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ドラゴン五十匹召喚

 フルエレの魔ローダーは隊列を離れ川岸に突然走り出す。


「ちょっと! お年寄りに何て事するのですか! もうここから先は湾に出るだけ、破壊工作も攻撃も関係無いと思うの! 行かせて上げて!!」


 魔ローダーの魔法外部スピーカーが大音響で突然割って入り、驚く正規軍兵士。


「な、何なんですか! これは我々の役割なのですよ! 割り込まないで頂きたい」

「もういいじゃないですか、腐ってしまったら勿体無いですよ!」

「おお! なんと有難い女性の声の方、貴方は女神様なのでしょう!」


 商人達は涙を流す勢いで手を合わせ喜ぶ。


「ふん、仕方が無い! もう行くが良い」


 正規軍兵士が通行を許すと、係留されていたローブが解かれ、すぐさま商人の貨物船は川岸を離れていく。離れる間もずっと頭を下げ続けていた。


「……フルエレ優しい……感動した……」

「そ、そそそんな事ないよ! 当たり前の事をしただけ!」

「フルエレ……可愛いのに心広い……素敵……」

「ちょちょちょ、そんな事ないってばあ! もう兎幸ちゃんったら、行きましょ行きましょ!」


 フルエレは殺伐とした掃討シーンの事も忘れて得意満面になった。


「こ、こうやってね、新しい支配者として現地の人々の心を開いて行くの! うふふふ」


 何か急に講釈染みた事まで言い出すフルエレだった。


「ふうう、ヒヤヒヤしましたぞ、しかし魔ローダーの搭乗員が間抜けで良かったですな」

「まだだ、まだ完全に湾を抜けるまで気を抜くな。まだ頭を下げ続けろ!」


 頭を下げている商人達がひそひそ話し続ける。彼らは根名(ねな)ニナルティナ王を惨殺し、彼が長年蓄えた金銀財宝を奪った元家臣達とその従者の兵士達が変装した姿だった。


 もちろん積荷は名物の魚卵の漬物等では無く金銀財宝だった。フルエレのおせっかいがみすみす彼らを見逃す結果となった。


「このまま上手くニナルティナ中川を抜ければ小島に到達し、南側にはいにしえの墓や岩組が無数にある海岸がある、そこで大型船を待つ手筈だ」


「あと……もう少しですな」


 小悪党らを乗せた船はまんまと湾を出て行った。



 フルエレ達が最初の目的地としているニナルティナ大屋台街では、侵攻の通達の為に殆どの屋台が避難して閑散としていた。


 しかし路面念車と同じく、意地になって営業している屋台もちらほらと見かけられた。


「うわ、魔ローダー本当に来たぜ。なんか最初に見た時よりちっこくなってる気もするがな。いやあんなもんだったかなあ?」


 その意地で開いている屋台の一つで有未(うみ)レナードが、白濁した汁に麺が入った料理を食べている。彼は度重なる敗戦の責任を取って全ての役職を解かれただの一般人になっていた。


 命まで取られなかったのは、彼が一応領主の息子だったからで、同じく副官の職を解かれた眼鏡と一緒に住んでいた。


 一緒に住んでいると言っても別に男女関係がある訳では無く、大きな館の一室に居候させてやっているだけだった。


「そんな事より私達の事、これからの事どう思っているんですか??」


 おもむろに眼鏡の元副官が切羽詰まった声で迫る。


「……なんだお前、そんな危険な奴だったか? 居候しておいて、妄想爆発させるなよ……」


「お客さん、屋台街が終わるかもしれないって時に痴話げんかは止めてください、一緒に最後の時を味わいましょう……」


「おお、親父、俺も死ぬ時はここでって決めてる。酒をくれ!」

「変な観光客相手にがんばった甲斐があったってもんだ、おごりだどんどん飲んでください」

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