遭遇、二人の初めての出会い……
「こ、これやめなさいっ!!」
「いいじゃ~ないの~」
ドタバタ
しつこいスナコと本気で嫌がるX子こと姫乃ソラーレの格闘は続いた。
キィイイインン!
その時突如スナコの後方から甲高い音が響く。
「むっ?」
「はぁあああ兎幸キィイイーーーーーック!!」
どぎゃっ!!
「ぐはぁあっ!?」
ゴロゴロゴロゴロ
突如空から飛来した兎幸がスナコを思い切り飛び蹴りし、屋上を激しく転がって行く。
シュタッ
そして驚くX子の前に立ちはだかった。
「X子ちゃん大丈夫? もぉースナコちゃん短期転校生をイジメちゃダメだよっ!」
ビシッ
兎幸は、転がり続け転落防止用網に掛かってギリギリで止まったスナコに叫んだ。
「兎幸勘違いでござるピョンよ、わらしはX子ちゃんに校内生活のイロハを教えておっただけ」
「ほ、本当なのX子ちゃん?」
「……」
「ほら、X子もウンウンと頷いてござろう」
「そんな風には見えないけどなあ」
「拙者には16連打くらいの勢いで頷いておる様に見えるが」
ジトッ
突然兎幸がさらに厳しい目でスナコを見た。
「あれ、どうしてスナコちゃん地声で話しているのWボードは? さっきX子ちゃんにのしかかろうとしてなかったかな、何を教えてたの~」
ギクッ
スナコの心臓は止まりそうになる。
「あ、あれは全体重を掛けられた時に、どうやったらスリーカウント取られないか教えておったのです」
「……」
「あっなーんだ、スリーカウント脱出方法教えてたんだね! てっきりえっちな事してるのかと思った」
ブーーッ!
スナコは気分を落ち着かせる為に飲みかけた炭酸水を吹いた。
シュバッ
だがそれを見てX子はWボードを取り上げる。
キュキュッ
『わらわはいかがわしい事などされておりませぬ』
「そ、そうなのゴメン勘違いしちゃった」
「ゴホン兎幸、良く聞いて欲しいでゴザル。わらしとX子は目が合った途端にビビッと来て一瞬でマブダチになり申した。それで地声で会話を……しかしX子が仲間ハズレにされては可哀そう、それで今日の事は誰にも言わないでもらいたいでゴザルよ。その代わりに兎幸の大好きなニンジン一年分を進呈しましょう」
スナコは引きつった笑顔で必死に説得した。
「……そなの? 分かった。わ~い大好きなニンジン一年分ありがとう約束だよ!」
「兎幸こそ約束デスヨ」
「ウンッじゃあボクは学園の平和を守って来るね」
ビューン
砂緒に騙されやすい兎幸は今考案された設定の大好きなニンジンに釣られ、個人用UFOに乗って飛んで行った。
「ふぅやばかったです、屋上になど出るので無かった。まさか兎幸がえっちな事とか言い出すとは。科学の進歩は日進月歩ですなぁ、兎だけに」
「飽きれた物言いですね、私の貴城乃シューネは紳士です、貴方の様な如何わしい人間とは大違いですね」
「くくく、貴方は知らない様ですな。実はヤツは七華という妖艶な美女の前でハメを外し襲いかかろうとしておったのです」
スナコは両手を広げた。
「う、嘘ですそんな話など信じません!」
「くくく、男など全員野獣なのですよ。ではシュミューズ一枚になって制服を渡して下さい」
くいくい
スナコは腕を伸ばした。
「はぁ? 何故ですか」
「その薄汚い制服を燃やします」
「でもここで裸になる必要はありません!」
チラリ
スナコはさっきの今で、兎幸が飛んで来ないか恐ろしくなった。
「ちっやりにくくなりましたなあ。仕方がありません、部室に行きましょう」
「……良いでしょう」
X子はズレ掛けた仮面をしっかり付け直し部室に移動した。
ザッザザッザ
ー喫茶猫呼部室支店
『雪布留、制服のスペアを貸して下さい』
「帰って来るなり何言ってんだよ?」
「んなモンある訳ねーだろ、なあ雪布留さん」
「制服のスペアですって!? ……あるよ」
カウンターで厳しい顔をしていた雪布留だったが、偶然用意していた様だ。
『X子ちゃん入って来て!』
「Wボードで伝わる訳ねーだろ」
しかしXはおずおずと入室して来た。
「げげっ敵側のくせに貴様何のつもりだ!?」
『落ち着いて下さい、Xの制服が汚れたので着替えが欲しいのです。たとえ敵でも騎士道精神は重要ですぞ』
「そうね良いわ、私の制服を貸してあげる」
ばふっ
雪布留はX子の腕に制服を渡した。
(雪布留、この子がスナコから聞いた雪乃フルエレ女王……本当にわたくしにそっくりです。しかも若い)
じぃー
「あれ、どうしたのX子ちゃん?」




