まあ、今回の事はちょっとやり過ぎだろうがな! 改めて何か罰は考えておく」


 王子も少し照れて話題を換えた。


「そ、それは……もしかしてエ、エッチな罰とかですか!?」


 少し復活したメイドさんが頬を赤らめる。


「ふざけんな!! 僕は依世ちゃん以外は女として見ていないの!!」

「ふぇ~~~そうなんですかぁ!? やっぱりショックです……」


 そうこうしてメイドさんは、深々と一礼して自室に戻って行った。



「瑠璃ィ僕は決めたぞ!!」

「何を決めたん? 結婚相手か?」

「違うわっ! 瑠璃ィが魔ローダーに乗れて、しかも凄い強い事が判った。それで僕は海峡列国同盟に参加する事を決めた! てかパパ上に同盟に参加する様に猛烈プッシュする!!」


 ウェカ王子はあらぬ方向に指を差して決心した。


「な、なんでや! 何でそうなるんや!!」

「瑠璃ィ、蛸の入った丸い食べ物とやらを作って、お前にくれてやる、それで僕の家来になれっ!」

「えーなんでやねん」

「一宿一飯の恩義!!」

(一生言うつもりやろか? でも……魔ローダー乗る言うてもどうせ相手はメンド何国やろし、こんな所まで神聖連邦帝国が攻めて来て、敵対する事もありゃせんやろし、ちょっとくらいなら良いやんなあ? ほんま若君堪忍ですわー)

「あいあい!! 家来にでも何でもなるさかいに!!」

「よ~~し、列国同盟締結式で依世ちゃんを探すぞ~~~!!」

「やっぱりそれが目的かいな……」


 瑠璃ィはこの王子は、やはりだいぶ重症だなと思った。でも良い所もあるな……とも思っていた。

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