突きの嵐、わーーーっ泣きながら戦う そして羽根b
「お姉さん誰? 何で泣いてるの? 私は梅狐よ」
「あはっ、ぐすっお姉さん泣いて無いよ~ぐすっ梅狐ちゃん、お父さんお母さんはどうしたのかしら? げはっ」
その時実際フルエレはちょっと涙が出ている程度じゃないくらいに泣き始めていた。不審感がありまくりながらも、このお姉さんは自分を助けてくれている……という事は梅狐は理解した。
「お父さんもお母さんもどこに居るか分からないの……怖いよ、どうすればいいの……ぐす」
「お願い泣かないで……私もいっぱいいっぱいなの……お願いよ」
もうフルエレも一緒になってワンワン泣きたい気持ちになっていた時だった。
ズザザザと野球のスライディングの様に数名の兵士が、屈む魔ローダーの腹部に滑り込んで来て、梅狐を保護して覆い被さり抱き締める。
「女神殿! ここはお任せを! この女の子は保護してご両親の元に必ず届けます故、戦闘にご専念を!」
よく紋章を見ると占領されたニナルティナの現地兵と、占領した側のリュフミュラン兵が混じって行動していた。
「あ、貴方達どうして!?」
「こんな時に敵も味方もありません! 捕虜だった兵達も解放して、住民避難誘導に当たっています! 当たり前です!!」
「ああっ嘘みたい……」
フルエレは梅狐を抱いて誘導する各国の兵士達を見て涙がぽろぽろ流れ落ちた。
「雪乃……みんな貴方を応援してるの……痛いけど立って」
気が付くと下から梯子を伝って兎幸が操縦席に上がって来て、落ちない様に椅子にしがみ付いていた。なおも優しい笑顔で必死にこちらをみつめる兎幸。
「分かったわ……私だって……出来る限りやってみるわ」
「反対の手で……打ってみて……」
「うん、やってみる!」
女の子が無事保護されたのを見届けてバシャッとハッチを閉じると、ゆっくり立ち上がり、おもむろに一番近くに居た無差別に建物を攻撃中のドラゴンに襲いかかった。
「クッ○があああああああああああああああああああ!!!! わあああああああ!!!」
号泣しながら利き手じゃ無い方で、手刀を打ち込みにかかるフルエレ。ザシュッと突き刺さる。
「雪乃……言葉壊れて来た……あれ、雪乃、うしろ羽根が生えてる……」
「へ?」
確かにフルエレも、モニターの端っこにチラチラ映る羽根らしき物を視認した。
乗っている二人からは完全に見る事は不可能だが、戦闘を続ける魔ローダーの背中には、知らぬ間に本体と同じ金属質の長い数枚の羽根が生えていて、走る度に風になびくマントの様にひらひらはためいていた。




