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美魅ィと璃凪 魔ローダーVS魔ローダーの闘い 上


 セブンリーフ大陸中部東側、ユッマランド王城の格納庫。


璃凪(りな)、緊張しないで! 貴方が緊張すると私まで緊張してしまうわ……」


「申し訳ございません……私の様な者を魔ローダーに乗せて頂いて……その上ご迷惑まで御掛けしてしまっては……美魅ィ(みみぃ)様本当にすいません!!」


 魔ローダー出撃前の控室で、侍女出身の璃凪は王女の美魅ィに平謝った。


「違うのよ! 貴方は誰よりも魔ローダーの操縦に適合したから乗っているのよ、勘違いしないで」

「はい……有難うございます」


「とにかく何回もシミュレーションした通り、二機の内一機を誘い出し、二対一でめった刺しにする……判ったわね?」


「……二対一でめった刺しに、二対一でめった刺しに……承知致しました!」

「美魅ィ様、璃凪殿、そろそろご出撃を!! ご武運をお祈りしますぞ!」

「魔ローダーザンザス、魔ローダーバリオス、出撃を!!」


 二人が梯子から乗り込んだ魔ローダーの目が光り、ゆっくりと動き出す。


 二機の魔ローダーは他の機体と同様に二十五メートル程度の大きさの、プレートアーマーを巨大化した様な機体という点は共通だが、頭部ヘルメットには馬をイメージした、たてがみ風の飾りがあった。


「行くよっ璃凪っ!!」

「はい美魅ィさまっ!!」


 ユティトレッド魔導王国より拝領したユッマランドの魔ローダー、ザンザスとバリオスは、罠を張る待ち伏せポイントまで歩みを進めた。



 そのしばらく後。メドースリガリァ侵攻軍は二機の魔ローダー、デスペラードとディヴァージョンを効果的に使用し、周囲の小国群を破竹の勢いで瞬く間に併呑していった。


 そして遂に位置的には中部に属するが、影響力や発言力はニナルティナやユティトレッドの様な北部列国並みとされるユッマランド国境にまで進軍していた。


「これよりユッマランドに侵攻する事になる……これまでの様な赤子の手を捻る戦いと考えると痛い目を見るぞ! サッワ、とにかく油断するな……」


 魔ローダーデスペラードの操縦席で、スピネルが少年操縦者サッワに気合を入れる。サッワはこの所、明らかに天狗になっていて、その事がスピネルは気掛かりだった。


「大丈夫ですよスピネルさん!! 今までだって簡単に幾つも国を落として来たんですよ! 僕とスピネルさんは最強コンビです、わはは!!」

(やれやれ、お調子者のお子様だな……)


 スピネルは操縦席でうんざりな顔をした。雪乃フルエレや砂緒(すなお)は魔ローダーのマニュアル的な物を一切知らないで乗っていたが、この二人は城の技術者から十分レクチャーを受けていて、二機の会話は魔法秘匿通信で行われている。美魅ィと璃凪も同様となる。


「……とにかくだ、我々の役割は後に続く実際の占領を行う魔戦車や騎兵隊、魔導士や歩兵の皆さんの道を作る事だ……彼らが主役だという事を忘れるな……」


「はいはい!! それくらい分かってますよ嫌だなあ~~はは」

「まて、今何か光った、丘の向こうに多数の何かがいるな……」

「な、なな、何でしょう……」

「それを一個づつ潰すのが我々の役目だ……とにかく慎重に進もう」


 ドドドン!! ドドドドンン!!! ドーーンドーーン!!

稜線射撃で多数の魔戦車が撃って来た。


「わ、わわ……魔戦車です!! ど、どうしましょうか!?」

「慌てるな! 魔戦車の攻撃は一切通用しない! 慌てず罠が無いか……」

「こ、このぉーーー!! 魔戦車風情が魔ローダー様に楯突くなぁーーーーー!!」


 攻撃は一切通用しないで安心したのか、最初恐々だったサッワが突然切れて剣を振り上げ、突撃を始める。


「こらーーーー!! 突出するな!!」


 ガッッ!!

 逃げる魔戦車群を追いかけるディヴァージョンの足首を、突然土中から出て来た魔ローダーの手が掴む。


 ガシャーーン!!

 前につんのめって倒れたディヴァージョンだが、さらにその先には落とし穴となる深い深い堀が掘ってあって、ひっくり返った情けない姿でディヴァージョンは堀にハマって動けなくなる。


「やった! 璃凪お手柄よ! よし、すかさずめった刺しよっ!!」

「はいっ美魅ィ様!!」


 巨大な布や大量の土や植物でカモフラージュしていたザンザスとバリオスが姿を現し、二機とも同時に巨大な剣を逆さまに振り上げ、切っ先をディヴァージョンに突き立てようとする。


「うわああああああああ、スピネルさん! スピネルさん!! 動けません、動けないよ、早く助けて!! 助けてえええええ!!」


「馬鹿がっ!!」


 魔法秘匿通信で叫ぶ声も虚しく、即座にザンザスとバリウスはザクザクと剣先で穴に落ちたディヴァージョンをめった刺しにする。


「い、痛い!! 痛いです!! 体中痛いです!!! 助けてっ!! うわーーー」

「とにかく手足で全力で重要区画(バイタル)を守れ、今行く!!」

「やってます、早く! 早く来て!!」

「たぁああああああああ!!!」


 もう仕掛けは分ったので、スピネルは迷う事無く、二機の魔ローダーに襲い掛かる。


「二機目が来た、落ちた敵はもういい、二機で来た敵を叩く!!」

「はいっ!!」


 スピネルのデスペラードが剣を振り上げ、美魅ィのザンザスの背中に剣を向ける。ガシッと振り返ったザンザスの剣とデスペラードの剣が激しくぶつかり合い、やがて力比べの様に鍔迫り合いになった。


「今よ璃凪! 背中をめった刺しよ!!」

「はいっ!!」


 ザンザスの後ろに位置したバリオスがくるりと回り込み、デスペラードの背中に剣を突き立てようとする。

 ドボッ!!!


「きゃーーーーーー!!」


 突然デスペラードは後ろに目でも付いている様に、綺麗に足が真っすぐ伸びた後ろ蹴りをバリオスの腹に食らわせた。吹っ飛ぶバリオス。


「何でェーーーーーーー!? 璃凪ァ!!」

「貴様の相手はこっちだ!!」


 バリオスが倒れた瞬間を狙って、デスペラードが猛烈な剣技を繰り出す。次々に突きを繰り出されて、危うく自分が落とし穴に落ちそうになるザンザス。


「な、こ、こいつ強い!?」

「待って下さい! 今助けに参ります!!」

「待てい!! お前らは絶対に許さないぞ!!」


 落ちた穴の中から、めった刺しにされたはずのディヴァージョンが這い上がって来た。


 ディヴァージョンはあちこちに切り傷があり、オイルか冷却液か何か分からないが、血の様にどくどくと流れる不気味な姿になっていた。


挿絵(By みてみん)

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