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魔戦車c 砂緒激突


「へいへい」

「あの……砂緒(すなお)は……どうなりますか?」


 大男と女は神妙な面持ちで顔を見合わせた。


「その砂緒が少々ケンカが強い人間だとして絶対に無事じゃ済まねえ。ニナルティナの連中魔戦車まで出して来やがったからなあ」


「人間が立ち向かったら雑巾の様にズタボロになるのがオチだろうな」

「姿形が残るだけマシかもな」


 ズゥーン

 物騒な事を言われ血の気が引くフルエレ。


「ませんしゃ……?」



 ーその砦外の戦場の砂緒


「ちわ~異世界の~~から~~」


 フルエレの祈る様な気持ちと裏腹に、砂緒は酔っ払いの様に昔テレビで観た昭和歌謡曲を口ずさみ上機嫌でフラフラと歩いている。


 キュラキュラキュラ

 彼の目の前には突撃してくる数両の車両があった。上機嫌なのはこれからどうなるのか期待していたのだった。


(わたくし)ワクワクして来た~)



 その視線の先の魔戦車内。


「部隊長前方に人間確認! どうやら子供の様ですが我々の軍服を着ています!」

「陽動か? ふざけた真似を丁度良い命中精度の最終確認だ、全車両物理弾で一斉射撃」

「マジデッ?」


 部隊長の言葉に隊員達は耳を疑った。


「一瞬で姿形を無くす為にきっちり狙ってやれ!」

「了解!」


 結局皆隊長の言葉に従った……魔戦車は魔法防御力を持ち物理攻撃にも魔法攻撃にも強く、専従の魔導士が攻撃を行う攻守に優れた新兵器だった。



 シュパパパパパパ!!

 ドシュドシュドシュ!!


 ドンドンドンドンドンドンドン!!!

 六両の魔戦車が、躊躇無く一斉に少年一人に向かって猛烈な魔砲射撃を開始し、辺りが一気に白煙に包まれる。

 シュワァ~~~

 ブラストが見えた瞬間、砂緒は一瞬で大理石の乳白色に硬化していた。銅像にピッチングマシンで白球を当て続ける様に、スココココココと無表情で弾を全て弾き返していく姿は、シュール過ぎる光景だった……


(ふむ痛くない……硬度も大理石処じゃ無い様ですね)



 砂緒は額にスココココと猛烈に弾を受けながら、他人事の様に至って冷静に分析していた。


「隊長! 効果ありません」

「何!? あの少年は幻影魔法かもしれん、全車両火炎・氷結・交互に魔法弾射撃開始!」

「対幻影魔法煙弾、投射!!」


 シュパパパパ!

 シュババババババドドドドドド


 発射ブラストだけでも前が見えにくいのに、幻影魔法を防ぐ煙まで投射されてちょっとしたカオスになった。


「前が……見えませんね」


 だが砂緒にとっては物理弾の方がガツンと来る手ごたえがあったくらいで、魔法弾による攻撃は眩く光る魔法光で目がチカチカしてよく見えない中、軽く頬を撫ぜられる感じで不快なだけだった。


(何ですかこのヤワい攻撃は……)


 彼は構わずズンズンと前に進んだ。


 ガコン、ゴン・ゴン・ゴン


「何だ? 何の音だ?」


 突然車両内に不気味な音が響き全員が黙って上を向き固唾を飲む。直後部隊長は堪らずキューポラを開け外を覗いたが、自らの部隊が巻き上げた砂塵と魔法煙で周囲が全く見えない。


「ああ、これはどうも」


 部隊長の目の前に突如ペコリと頭を下げる目つきの悪い少年の姿があった。敵とは言え砂緒は紳士として思わず反応せずにはおれなかったのだ。

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