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新たなる姿、魔ローダー空を飛ぶ


「あ、忘れていました」


 砂緒は避けたり鉄骨で受け止めたりして全ての攻撃をかわして行く。


「砂緒、なるべく海岸に向けて移動して! 街に近付くと誰かを踏んじゃうよ!」

「やってみます!」


 ガチーーン、ガキーーーン!!

 二機は長剣と鉄骨で文字通り火花を散らしながら、港や砂浜で戦い続ける。


「あの群青の魔ローダーはやっぱりル・ツー!! 私達王家に伝わるル・ツーを動かせるのは王家の者だけ……あれに乗っているのはお兄様なんだわ……国が吸収合併された時に勝手に持ち出した機体……」


 残り約ニ十匹のサーペントドラゴンが全て倒され、避難誘導や怪我人救助に多くの人々が活動範囲を広げ、回復が得意な冒険者達と怪我人救助に当たっていた、猫呼(ねここ)クラウディアとイェラ達がとうとう港湾都市の港にまで到達していた。


「そうなのか!?」


 初耳の話が多すぎて混乱するイェラ。


「ル・ツーは魔王が所有しているとされるル・スリーと並んで最も古くて、最も強い機体の一つとされているの……倒しても倒しても恐ろしい回復力で絶対に勝つ事は出来ない! このままだと砂緒とフルエレが殺されちゃうよ……どうしよう……」


「え!? そんな凄い機体なのか?」


 魔王という聞き慣れないパワーワードが飛び出して驚くイェラ。


「やめてーーーっ! お兄様やめてーーーっっ!! そんな事をしてても神聖連邦に吸収された故郷はもう元に戻らないのよ!! 只の八つ当たりだわっっ!」


 猫呼が手を振りながら戦う二機に近寄ろうとする。最もスケール的に間近に見えていても走る寄る事は、まだまだ相当走らないと無理だが。


「危ない、やめろっ! 話が通じる相手では無い!」


 イェラは細かい内容はもう考えない様にして、猫呼を抱き抱えて庇う。


 ガキーーーン、カキーーーーン!!

 猫呼が間近で叫んでいる事など気付きもせず、二機は長剣と鉄骨で激しい打ち合いを繰り返す。


「そう言えば……つかぬ事を伺いますが、この魔ローダー背中に変な羽根が生えていますね。こんな物ありましたか?」


 実は砂緒はまだまだ眼前に乗るフルエレの、耳や首筋やちらちら見える背中を見て興奮が収まっておらず、時折生唾を飲み込んでいるがそうした事を一切隠して違う話題を切り出した。


「そうなのよ! 一人で竜達と戦っている時にだんだん生えて来たのよ!」


「なんと……その様な事があったのですかっ。確かに若い人間と触れ合う機会が多いご老人が、若い人のエキスを吸うなどと言いますからね、ドラゴンと戦う間にドラゴンのエキスを吸ったのかもしれませんよ!」


「若い人のエキスを吸うって……お年寄りみたいな言い方しないでっ」


 フルエレは久しぶりの砂緒の迷言に苦笑いをした。


「こう見えても百歳ですから、お年寄りと言えばお年寄りなのですが」

「戦闘中に公園のベンチででも普通に語らってるみたいに会話するなーーーっ!!」

「うわ、何をぶち切れているのですかこの男は……」


 砂緒とフルエレは普通に会話しているが、実際には二機の巨大な魔ローダーで海岸で激しい打ち合いを繰り広げている。


 ル・ツーがブンっと長剣を横に斬ると、ザンッと砂緒の魔ローダーがしゃがんで避ける。


 そのまま宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島決闘の様に、砂浜をザシュザシュと走りながら剣を構えると、ル・ツーが振り下ろした長剣を砂緒の機体がジャンプして避ける。


 着地した時に激しく上がる大波。


「……魔ローダーも羽根が生えたけど、砂緒も別人くらいに変わって来たよね、なんか最初は人間性の欠片も無かったし……」


「人間性無かったですか。それよりもこの機体は飛べるのですか?」

「ううん、全然飛べないの。ピョンピョンジャンプするだけ。変わったのは羽根が生えただけみたい……」


「変わるですか……変わるねえ……そう言えば私はデパートという建築物から人間に変化したのでしたっけ……」


 ガキッシューーーッ


「え!? なんか変な音がしてるわよっ!」

「うわ、壊れてます壊れてます。視点が変な位置になってる、機体が崩壊していますよ!」

「どうした! 何の真似だ! ふざけるなっっ!!」


 砂緒とフルエレの二人の魔ローダーが、戦闘中におかしな挙動を始めた事に戸惑いつつも、すかさず長剣でそのまま切り裂こうと突っ込んで来る。


「死ねえ!!」


 ガシャガシャッッ!!


「うわ、来た来た危険ですけど、機体が上手く操作出来ません……」

「きゃっ!! もうだめっ!! 砂緒!!」


 ル・ツーの長剣が振り下ろされたが、だが既にそこに二人の機体は無く、空中をビュンと虚しく切り裂くだけの音がする。


「どこに消えた!?」


 三毛猫は左右をキョロキョロ探す。


「あれ、なんか今度は急に高い位置に来てる気がする……」

「これ……空飛んでる気がするわよね……何コレ」


 とても残念な事に文章で表現する事が困難な程の複雑な機構により、砂緒とフルエレの二人の魔ローダーは人型から飛行機の様な形態に変化していた。


 しかし中に乗っている二人には全貌が掴めず訳が分からなかった。


「見ろ猫呼……魔ローダーが羽根と足の生えた鳥みたいな物に変わったぞ!! あれは何だ??」

「知らない私もあんな物は分からないよ!」


 猫呼とイェラとル・ニに乗る三毛猫も、大空を舞う空飛ぶ銀色の巨大な鳥型に変わった魔ローダーをポカンと見上げた。

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