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ニナルティナ王国、ひっそりと滅亡…


「この唇が……妖しく不敵な笑みを浮かべていますか?」


 突然七華が目を閉じ、唇を向けて来た。砂緒はすぐに祝賀の場でのフルエレに目撃された事件を思い出す。


「ここは大変人目が多いです。お止め下さい」


 砂緒はお遊戯会のつもりで役を演じているつもりが、いつの間にか本当に役に没入している事に気付いていない。以前の砂緒なら、結構! と片手を上げるだけだったろう……


「うふふ、帰って来たら、今度こそ一緒にごにょごにょ致しましょうね……」


 七華王女は今度こそ本当に妖しい表情で砂緒の耳元で小声で囁いた。だからそういう所がっ! と砂緒は心の中で思った。


 一礼して七華をゆっくり離し一瞬ちらっと、もう随分前を進む魔ローダーの後ろ姿を見上げると、砂緒は白い馬に飛び乗り南に大急ぎで向かった。


「気を付けてくださいまし~~!」 


 七華は白いハンカチを振り続けた。


「一人だと不安だったけど、今日は兎幸(うさこ)ちゃんが来てくれて本当に嬉しい! そうだわ、イェラが早朝に作ってくれた、サンドイッチと飲み物もあるのよ! あ……兎幸ちゃんって食べれるのだったかしら?」


 当の魔ローダーのコクピットで雪乃フルエレは砂緒に全く気付く事も無く、場違いな程明るく元気になっていた。


 事前の情報で敵国では離反が相次ぎ、抵抗という抵抗は無いだろうという事からだった。もちろん城に向かった義勇軍の人々が心配ではあったが、何かあれば走って行こうと考えていた。


「私も食べれるよ……お菓子好きです。でも魔力吸われたら死んじゃうから、操縦は出来ない……の」


「いいのよ! 居ててくれるだけでどれほど心強いか! あ、そうだわ魔ローダーって飛べるのだったのよね!」


「うん……知らない」


 何でも知っていると思っていた魔法自動人形の、兎幸のいきなりの素っ気ない返事にがくっとするフルエレ。


「さ、早速サンドイッチ食べちゃう? あはは……」


 フルエレは下の座席の兎幸に向かって笑って誤魔化した。



「どうやら本当に侵攻が始まりましたなァ。いつまでトロトロしてらっしゃるのでしょうか? 他人の事ながら私までやきもきして参りましたよ……」


 以前の様に根名(ねな)ニナルティナ王の玉座の後ろから、こそっと接近した三毛猫仮面が玉座の正面を見てうんざりした顔をして、咥えていた四葉のクローバーを落とした。


「おやおや死体と親しげに会話してしまいましたよ。誰もこんな恥ずかしい場面見てないですよねえ」


 三毛猫仮面は左右を見たが周囲には誰もいなかった。ただ玉座では絶叫の大口を開け、胸や腹部に大量の剣や槍を突き立てられた根名ニナルティナ王の死骸があっただけだった。


「なんと王様、実は私が一番律儀だったとは笑えない冗談ですよ。金銀財宝に手足が生えてどこかに歩いて行ってしまった様ですな。私は約束通り暴れて華を供えましょうか……」


 三毛猫との会話を盗み聞きしていた家臣達が相談し王を殺害し、大量の金銀財宝を貨物に偽装して国の中心を流れるニナルティナ中川を既に船で下っていた。


 北の小島から船で逃亡するという手筈だけはしっかり王様を継承していた。


 しかしかつてセブンリーフの盟主と謳われた強国のニナルティナ王国は、殆どの者に知られる事も無くひっそりと既に滅亡していた。

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