フード軍団一件落着
「あの~~ちょっといいですか?」
砂緒は片手をぴっと上げつつ、道でも聞くかの様にフードの怪しい連中に接近してみた。
「あ、はいはい、何でしょうか?」
フードの怪しい連中も気軽に道でも聞かれたが如くに砂緒に接近する。雪乃フルエレとセレネは蛇輪の操縦席でその様子を固唾を飲んで見守った。
「あの~~~つかぬ事をお聞きするが……」
「隙ありッッ!!」
「撃てっっ!!」
その瞬間、フードの男達が一斉に砂緒に向けて魔法を猛烈にぶっ放した。
ドカドカドカドカ!! ドシュドシュドシュドシュ!!!
轟音と共に砂緒の全身が見えなくなる程に激しいブラストと爆炎と煙が広がり、普通の感覚で言えば砂緒の身体が粉々になって消し飛んだと思われる程その魔法攻撃は続いた。
「あ~~あ、なんて事を……」
「どうするの? あの人達助けるの? なんだかめんどくさいわ」
魔法モニターを観ていたフルエレがフードの者達を保護するべきかセレネに訊いた。
「……いや、自己責任でしょう。なんでわざわざ助けなければいけないのですか」
「そうね」
フルエレもあっさり見捨てた。
「ふぅーふぅーもうこの辺で良いだろう。人間に向かっていきなり魔呂をけしかけた罰だ」
しゅーしゅーと煙が薄くなって行く。
「ひっ」
「どうした??」
煙の中からウエイター服がボロボロになった砂緒が普通に歩いて来る。
「あのーちょっといいですか?」
「ひいいいいいいいい、何で普通に歩いてる?」
「そ、そもそも何で怒ってない!?」
砂緒は平気過ぎて何事も無かったかの様に笑顔のままだった。
「砂緒って頑丈過ぎて感覚がおかしくなってるよな」
「頑丈さは関係なく、ただ頭がおかしいだけじゃないかしら?」
「フルエレさんって何気にちょっと酷い所がありますよね」
砂緒は笑顔でフードの怪しい者達に接近すると、フードの者達はダンジョンに戻る訳にも行かず、ガタガタと震えて腰を抜かした。
「あのー君達、リュフミュラン北東の砂浜に居た人達ですよね? 妙齢の女性と一緒に」
「そ、それを……何故?」
「如何にも!!」
化け物から意外な言葉を掛けられてフードの男達は顔を見合わせた。
「なんだかもうそろそろ行っても安全そうですよ」
「そうねえ」
フルエレとセレネは蛇輪から降りてフードの男達の前に行ってみた。
「又今度いきなり攻撃でもすれば貴方達全員の命は無い物とお思い下さい」
「大丈夫よセレネ」
セレネは同盟の女王にと想定しているフルエレをナイトの様に身を挺して守りながら男達に語り掛ける。しかしフードの男達はひと目フルエレの顔を見て、ハッと息を飲んだ。
「……ああ、瑠璃ィ様が最初に出会った第一村人の超絶美少女……」
「まさにあの方そっくり……」
フードの男達はひそひそと会話した。
「まずはフードを脱ぎなされ、会話はそれからじゃて」
砂緒もフルエレを守る様に立ち、フードの男達に要求した。
「ははーーっまさにその通り! 失礼つかまつりました」
何故かフードの男達は土下座すると、全員一斉にフードを脱いだ。
「おお、脱ぐと普通~に普通の男達ですなあ。別にマタンゴでは無かったようです」
「何だよマタンゴって!」
男達は自分達が瑠璃ィキャナリーの部下であるにも関わらず、途中ではぐれた事、このダンジョンに辿り着き、ダンジョンを攻略する冒険者に勝負を仕掛け、勝ったならば金品を奪っていた事を白状した。
「うーーむう、旅人を無差別に襲ったり婦女子を襲ったりしていた訳では無いのですな、あくまで冒険者との勝負であったと」
「へへーーっその通りで御座います」
男達は土下座しながら話した。
「まあーーなーー冒険者なんてモンスターに勝負を挑んで運が悪けりゃ死ぬだけだからなあ。命も取らず回復魔法も掛けてくれるなら親切な方じゃね?」
「まあっ人間型のモンスターと思えば良い訳ねっ」
何故かフルエレもセレネも納得してしまった。
「まあ私達は闇のお助け人、警察二十四時では無いので特にお咎めは無しという事です」
「なんだよ警察二十四時って!」
「気にしちゃダメ」
突っ込むセレネにフルエレが優しくアドバイスした。
「それでご主人様の野蛮、いえ妙齢の女性はユティトレッド魔導王国かラ・マッロカンプ王国に向かったのですな? 工事のおじさん方、両国に向かう地図はありますかな?」
砂緒は恐る恐るやって来た工事の労働者達に訊いてみた。
「ああ、ありますとも。その人達に渡せば良いのだな?」
「うむ、有難い」
「あたしの地元で悪さしよう物なら容赦しないよ」
「め、滅相も無い」
「へへーーーっお礼のしようも御座いません」
男達は畏まって土下座のまま地図を受け取ると、ペコペコ頭を下げて今出来たばかりの砂利道を西に歩いて進んで行った。




