ニナルティナ港湾都市
「確かに……凄い大都会だよね……」
兎幸までもがフルエレに影響されたのか景色を見始めた。
「そうよね~確かに文化レベルが違い過ぎるわ~どうしてこんな凄い国があっさり負けちゃったのかしら!?」
それは砂緒と雪乃フルエレの乗った魔ローダーのお陰だったのにもう忘れている。
ドドーーン!
突然大きな音がして、フルエレの後ろに続く正規軍の騎士団が二~三人吹き飛ぶ。
「きゃっどうしたの!? 何事??」
「右前方建物五階、撃て!!」
指揮官の号令の下に一斉に魔導士による魔法や魔戦車の砲撃、魔銃による集中砲火が建物の一つに雨あられの様に浴びせられる。
攻撃が終わりしばらくして煙が消えた後には、壊れた壁からだらんと垂れ下がる死体があった。
「全ての敵兵が武装解除した訳じゃないのね……」
フルエレのさっきまでの観光客気分が吹き飛ぶ。しかし正規軍の攻撃はオーバーキル気味ではあったが、味方がやられた以上は仕方が無い。こうした事が数度続いた。
「雪乃……あれは何なの?」
突然兎幸が叫んだ。今さっき戦闘があった建物の近くの路上を大きな乗り物が走り抜けて行く。
「す、凄い! これがニナルティナの路面念車なのね! 本当に文化レベルが違い過ぎるわ。初めて見ちゃった……しかもこんな緊急事態でも根性で運休してないなんて……運転手さんに敬礼よ! 兎幸ちゃんもしてる?」
フルエレはモニター越しに走り去る路面念車に敬礼を続けた。
「はぁ~戦いが終わったら乗ってみたいな!」
「え? 雪乃……ケイレイて何? 何を言っているの……」
フルエレが路面念車を見ている間にも、建物の窓から時折怪訝な顔をして魔ローダーやリュフミュラン正規軍を見つめる人々が居た。
彼らにとっては今後どの様な支配が待っているのか不安でならなかった。それからしばらく進んでいると、今度も兎幸が何か見つけた様だった。
「雪乃……何か揉め事、あそこの……川岸を見て……」
「ん? 何何どうしたの?」
フルエレが川岸を見ると、小さな河川用運搬船が係留され、乗組員と思われる人々が尋問を受けている様だった。
フルエレがモニターで見える部分を指でタッチすると、そこの会話が集中して聞こえる様に魔法マイクが音を拾ってくれた。
「だからこの船は一体何を運んでいるのだ? 早く幕を開けなさい」
「い、いえだから只の魚卵の漬物です。怪しい物ではありません」
「だから、だったら早く開けなさい」
「い、いいえ、だから魚卵の漬物だから日光を当てると腐ってしまうのです! 早く通してもらわないと、他国に売るための大型船に遅れてしまうのです……これでどうかお通し下さい」
商人と思しきお年寄りは尋問を続ける兵士に賄賂を渡そうとする。
「ますます怪しい! もう良い無理やりにでも調べさせてもらう」
兵士は部下に命令し船を調べようとする。
「お待ちを、あっ!」
兵士の前に立ちはだかった年老いた商人が突き飛ばされる。
「まあ大変、止めなくてはいけないわね」




