再会… とりあえず雷撃
「何が……起こった!?」
呟く三毛猫。
「何!? 何がどうしたの??」
倒れていたフルエレの魔ローダーは、辺りを見回した。座り込み肩がダランと垂れ下がる三毛猫の魔ローダー。意味が分からず呆然としていると、聞き慣れた声が聞こえる。
「おおおいーー!! フルエレ、早く私を回収するのです! 乗せて下さい!」
「ああああ!! ああぁ!! 砂緒!! 来てくれたんだ」
一瞬でフルエレの目に涙が溢れる。しかしその声が当然三毛猫の魔ローダーのマイクにも拾われていた。
「ふざけた……真似を……させるかあああ!!」
痛みを我慢し、再び立ち上がろうとする三毛猫のル・ツーだった。
「いっけえ! 物理弾三連射!!!」
その時突然魔戦車の咆哮が光った。ずっと建物の陰に隠れて様子を伺っていた、速き稲妻メランの魔戦車だった。
ドドドン!!!
三発の物理弾がル・ツーの肩口に連続ヒットした。
「ぐわあああああああああ」
痛んでいた肩口に見事命中し、三毛猫は再び肩を押さえて座り込む。
「わはっ当たっちゃったあ! 逃げるよ!!」
「了解!!」
魔戦車はギュワーーーっと後退して建物の陰に隠れる。今度こそ魔戦車は姿をくらました。
「今だわ!!」
フルエレは魔ローダーで走り出すと、鼠を捕まえる様に砂緒をひょいっと掴むと、自分の座席のハッチを開け砂緒を放り込んだ。
「あはっ砂緒……ああっあああっ!! 来てくれた!!」
操縦席に入るなりバシャッとハッチが閉じられ、いきなりフルエレが座席から立ち上がって砂緒にがばあっと抱き着いた。
「砂緒、砂緒……!!」
「フルエレ……」
フルエレは抱き着いて涙を流し、砂緒も久しぶりの感覚に浸りフルエレを抱きしめた。
「凄く怖かったのよっ! 一人でずっと戦ってたの!!」
「分かっていますよ、本当によくやりましたね」
砂緒は久しぶりに短くなってしまった金色の髪を撫ぜながら言った。
「……私ずっと、砂緒は頭がおかしくて、私が……この子を導かなきゃ……とか思っていたの、でも違ったわ……私が砂緒が居ないと不安なの、私の方が砂緒にいつも一緒に居て欲しかったの……」
フルエレは涙を流しながら猫の様に、ぐりぐり耳や頭を砂緒の頬にこすり付ける。
「一部ひっかかる所はありますが、私も同じですよ。フルエレは弱々しくて、最初こんな人間が良く一人で生きていられるなって思っていました。でも今は……私もフルエレが近くに居ないと何も面白く無いです。お城の生活も牢屋に一緒に居た時に比べたら……いつも一緒に居た時に比べたら何の価値も無かったです」
二人は戦闘中なのも忘れ、フルエレは少し恥ずかしそうな笑顔で、目を潤ませながら狭い座席で見つめ合った。
「貴方達……全部スピーカーで流れてるって気付いていますか? 戦闘中に何を始めるんですかね? とても不快ですよ」
三毛猫は肩の痛みに全身をブルブル震わせながら、なんとか魔ローダーを立ち上がらせた。
「えええ!?」
フルエレは口に手を当てて絶句して赤面した。
「別に何を恥ずかしがるのですか? もっともっと皆に仲の良さをアピールしましょう」
「どうすれば音消せるの!? やっぱり貴方はしばらく黙っててよっ!!」
「ではこうしましょう」
よろよろ立ち上がる三毛猫の魔ローダーを見て、砂緒は身を屈めてフルエレの掌の上から操縦桿を握ると機体を走り出させ、ル・ツーの肩を思い切り蹴り上げる。
「ぐわああああああああああ」
再び崩れ落ちるル・ニ。
「この者を始末する前に、先に竜達を始末します」
そう言うと砂緒は、梯子を下りて下の座席に入った。
「なんと……兎幸が寝ているではないですか!」
「そうなの! 疲れて寝ちゃっているのよ、起こさないでね!」
「では仕方が無いですね。魔法自動人形の兎幸が電気に耐性がある事を祈りましょう!」
「ええ!?」
砂緒はバシャッと上下の操縦席の間にあるシャッターを閉じた。そしてシートベルトで固定された兎幸を起こさない様に操縦桿を握る。
「巨大化していない状態で、威力がどれ程の物か不明ですが、試してみましょうか……」
砂緒が握る操縦桿にバチバチと電気が伝わり始めた。二人が乗る魔ローダーが片腕を上げ、その指先から激しい稲妻が空に向かって伸び始めた。
途端に黒雲が沸き起こり、黒い空の一面に竜の様に稲妻が走り始めた。
「何だ!? 何が起こってるんだ!?」
怪我人救助に当たっている兵士や一般人が空を見上げた。
「凄い……広範囲に攻撃指定されていくわ……」
フルエレがモニター画面を見ると、港湾都市全面に散らばるニ十匹程のサーペントドラゴンに攻撃範囲が付与されて行く。
「効くかどうか不明ですが、三毛猫にも当てておきましょうか」
砂緒が言うと、面前の三毛猫のル・ツーにも攻撃範囲指定がピッと付与された。
「では撃ちます!!」
二人の魔ローダーの腕が振り下ろされた。




