屋根で滑る女神、 渾身の一撃b
「あ~今一瞬見たでしょう!」
「そんな事が言いたかったのですか?」
「違うの! 貴方にはまだ巨大化する能力があるのよ!」
「巨大化ですと?」
女神が帽子を押さえながら叫ぶ。
「ええ! でも人間がそのまま巨大化したら不気味ですから、やっぱり却下って事にしてたんですけど、魔ローダーに乗った時だけ発動出来るみたいなのですわ!」
「なる程……最初に魔ローダーに乗った時に大きく感じたのは、錯覚では無かったのですね」
その時、真剣白刃取りで力比べをしていた二機の魔ローダーが引き離され、フルエレの機体がニナルティナ湾タワーに背中から叩き付けられた。
「きゃああああああ!!」
ズザアアアアアアーと女神が滑り落ちる。慌てて砂緒が女神の手首を掴んだ。
「女神さん、貴方は落ちたらどうなるのですか? 死ぬのですか??」
「落ちても死なないし、そもそも浮く事も出来るしその前に違う次元に移動出来ますわよ」
「じゃ、なんできゃあああとか言ってるんですか?」
「ノリですわ」
「落とします」
「分かりました分かりましたわ、もう帰ります。また会えると良いですわね!」
「あっ」
砂緒が手首を掴んでいた女神は、一瞬で輝く粒子になって消えた。
「フルエレ、今は手を抜いて下さい」
下ではタワーを巡る攻防が続いている。
「きゃあああああああああ」
今度の叫び声は消えた女神では無く、フルエレの魔ローダーからでフルエレの機体は再び地面に叩き付けられた。
「そこで二本目のニナルティナ湾タワーが崩れる様を見ていなさい!」
そう三毛猫が言うと、塔にギリギリまで近づき、剣を振り下ろそうと構えた。
「今ですね!」
砂緒は一旦屋根の根元まで後退すると、一気に全速力で走り出した。と、同時に拳が白く透明になって輝き始める。
「てやああああああああああ!!!」
展望台の屋根の際まで行くと、加速を付けて躊躇無く飛び降りた。そのまま三毛猫の魔ローダール・ツー目掛けてダイブする。
「うおおおおおおおおおおおお!!!!」
三毛猫は全く気付いていなかった。ぐんぐん近づく砂緒の拳。
グギイイイイイイイイインンンン!!!
砂緒の拳はル・ツーの長剣を握っている側の、人間で言えば鎖骨や肩甲骨や肩の辺りを直撃した。
「ぐがあああああ!?」
全くの不意打ちの突然の痛みにのけ反る三毛猫。
ル・ツーは剣を落とし、握っていた方の手の肩は酷い脱臼か骨折でもした様に、その位置がダランと下がり、プレートアーマー越しからでもその状態異常が理解出来た。
そしてル・ツーはそのままその場に座り込んだ。中の三毛猫も同様に自分の肩を押さえて冷や汗をかいた。
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