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魔ローダーの操縦者サッワとスピネル


 一週間後、第一回魔ローダー操縦者選考会場……となった中庭。


「ガハッ!!」


 腕を少し動かしただけの立派な身なりの魔導士が操縦席から血を吐いて転げ落ちる。


「大丈夫ですかな? この御方を医務室へ!」

「この者も駄目か……もしや誰も動かせぬでは……」


 貴嶋と何人もの部下が見守る中、内外から広く募集する魔ローダー操縦者選考が続いていた。遠くの高台には侍女達と女王陛下が物珍しそうに見学している。


 もちろんエリゼ女王は盲目なのだが、例によって魔法を応用した位置感知の力で雰囲気だけを味わっているのだった。


「次の百八番の御方どうぞっ!」


 次の番に回って来た、身なりはみすぼらしいが顔と髪型だけはピカピカの剣士が歩み出る。


「百八番スピネル、それがし旅の剣の修行者にて魔ローダーの操縦には少々覚えがあり申す」


 なにか趣味で妙なキャラ付けをしている様だ。


「能書きは良いから早く乗って下され」

(どうせ見かけ倒しの男であろう……)


 もう殆どの者が諦めムードになっていた。


「では、遠慮無く……」


 スピネルという男が乗った途端、突如これまでに無いくらいに魔ローダーの目がビカッと光った。


「では……取り敢えず、スクワットから。えーその次は逆立ち、逆立ち腕立て、片手腕立て」


 スピネルという男が乗り込むと、突如今までの停滞が嘘の様に軽業の様な動きを連続で始めた。


「な、なにいいいい!?」


 貴嶋だけでは無く、会場に居た全ての者が度肝を抜かれた。


「反復横跳び……空気椅子、伏臥上体反らし、エア座高検査……」


 次々不思議な動きを続ける剣士。


「も、もう良いもう良い! 十分じゃ! 体に疲れ等はないのですかな?? あちらにお部屋がご用意してありますぞ!!」

「は? 疲れ? いえー大丈夫ですなあー」


 凄い動きの割には気の抜けた返事をする剣士。


(しかし……これは見紛う事無き超一般機。ル・ツーとは比べるべくもない。しかもル・ツーの様な怪我や体力回復の特殊スキルも無い。こりゃ加減して戦わんとな……ま、乗れるだけましか。暇せんで済む……)

「僕に乗せて下さい! 僕にも挑戦させて下さい!!」


 突然魔ローダーの操縦席に外部の声が拾われる。


「何だ何だ?」

「僕に乗せてください!!」


 会場に突如割り込んだ、選考者ですら無い少年が騒ぎを起こしていた。


「やめろサッワ! お前には無理に決まっている! 俺たちまで罰せられるのだぞ!!」


 楽団の団長が必死で抑え込む。


「やらせてやるのじゃ、気の済む様に……」


 一機がようやく動き、気の良くした貴嶋が少年の試験を許可した。


「は、はい!! お願いします!!!」


 少年は意気揚々と梯子を伝い、座る魔ローダーの操縦席に乗り込んだ。


「動け! 動け!!」


 ピクリとも動かない魔ローダー。


「そら……見ろ……最悪だ」


 団長が頭を抱えた。


「え!? 見て!!」


 見物人達が叫んだ。見ると魔ローダーの目が光り、ゆっくりと立ち上がった。


「嘘だろう!!」


 見物人たちが少年の成功に驚き、目を見張った。


「動いたっ!! ほら、動いたぞ!!」

「凄い……この少年に魔ローダー、ディヴァージョン預けて見ようぞ」


 貴嶋が言うと、サッワは魔ローダーの魔法マイクでしっかり拾っていた。


「やった! やった!! これで……女王陛下とこの国が守れる!! そして……あの僕の笛を吹いてくれたあの美しい唇……あの唇を……本当に奪うんだ!!」


 サッワは高台で見物を続ける女王陛下を見て胸を高鳴らせた。


「元気なお子様も居るもんだ……」


 スピネルは他人事の様に少年の魔ローダーを目を細めて見つめた。

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