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美柑の姉夜宵と真実の鏡


「あの……なんだか向こうの通路からピロピロと音が……」

「ん……?」


 エリゼ女王が指差す方を見ると、紅蓮は立て看板を見つけた。


『この先ゴール地点、王家の鏡所在地』

「うわっ簡単! しかもエリゼに分かり易い様に音で知らせる親切仕様!!」

「ね、王家の儀礼用ですから、胎内くぐりみたいな物なのです、行きましょうか?」

「冗談だろう? 悪いけどエリゼ一人で先に行ってくれ、僕は美柑が心配でならないよ」


 紅蓮はゴール地点と書かれた方向とは逆に走り出した。



 ゴロゴロゴロ……


「う、うわあああ前から巨大な玉が転がってきたあ!? お願いフェレットなんとかしてえ!」


 美柑が叫ぶまでも無く、フェレットの方こそ獣の目ではっきりと巨大な玉が転がってくるのが見えた。


「走って逃げてたら間に合わないよ!?」

「チッ仕方が無い、ミカちゃんの為だ!」


 フェレットは身構えると今度は転がって来る巨大な玉に突進した。そのまま少し下を向くと、しゃがんだ背中で巨大な玉を受け止めた。

 ベキバキッ!!


「ぐへええっっ!!」


 どっかの骨が折れた音がする。


「と、止めたぜ。氷結系魔法で固定してくれ!!」

「うん!!」


 美柑が氷結系魔法で巨大な玉を止めると、今度は回復魔法でフェレットを回復して分かれ道を進む。


「きゃあっ!? 今度は壁が落ちて来た!!」

「ぐはああっ!!」


 今度はフェレットが肩で落ちて来た壁を受け止める。ベキバキとまた違う骨が折れた音が……


「きゃあっ!? 今度は左右の壁がだんだん迫って来て挟まれそう!?」

「ぐああああ、ミカちゃん、俺が突っ張り棒になってる間に逃げろ!!」

「あいあい!!」


「ちょ、ちょっとまて……もしかして俺の事利用してないよな?」

「まさか、違うよ~後で回復してあげるね」

「段々危機感が薄れて来てないかい? ぐはあっ痛い!!」


 どんどん迫る壁のゾーンをなんとかすり抜けた。


「きゃあっ!? 尖った針が無数に刺さった板が飛んで来た!!」

「それは魔法で燃やせよ!!」

「あ、そうね……」

「楽しようと思ってるだろ……」



 数々の危機を脱してなんとか通路を進むが、弱いモンスターの襲撃等があったが、紅蓮とは再会出来ていなかった。


「なあ、もしかして罠にはまっているなら、永遠に再会出来ない仕様なんじゃないかなあ?」

「う、そうよね……何かの理由で私を消したいなら、わざわざ再会させるギミック作る必要無いわよねっ」


 ゴバアッ!!

等と一人と一頭で話している最中だった、突然横の石壁が破壊されて吹き飛ぶ。


「ああ、やっぱり美柑だったか! 壁の中から声がしたから壊してみたら!!」

 突然壊れた壁の中から紅蓮が現れた。


「あはっ! 紅蓮どっから出て来るのよっ」


 二人は再会の喜びの余り飛びついて抱き合いそうになったが、寸前で少し照れてぱっと離れた。


「再会出来てよかったよな」

「そ、そうよね」

「お、犬、久しぶりだなあ!」


「よおスケベ男」

「………………」


「もう! フェレットは用済みだから元に戻って!」

「言い方! それは酷過ぎるだろ」

「嘘よ、今日は有難うね、ちゅっ」


 美柑はフェレットの鼻頭に軽くキスすると、フェレットは元の白いオコジョの姿に戻った。



「そっちの壁の穴に入ると、超簡単イージーにクリア出来るよ! エリゼが待ってる」

「うん、行こうよっ! こっちも割と簡単だっ」


 カシャッ!!

突然美柑の足元の床の落とし穴が作動した。


「だっはああああああーーーーーーーーーーーーー!!」

「美柑!! みかーーーーーーーっ!!」


 紅蓮は即座にしゃがみ込んで何かを掴む。


「ん? 何だこれは? 要らん!!」


 オコジョのフェレットの尻尾だった。彼をひょいと投げ捨てる。投げ捨てられたフェレットは、ちょうど壊された壁からこっちに来たエリゼ女王の豊かな胸にぱふっと落ちた。


「まあ、可愛い子!」

(幸せ……)


 フェレットは御駄賃はこれで良いかと納得した。


「なんつて! 私短時間なら魔法で飛べるから落とし穴なんて無効だよっ!」


 足の裏に回転する魔法陣を貼り付けた美柑がふわふわと飛んで戻ってきた。


「美柑……心配させないでくれよ……」

「エヘヘ……」



 ゴールと書かれた地点に向かう道すがら。


「なあ美柑……ここの鏡を取りに行く儀礼で思い出したんだけどさ、美柑のお姉さんが失踪した時とたまたま同時期に紛失したっていう、美柑の国の最高国宝の『真実の鏡』は本当、どこに行ってしまったんだろうね?」


「真実の鏡……なんですのそれは?」


 エリゼ女王が興味津々で聞いてきた。


「彼女の国の国宝で、百年分の魔力を貯めるか、それに相当する莫大な量の魔力を一度に注入する事により、世界の支配だろうが、世界の破壊だろうが何でも願いが一つだけ叶うっていう夢の様な魔法器なんだ……」


「え……凄い……そんな凄い物が!? 美柑ちゃんの故郷って何か凄い物が揃い過ぎて無いですか?」

「……そんな事、無いよ……」


「もちろん、お姉さんの失踪と国宝の紛失は全く関係無い事は分っているよ! たまたま時期が重なっただけ!」


「もちろんだよ……お姉さまが、そんな危険な物を……」

(……自分の為に国宝を持ち逃げする様な人間じゃない……きっと違う!!)


 美柑は首を振った。

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