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砂緒さんは心配しよー 雪乃フルエレさんを見守り隊

 数日後。


「どうかな? イェラ可愛いかしら? アルベルトさんの友達さんにも好印象与えるかしら!?」


 以前自ら切ってしまった金色の髪が再び伸び始め長くなった物を、おさげ状に可愛いリボンで結び、ロリという程でも無いが少しだけひらひらとした白い可愛いワンピースを着た雪乃フルエレが、イェラに見せびらかす様にくるくる回った。普段は年齢よりも少しだけ大人びてみられるフルエレだが、今は十五歳の年相応の可愛い女の子という感じだった。


「何でしょうか……何であれ程気合が入っているのでしょうか……というよりも普段私の目の前に居る時は手を抜いているという事なのでしょうか……本気で行く気なんですね、別荘」

「行くんだろーなー」


 セレネは半ば他人事の様に答えた。


砂緒(すなお)ーっ、ぜっ対に付いて来ないでね。もし付いてきたら以後一切口きかないし、このビルから出てもらうし、街ですれ違っても無視するから」


 笑顔ではあるが、フルエレから先制的に釘を刺して来た。


「このビルはフルエレの所有物だったのですか? 二人の共同作業で手に入れた物ではないのですか?」

「……不気味な言い方しないでよ……聞いてる人に誤解されちゃうでしょう……」

「なあフルエレ、私だけでも付いて行こうか? 私も美味しいパーティー料理食べたいぞ!」


 イェラがフルエレの機嫌を損ねない様に、最大限配慮して笑顔で言った。


「ごめんねーイェラー、来てほしいのはやまやまなのだけど、イェラが来ると高確率で砂緒まで来ちゃう呼び水になっちゃうの、だから今日はお留守番お願い!」


 フルエレは笑顔でぴしゃりと断った。


「あの、わたくしは……? 私は完全に気配を消す術を持っておりますが……」

「クレウさんもごめんね、本当に一人でも大丈夫なの。相手はVIPだから別荘に警備兵も居るし全然安全よっ!! 砂緒っ、私の人生の問題なの、絶対に邪魔しないでよ……」


 途中まで笑顔だったが、最後に砂緒に再び釘を刺す時、恐ろしい表情になっていた。


(人生の問題て……フルエレさんも大袈裟だな……)


 いつも通り作業しながら無言で聞いていたセレネは、フルエレの気合の入り方に多少驚いていた。


「ご安心下さい。今日はちゃんと店内でフルエレがブラジルの毒牙にかからない様祈りながら、静かに留守番しております……」

「変な事言わないで怒るわよっ! でもお留守番はお願いね! じゃあ行って来ま~~~す!!」


 そう言うと、階段を軽やかに駆け上がり、駐輪場の魔輪(まりん)に飛び乗ると後ろも振り向かずカッ飛んで行った。


「………………では我々も参りましょう!」


 砂緒が言うとイェラが頷いた。


「全て砂緒の言う通りになるとは思わないが、多少心配ではあるぞ……」



 ぱたぱたと可愛い衣服をはためかせ、るんるん気分で魔輪を運転する雪乃フルエレ……の後ろを追跡する怪しい黒い軽タイプ魔車。砂緒がこの日の為に事前にレンタルした物だった。


「何故にあたしゃがこんな事に魔力を消費せにゃならんのですか……はぁ」


 セレネは文句を言う割には巧みな運転で、フルエレに感付かれる事無く後ろを追跡し続けた。


「感謝してますセレネ。先程ちょいと小粋な事を小耳に挟んだのですが、クレウは気配を完全に消す術を持っているのですか? 詳しく言いなさい!」

「私は猫呼(ねここ)様の配下であって、砂緒様の部下でも何でも無いのですが……ある事はあります。暗殺用の偽装隠ぺい魔法で、周囲の者の視線から完全に消え、透明になる事が出来ます!」

「凄いではないですか! それでは女風呂も着替えも完全に覗き放題ではないですか! 男の夢を叶えた男として尊敬します」

「ししし、失敬な! 私はそんな事に魔法を使った事はありません」

「砂緒はどんどん普通のスケベな男に成り下がっているのだ……もう風呂上りとか薄着でうろうろ出来ないなあ……」

(しまったぁ!!! 余計な事を言ってしまった……)

「前はどんなんだったんだよ……」


 等と車内で言っている内に、風光明媚な白い砂浜が広がる海岸地帯にやって来ていた。どうやらアルベルトの別荘は、この海岸地帯の一角にある高級別荘地にある様だった。フルエレの魔輪がどんどん遠ざかる。


「魔車じゃ目立ち過ぎる、ここで降りて隠蔽迷彩魔法をかけてもらって、全速力で追跡します!」

「うえーーー、なんじゃそりゃ」


 セレネが可愛い舌を出してウンザリした顔をした。皆言われた通り魔法をかけると戦闘中と同じくらいの速さで走り出した。一位は超高速でセレネ、次がクレウ、その後をイェラと砂緒がはぁはぁ言いながら続いた。セレネが居ないと追跡は成立しなかっただろう。

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