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別荘に誘われちゃった… セレネとおにぎり

「本当はこの後、あの重臣連中も招いた新ニナルティナ公国成立のパーティーがあるのだけど、フルエレ君も砂緒(すなお)君も出たくないだろう、僕たちもあんまり行きたくない……けど顔を出さない訳にも行かない、という事で少しだけ顔を出した後で、フルエレ君達とだけレナードと夕食会を開きたいと思うのだけど……どうかな?」


 アルベルトが小声でフルエレを夕食に招いて来た。


「え、そ、そうなんですか!? 私もちろんドレスとか持って来て無いし、あの人達に啖呵切ってしまった直後だし、確かにパーティーには出たくない……けどご夕食会に誘って下さるなら、是非行きたいですっ!」


 フルエレが目を輝かせ掌を合わせて即、承諾した。


「あーあたしゃ、そういうの苦手パス。一人で、ど、どっかそこら辺の隅っこで、人知れずおにぎりでも食べときますわ」


 セレネが何か棘のある言い方で断った。


「そ、そう……残念だわ……」


 フルエレが本当に残念な顔をした。


「私はフルエレ様を警護する為に片時も離れず、目立たず壁に張り付いておりましょう……」


 クレウは存在まで消すプロだった……


「そ、そう? 少しは食べて良いのよ……」

「ご安心を、この私が一緒に行って、豪華な夕食を頂きましょう、ついでにブラジルが変な事……あうっイテッ、イテテッッ!?」


 話し始めた砂緒の背中の肩甲骨辺りを、イェラが肘でぐりんぐりんした。


「んっんっ!!」


 イェラはセレネに付いていけと無言で言いたい様だ。


「私もお城の豪華夕食を久しぶりに食べたいのですが……貴方は私とフルエレの仲を応援してくれているのか、それともセレネとくっつけたいのか、どちらなのですか?」

「どっちもだ!!」


 イェラはにこっと笑って矛盾した事を言った。


「天使ですか……」


 砂緒はしぶしぶセレネの後をそーっと付いて行った。


「安心しろフルエレ! 私も一緒に行って三人前くらいは食べてやる! ははは」

「……お嬢さん……遂に俺と夕食を一緒にしてくれるまでに……嬉しいぜ……」


 アルベルトの後ろから、格好を付けたレナードが出て来た。そのさらに後ろには無言の眼鏡も居た。


「あ……」


 食べ物に目が眩み、イェラはもう完全にレナードの事を忘れていた。


「お前の事を忘れていた……一言も話し掛けるな、一言でも話し掛ければ斬る!」


 フルエレを警護する為に特別に携帯許可された剣を掲げた。


「ちょ、ちょっとイェラ、アルベルトさんの前でやめてよっ何があったの??」


 フルエレが慌てる。


「そうだよな、何で俺がここまでお嬢さんに嫌われるのか本当にわからんのだ。むしろ感謝されたり好かれたりしても良いと思うのだが……もしかして照れてる? 実は恥ずかしがり屋さんなのかな??」


 イェラは本当に恐ろしい顔で剣を抜く動作をする。


「本当に……話し掛けるな」


 びくっとするレナード。


「あ、あれー俺って君主だよな? ね、君、俺君主だよねっ?? ねえ……」

「は、はぃ……」


 レナードは周囲の侍女達に聞いて回る。聞かれた侍女達は言葉に詰まって困り果てる。



 セレネは本当に景色のよく見えるベランダで、三角座りをしながらお城のキッチンで作って貰ったおにぎりを、もくもくと食べていた。


「おにぎりをもくもくと食べるセレネ……小動物みたいで凄く可愛いです。真横で凝視しても良いですか?」

「ヤメロ」

「よいしょっと」


 砂緒はセレネを無視して真横に座ると、一緒におにぎりを食べ始めたが、いつものように特に怒る訳でも離席する訳でもなく、セレネも一緒に食べ続けた。


「本当にじろじろ見るなよ……」

「おにぎりのおかずです。セレネの顔、おにぎり、セレネの顔、おにぎりの順です。セレネのお顔は十分おかずに耐えられます」

「訳わからんわー」


 それでも、もくもくとおにぎりを食べ続けた。


「何でフルエレとの夕食会に行かんかったん?」


 当然イェラにこちらに行けと促されたからだが、それは言わないでおいた。


「……」

「言わんでも分かるわ、アルベルトさんとフルエレさんが、いちゃいちゃする場面を見たく無かったんだろう」

「……」

「私も最近ちょっとフルエレさんを見てて、ん? おかしいぞって思う所あるわー。特に最近アルベルトさんに色目使ってて、さすがに砂緒が可哀そうだわーって思うとき……」


 何故か今日は素直に気持ちが言えたセレネだったが、会話の途中で砂緒が恐ろしい形相で立ち上がった。セレネは真っすぐ景色を見ていたが、おにぎりを噛んだまま、思わず立ち上がった砂緒を見上げる。


「止めて下さい……色目使うとかフルエレはそんな女の子ではありません! フルエレは純粋で純真過ぎて、ちょっとブラジルにたぶらかされているだけです。それに目の前に居ない友達の悪口は言わない方が良いでしょう」

「………………そりゃ、スマン……」

(何であたしが謝らにゃいかんのだ)


 砂緒の迫力に思わず謝罪するセレネ。


「……お、怒りましたっ!? 今日は珍しくキモイだの死ねっだの言わずに真横で密着しておにぎりを食べてくれているのに、怒りました!? ちょっと語気が強すぎました、反省してます」

「しゃーしぃわキモイは言うが、しねっはそんな言ってねーわ。割と気にしいかよ……」


 何故か急にご機嫌を伺っておろおろし始めた砂緒が、割と自分に似た所があると思うと面白くて、笑いそうで反対を向いて顔を隠した。砂緒は再び横に座り直した。


「しかし、次にああいったセレブリティが繰り出しそうな危険な手が、別荘に誘うという手口です。それだけは絶対に避けねばなりません。フルエレが確実に毒牙にかけられます」

「ああー別荘な、危険だわそりゃふふ」


 セレネは何か急に余裕を持って、砂緒を見る事が出来始めた。

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