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鳥になって戦う


「ういいいいいいいーーーーーん」


 ガキイィイイイインン!!


「ひゅいいいいいいいいいーーーーーーーーーんん」


 ギィイイイイイインンン!!

 飛行形態に変形した砂緒(すなお)と雪乃フルエレの魔ローダーが、先程まで使っていた巨大な鉄骨を鳥の足状になっているパーツで挟み、空中をくるくる飛行しては上から三毛猫の魔ローダーに打ち込みを繰り返す。


「遊ばない!! 何やってるの??」


 子供の様に擬音を口で表現しながら、魔ローダーを操縦する砂緒を呆れて叱るフルエレ。


「だって気持ち良くないですか? 空を飛んでるんですよ。空を飛ぶ事がこれ程気持ち良いとは知りませんでした。私は病み付きになりかかってます」


 言いながら空中で急旋回して再び鉄骨でル・ツーを攻撃する。もはや一方的な状態になりつつあった。


「今仮にも私達戦っているのよ! 遊んでるんじゃないのよ、私だって飛びたいと言っていたけど、それは普段の時の事よ……」


 先程まで戦闘中にも関わらず、次にどこに旅に行くか相談していたフルエレが、急に真面目な事を言いだした。


「ではフルエレは、今念願の空を飛ぶ事が実現して、気持ち良いか、気持ち良く無いか、どちらかと言えばどっちなのですか? 二択でお答えください」


「え、何故二択なの?」

「二択でお願いします」


 何故が強引に答えを求める砂緒。


「……き、気持ちいいわよぉ……気持ちいいです……」


 聞いておいて何故か沈黙する砂緒。


「…………すいません、今のやり取りもう一度行っても良いですか?」

「何故?」


 先程から何度も何度も上空から鉄骨で打ち込む事を繰り返しているが、その度に三毛猫の群青の魔ローダーも粘り強く跳ね返す。


「分かりました。今度こそ真面目に戦いますよ! 奥の手である巨大化を試してみます」

「巨大化って?」


「最初魔ローダーに乗ってた時、視点が高かったのは錯覚では無かったのです。普段は二十五メートル程度の魔ローダーが巨大化してた様なのですよ」


「え、そうなの??」

「はい、という訳で再び巨大化を試してみます」


 テレビ番組の司会者の様に必殺技を試す事を軽く宣言する砂緒。


「どうですかね? 大きくなっていますでしょうか?」


「わっからないわ~~~外から見ないとなんとも。けれどさっきから鉄骨を持っている雰囲気が一緒だから、同じだと思うの……」


「確かに……」


 フルエレが指摘する様に、モニター画面の下部に映る鉄骨を握る鳥の足は、先程とは変化無く見えた。


「大きくなっていれば、握っている鉄骨が爪楊枝みたいになると思うのよね」

「確かに! うーん、どうすれば良いのでしょうか」


 言っている間もずっと繰り返し繰り返し打ち込みを続けている。


「焦らないで! この攻撃も百回くらい続けて居れば勝てちゃうかもしれないわ!」

「百回は流石にめんどくさいですよ……」


 そう言う操縦桿を握る砂緒の手の上からフルエレがすっと手を重ねた。


「焦らないで。きっともう勝てちゃうわよ……」


「怒らないで聞いて下さい、実は先程からフルエレに再び抱き着きたいという欲求があります。それを解消すれば集中力が回復する気がするのです……」


 普通だったら一笑に付される様な内容だが、砂緒はいつもストレートに正直に言うタイプだと判っているので、冗談では無くて本気だとフルエレは理解していた。


「うん、いいよ……いつもお願い聞いてくれてるからね……どうぞ」

「ど、どうぞと言われると緊張しますね……」


 砂緒はいつになく緊張すると、操縦桿から一旦手を離しそっとフルエレの腹部に両腕をまわした。まわした片腕の上側には、若い跳ね返す様な胸の膨らみを感じた。


 このまま腕を持ち上げればそこに簡単に到達するのは分かっていたが、そんな事は今は出来なかった。


「す、砂緒……」


 そのまま無言で砂緒は再びフルエレの首筋に顔を埋めた。腹部に回した腕に少し力が入り、首筋に埋めた顔をすりすりと動かす。


「あっ……だめだよ……」


 許可した以上の行為に及ばないか、どきどきしているフルエレが思わず声を発する。


「はーーーーーっ、一旦満足しました」


 突然砂緒が顔を上げて言い放った。


「そ、そうなんだ!?」


 割と淡泊に収まった事に安堵しつつも、もう少し何かありそうかも……と微かに期待しつつあった自分自身に戸惑うフルエレだった。


「邪念が消えました。いつも近くにフルエレが居る、こんな嬉しい事は無いです」

「うん!」


 気が付くと鳥型に変形していた魔ローダーは、さらに巨大化していた。握っている鉄骨は爪楊枝という程では無いにしろ割り箸くらいに見えた。ぽいっと鉄骨を捨てる。


「大きくなった様です。もはや相手に勝ち目は無いでしょう」

「どうするの??」


 砂緒は巨大化した鳥の足でル・ツーを掴むとそのまま上空に向かって上昇を始めた。


「は、離せ! 何のつもりだ!!」


 先程からひたすら上空からの鉄骨攻撃をかわし続けていた三毛猫が力なく叫ぶ。


「落とします」


 急上昇すると、鳥が餌を落とす様に無造作にぽいっと落とす。


「きゃーーーー!!! ちゃんと落下地点計算してるの!?」

「もちろんですよ、人が居ない砂浜に落としますから!」

「ぐわーーーーーーーー!!!!」


 真っ逆さまに墜落していくル・ツー。

 ズドーーーーーーーン!!!

凄まじい轟音と砂と水しぶきを上げて、丁度うまい具合に砂浜に落とされるル・ツー。


「こ、こんな程度で、わ、私が倒されるとでも……思っているのか!!」


 頭から砂浜に突っ込んでいたル・ツーが物凄い生命力で起き上がる。


「うわ……まだ動いていますね、仕方ないですねもう一度実行します」

「なんか可哀そうになって来ちゃった……もういいんじゃないかな……」

「何を言っているのですか? 女性にはそういう罪人の罪を直ぐに忘れる部分がありますよね……」


 砂緒の言葉を聞いてすぐに無言になり、後ろからでも分かるくらいに頬を膨らますフルエレ。


「い、いいや、フルエレはもちろん普通の女性と違って、特殊というかかなり聡明ですけどね」

「そ、そうかしら!?」


 フルエレが割と単純で良かったと安堵しながら砂緒は再び掴みにかかる。


「ですがやはりこの者の罪は重いので、完全に動かなくなるまでやり続けます」

「う、うん……」

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