屋根で滑る女神、 渾身の一撃
砂緒は一通り大きな窓から戦闘を見届けると、すぐに一般人侵入禁止の業務用階段を探し、展望台よりさらに上の階に出ると、鍵が閉じられていた業務用ドアを叩き潰して展望台の屋根の上に出た。
もともと恐怖心がほぼ無いので、普段の地面の様にすたすたと歩きギリギリ際々の下が覗ける所まで来ると、屋根に手をついて落ちそうなくらいに身を乗り出して下を覗き込む。
「さあ、効くかどうか不明ですが、一発お見舞いしてみましょうか!」
そう言うと、魔ローダーが隠されていた基壇を潰した時の要領で、かつての建物だった時の全重量を拳の一点に込めるイメージを始めた。みるみる内に拳が透明な白色になり輝き始めた。
「ああ!? 何をしているんですかフルエレ、今は頑張らなくて良いのですよ!!」
砂緒が落下しながら、群青の魔ローダーに拳で一撃を加えてやろうと画策した途端に、フルエレの魔ローダーが二本目のタワーを倒されてなるまいと、三毛猫と揉み合いを始めた。
「だから止めなさいと言ってるでしょーーーーーっ!!」
叫ぶフルエレ。三毛猫もタワーへの攻撃を止めてフルエレに応戦する。長剣をシャッシャッと振り回し、周囲の建物の角っこや地面に転がる大型の魔車等を切り刻んで行く。
その度にフルエレの魔ローダーが右に左に体を動かしてなんとかよけ続ける。
「だいぶ動きが良くなって来ましたよ! 本当に残念ですね、貴方にも武器があれば良かった!」
「だったらそれを頂戴ーーー!!」
フルエレはカッとなって、思わず転がっていた魔車を投げつけてしまう。簡単に弾かれる車体。
「あっ」
中に誰も乗っていないか慌てて拾って確認するが、ドアは閉じられたままでガラスも割れておらず、その状況で中に誰も乗っていなかった。
「ホッ……」
「隙あり!!」
万華鏡の様に魔車を顔に近づけて覗き込む、フルエレの魔ローダーに三毛猫の魔ローダール・ツーが斬りかかる。
はっっしっ!!
「おおおおおお!? 真剣白刃取りですと??」
上から覗き込む砂緒が驚嘆の声を上げる。偶然にもフルエレは三毛猫のル・ツーが振り下ろした長剣を両手で挟み込む。
「なんだと!? こんな技をどこで……」
「偶然!」
ぐぎぎぎぎぎと、両者は力比べをした。
「よっと……フルエレさん凄いですわね!」
「うわああああ!!」
砂緒が少し上を見ると、エレベーターガールに扮装した女神が展望台の屋根に手を着きながら、恐々降りて来ていた。
「何故来た貴様!!」
「まだ、伝える事を忘れていたのですわ!」
砂緒は一瞬だが女神のタイトスカートのスリットから覗く、パンストに包まれた大腿に目が行き、慌てて視線を逸らした。




