ドラゴン五十匹召喚b
「本当にこれだけの軍団で屋台街を占拠するのね、ちょっと信じられなかったけど一応作戦完了よね。砂緒は一体今どこにいるのかしら? ここの正規軍に紛れているのかしら?」
「軍需工場のある……港湾都市全体の制圧を……屋台街占拠って言ってるだけ……だと思うの」
魔ローダーや正規軍が占拠した、ニナルティナ中川の巨大な中州は川が防御用の堀ともなり、確かに軍が駐屯するのに適した地だった。
「あ、あ、そうなんだ、あはは私本気にしちゃってた。ユーモアだったのね」
しかしフルエレは小さな抵抗はあったにしろ、あっけなく作戦が完了した事で心からほっとしていた。今度こそこれで帰れる……と思った瞬間だった。
「何だ! あれは浮いているぞ! また抵抗者か!?」
「いや、あっちにもいるぞ! 向こうにもいる!」
正規軍の兵士達が自分達を取り囲む様に浮遊する、無数のローブ姿の魔導士を発見して叫ぶ。
魔法機械無しで浮遊するのは近年失われて来た高等魔術であり、相当高度な魔術師の集団であると判る。その不審な魔導士が一斉に何かを詠唱し始めた。
「撃たせるな! こちらから撃て!!」
これまでの様に正規軍が浮遊する魔導士に向かって、一斉に砲撃や魔法攻撃を開始する。
しかし浮遊する魔導士は高度な防御魔法陣を展開しているのか、一切効果が無く弾かれる。
「軍にとって扱い易いからと、魔戦車等という馬鹿でも一般魔導士でも強くなれる気がする兵器の為に、過去の歴史の中に追いやられた我々の鬱憤を知れ! 出でよサーペントドラゴン!!」
言葉と共に一斉に空中に展開した、回転する魔法陣から召喚される巨大な灰色の羽根が生えた竜。その大きさはフルエレの魔ローダーと同じか少し大きい程だった。
「何だこれは……どうすれば良いのだ!」
「あれを見ろ! 召喚術者を食べているぞ!」
なんと召喚された竜達は一斉に術者を巨大な爪で斬り裂いたり、巨大な顎でかじったりしてしまった。
竜達が全く制御されていない事が判明してしまう。羽根を羽ばたかせながら、ずしゃっと一斉に空中からゆっくりと地上に降り立つ竜達。
「なんて事……こんな物が五匹もいるなんて……」
フルエレはモニターを見て驚愕した。
「五匹じゃ……ないです……港湾都市全体に……五十匹は居ます……」
兎幸はモニター範囲を左右移動させて冷静に答える。
「え? 十五匹も居るの?」
「……十五匹じゃない……です、五十匹は……います」
「嘘でしょ」
フルエレは魔ローダーの操縦席で愕然とした。同じころ白濁した汁に麺が入った料理を持ったまま、無言で立ち上がって成り行きを見ていた有未がぼそっと言った。
「親父……やっぱ俺逃げるわ。眼鏡行くぞ!」
「は、はい!」
「あ、お客さん! そんな」
台の上には料金の何倍もの金が置かれていた。




