ちょっとした悪意、逃げるっ!b
「ああ!? わざとやってるでしょーっ!」
フルエレの魔ローダーも路面念車の剣と盾を構えて走り出す。
「そんな物で本気で戦うおつもりですか?」
ル・ツーが剣をびゅっと振るとフルエレの魔ローダーが路面念車の盾で防ぐ。所がいとも簡単に路面念車を真っ二つに断ち切る。
「まだまだっ!」
体を捻ってのけ反ったフルエレの魔ローダーが片足を踏ん張り直し、剣すじをぬいハッチがあった辺りの胸に路面念車の剣を突き刺す。
グシャッ
路面念車の剣は簡単にひしゃげた。
「そんな物が効く訳無いでしょう……」
「やっぱ無理かーっ!」
フルエレは斬られた路面念車の一部と、潰れた短剣にしていた路面念車を立て続けに群青の魔ローダーに投げ付けた。一個は避けられ、もう一つは剣で弾かれる。
「や、やややや、やっぱり、にげりゅっ!」
慌てふためいてろれつが回らないフルエレは、くるりと魔ローダーを反転させると、そのままダダッと走り出した。
「ハハハハハハハハハ、砂緒と全く同じ行動パターン! もはや夫婦ですか? 似た物夫婦じゃないですか! 本当に笑えますね!」
操縦席内で三毛猫は本当に腹を抱えて笑っていた。
砂緒を乗せた魔戦車がようやく港湾都市の入り口に到着した。
もう街に差し掛かる前からタウンハウスやアパートの複数階建築物が燃える様子が見えていて、近付くと中部各国軍やリュフミュラン正規軍や旧ニナルティナ軍の人々が、これ以上サーペントドラゴンが南下しない様に魔戦車で防衛線を張っていた。
「遅い! 何をやっていた砂緒! お前が一番必要な時に居ないってどういう事だ!」
「おい砂緒! フルエレはもう戦っているぞ!」
「お兄様何をしていたの? 冒険者隊の人達も怪我人救出に当たっていますよ!」
衣図ライグが魔戦車の隊列から飛んで出て来て叫ぶ。後ろからさらにイェラと猫呼クラウディアも出て来た。
「申し訳ない。まさかこんな事態になるとは思って無かったです! 最初は観光気分でノロノロ来ていたのです。一体何をどうすればいいのか教えて下さい。それにフルエレはどこにいるのですか?」
「ああ、みんな同じ様なもんだ。それだフルエレ! 物見の話によるとだな、フルエレは魔ローダーで一人でずっとドラゴンを狩り続けていたんだが、先程最新の報告では群青の魔ローダーがもう一体現れて、どうやらそいつとやりやってるらしいぜ。それで俺たちは全てフルエレに任せっきりで、ドラゴンが南下しない様にだけ防衛線を張ってるって訳だ。情けないぜ」
衣図が頭を掻きながら申し訳なさそうに言った。




