フルエレ、聞いていた話と微妙に違いますが… 下
皆は早歩きで指示された方向の第一会議室に向かった。巨大な城の中を何回も迷いながらもなんとか第一会議室に到着した。
「なんか……薄々こうじゃないかと予想はしてましたが……」
砂緒が言う様に、第一会議室も暗くガランとしていた。
「これは、所謂たらい回しという物ですねえ」
「……こんなのあからさま過ぎるイジメじゃない、なんか猛烈に腹が立って来た……今度係の者が半笑いだったらあたし即座に斬る!!」
「お、良いですねえ、私も同じ事を考えていました」
「え、殺して良いですか? では私も参加します……」
セレネと砂緒にクレウがすぐさま賛同した。
「駄目駄目、床の絨毯が汚れるぞ~~」
「駄目―っ!! いい加減にしてよ、こんな程度でいちいちキレないで頂戴、アルベルトさんに迷惑が掛かるでしょっ!!」
フルエレの頭の中は今はもう再会するアルベルトで一杯だった。
「おおーーーーい!! こんな所で何をしているんだい? フルエレ君、それに皆、政策会議は大会議場だよ、みんな揃っているよ、早くしたまえ!」
「あ、アルベルトさん……」
その当のアルベルトが慌てて走ってやってきた。新調の薄い桜色のスーツを褒めて欲しかったが、再会はそんな状態では無かった。小走りで皆は大会議場に向かった。
「おや、お遅いご到着ですな、それにえらくぞろぞろお連れですな」
大会議場に着くと、ユティトレッドの衛兵が多数立っており、ドアの前の髭を生やした紳士が嫌味ぽく皆を品評する目をした。
「秘書一号ですが?」
「……またこのやり取り?」
「いい加減にしたまえっ! 大臣格のフルエレ君に失礼だぞっ!!」
「こ、これは失礼致しました……」
新ニナルティナ公の補佐であり、有力な領主の息子であるアルベルトに一喝されると、髭を生やした係の者は恐れ戦いた。砂緒はうんざりした顔をした。
「単純ですね……」
ドアが開き巨大な大会議場に一歩入ると、大きな楕円形の机の奥の立派な椅子にレナードが座っていた。二十人以上はいる椅子に座った大臣や将軍たちが、一斉に入って来たフルエレ達をじろっと見る。全員が中年や老人の男達で女性はフルエレ一味だけだった。
「おやおや、お子様大臣がお遅いご入場ですな」
「おお、可愛いコドモ大臣ですな、お友達も沢山連れられて……」
あちこちから、ざわざわ話す声と小馬鹿にした笑い声が聞こえる……
「フルエレ……何か聞いていた話と違うのですが」
「フルエレさん、あたしもう我慢できんキレそうです。今笑った奴全員なで斬りにしましょうか?」
「この程度の嫌味でいちいちキレる方がお子様なのだ……」
係の者に案内されると、レナードを挟んでアルベルトと逆の位置にある、物凄く目立つ場所に座らされた。砂緒たちはフルエレの後ろに粗末なパイプ椅子を並べて座っている。
「なんと、オブザーバーと言っていたコドモ大臣殿が、新ニナルティナ公の横に!?」
「一体何様のつもりじゃ!! 余程可愛がられておるのだな……ふん、色仕掛けがっ!」
古参の者達の恐ろしいまでの嫉妬のオーラがびんびん伝わった。
「か、帰りたい……」
先程までにこにこして、新調のスーツを見て欲しい等と言っていたフルエレは、もうどこにも居なかった。今は消え入りそうな気持で下を向いた。
「フルエレくん、大丈夫だよ、あんな連中口先だけなんだから、笑ってごらん」
フルエレの気持ちを一瞬で察したアルベルトが、にこやかに微笑んで励ました。
「あ、アルベルトさん……ありがとう……」
フルエレは強い味方が居る事に、涙が出る程嬉しくてホッとした。
「そうだフルエレ、ふんぞり返って大笑いするのですよっ」
「遅えわ、パクリじゃねーか」
砂緒はアルベルトに先を越され、しかもセレネにまで突っ込まれて、ムッとした顔になった。
「セレネ少し何時もの調子が戻りましたね、それに今気付いたのですが、その眼鏡姿もとても可愛いです」
「…………馬鹿……う、うるさいわ……」
セレネは一瞬赤面すると横を向いた。
「ちょっと! 後ろでボソボソ雑談しないでっ!!」
突然フルエレが振り返り、キッとした顔で怒った。
「嫉妬!? 遂に嫉妬ですか?」
「ちげえわ、単に気が散るだけだ、シッ黙れ馬鹿」
そうこう言っている間に新ニナルティナ公に就任した有未レナードの挨拶の時間となった。




