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引っ越しのお誘い 列国同盟計画


「うん、その同盟が成立すれば確かにみんなの為になりそうね。でもそれと私が何の関係が?」


「分かりませんか? リュフミュランとニナルティナ両方の王国にゆかりがあり、多くの人々に影響力のあるフルエレさん貴方が、同盟の仲介者として立ち会って頂きたいのです。その際にある程度の社会的ポストが無いとごちゃごちゃ口を挟む人がいるのですよ!」


「ちょっと待って下さい! 両国にゆかりというか少しは入国した事はあるけど、ユティトレッドには何のゆかりも無いですよ私!」


 フルエレは変な事に巻き込まれたく無いと必死に反論した。


「ユティトレッドとのゆかりは今出来ました! 私セレネはフルエレさんのファンになりました! これでも私、ユティトレッド魔導王国ではそれなりのポストなんですよ!!」


「ポストねえ、普通の可愛い私達と同年代の学生さんにしか見えませんけど、ふふ」


 フルエレは嫌味では無くて愛嬌たっぷりにセレネに笑いかけた。


「詳しくは言えませんが、本当なんです! 信じて下さい!?」


 セレネがフルエレに顔を近づけて必死に強弁した。


「凄いですよフルエレ! 水〇黄〇の次は、いがみ合っていた国同士を結び付ける大役なんて、薩長同盟の仲介をして同盟書類の裏書までした、まるで坂本竜馬ではないですか! 人気者の竜馬になれるなんて、こんな名誉な事は無いです、さ、早くお受けすると決断するのです!!」


「リョーマかリューマか知らないけど、訳の分からない例えはいいから、私怖いわ。いがみあっていた国同士の仲介者になるなんて、何か責任が重過ぎるわよ。何か後悔する事にならないかしら??」


 フルエレが少し俯き加減になって、不安そうな顔になる。


「ははははははは、心配性ですね! ちょっと三国の同盟の仲介するだけじゃないですか! さほど気にする程の事でも無いでしょう。かなり前に言った事ですからもう忘れているかも知れませんが、何かあれば私、いつでもフルエレだけ抱えてどこにでも逃げる覚悟はありますよ。別に贅沢な暮らしも何もお遊びみたいな物です。フルエレとさえ居れば、漁村だろうが山村だろうがそれで幸せですから私は」


「お兄様……」

「お、お前……時々赤面する様な事をさらっと言うな」


 イェラと猫呼があっけに取られてポツリと言った。


「嬉しい……」


 あれだけ言い合っていたのに、フルエレは自然に砂緒に手を差し出すと、すぐに砂緒も手を重ねて無言で見つめ合った。


「………………」


 セレネはそんな二人を見て、結局二人は好い仲だったのかと今頃悟って意気消沈した。


「はいというわけで、早速お受けしましょう!!」

「やっぱり信用出来ないわ……」


 いきなり良い雰囲気を断ち切り、テレビ司会者の様な軽い口ぶりで受諾を促す砂緒にやっぱり不信感が噴き出るフルエレだった。



 ―ユティトレッド魔導王国王城


「本当に列国同盟、上手く行きますでしょうか……」


 重臣の一人が王に訪ねた。


「こんな程度で躊躇しておってどうするのか……わしはこの同盟、三国で止めるつもりは毛頭無い。北方列国の残りラ・マッロカンプ国なども加えた後、中部小国郡も巻き込み、ゆくゆくはさらに大きな物とするつもりじゃ……」


「その様な事が可能でしょうか!? 特に中部小国郡の中でもプライドの高いメドース・リガリァなど頑強な抵抗が予想されますが……」


「出来る! 雪乃フルエレという玉を手に入れた今、必ず出来る、しなければいけないのじゃ……」


 重臣は普段慎重で遠謀深慮な王がこの所性急な事が気にかかった。


「恐れながら……無礼を承知でお聞きしますが、お身体に何かおありなのでしょうか……多大な犠牲を出してのニナルティナ攻略占領……何か性急過ぎるかと存じます……」


「そうでは無いぞ……わしは至ってピンピンしておるわい。セブンリーフに大いなる危機が迫っておるのだ……」


「危機とは……魔王軍の事でしょうか?」

「ふっ魔王軍など可愛いものじゃ」


 ユティトレッド王は深い憂慮の表情で、如何にも大魔導士という風情の真っ白い長い髭を触り続けた。



 すっかり暗くなりセレネも宿に帰り、イェラも猫呼もそれぞれの部屋で眠りについていた。


「あの話……受けてみようかなって思い始めたの」

「おお!? そうなのですねフルエレ」


 久しぶりに砂緒はフルエレの寝室に入れてもらっていた。


「魔ローダーに乗ってニナルティナで戦っている時、ご両親と離れ離れになってしまった女の子が居たの。あんな子達が今どうなっているか……私大きな事は分からないけど、あんな子達の為に少しだけでも役立つ事が出来るなら、才能も何も無い私が出来る事があるならそれで良いかなって」


「………………」


 無駄口の多い砂緒が窓から見える王城を見つめたまま黙り込んだ。


「ど、どうしたのよ!? 急に黙り込んで、いつもの様に変な事言えば?」


「い、いえフルエレはとても純真で優しい人間だなと思いまして。確かに私フルエレが言う様に最近邪念が多い気がしてきました」


「どうしたのよ、深刻に受け取らないでよ!」


 砂緒はフルエレに向き直して目を見て言った。


「先程も言った様に、フルエレの事は私が守りますよ! それだけは約束しますから……」

「嬉しい……」


 フルエレは目を閉じて微笑むと砂緒の胸に身を預けた。砂緒は窓から遠く見えるお城の明かりが目に入り、城にこっそり行っていた事に激しい罪悪感を感じた。

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