表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1103/1107

短期転校生、乙女達のアジト


 パーフォーパーフォー

 大型船のブリッジで無駄話をしていた貴城乃(たかぎの)シューネと謎の仮面のコーチNの耳に、けたたましいサイレンの音が聞こえた。


「これは?」

「さぁ」


『大型船の船長に告ぐ、ただちにニナルティナ湾から退去しなさい。さもなくば臨検拿捕する可能性があります!』


 ガシャーンガシャーン!

 気付くと湾岸警備兵のパト魔ー(マー)の背後から、複数の同盟軍魔呂SRVが姿を見せていた。全てここに来るまでにセレネが家臣に命じていた物であった。


「魔呂まで来ているぞ、どうするのだ?」

「仕方ないここは一旦退去しよう……Nよ必ず鳳凰騎(ほうおうき)朱金剛(しゅっこんごう)を取り戻すのだっ」

「その前にここを突破する方が困難だな、だが我に不可能は無いワハハハハ」

「……」


 何故かハイになっている仮面のコーチNはブリッジから飛び降りると、そのまま甲板から碇の鎖を伝い岸壁に滑り降りた。

 しゅるしゅるしゅる


「わははははははははは」


 シュタタタッ

 一陣の風となり、駆け抜けていく妖しい影を湾岸警備兵の一人が目撃する。



『緊急緊急、今変態らしき男が西に向けて逃走中、ただちに付近のパト魔ーは追跡して下さい! ウーーーッ』


 何故か口でも魔法サイレン音を表現する警備兵は頭の横で両手を回転させていた。


「その両手は何だ?」

「ハッ回転魔法灯の表現であります!」

「余計な事をするなっ急ぐぞっ」


 しかし十重二十重(とえはたえ)の囲みを突破し、仮面のコーチNはニナルティナ湾岸都市の大都会に紛れて消えたという。



 ーしばらく後、ユティトレッド魔法学園家庭科準備室

 このあまり使われていない部屋は、短期転校生たちのアジトとして占拠されていた。


「ほら、お菓子いっぱい買って来たの!」


 ガサガサッ

 垂れ下がる白衣の袖の両手から貴濠乃(たかみずの)ヌヌノノは大量のお菓子を放出した。


「わーーっ美味しそうっ! 私これ食べるっ」


 シュババッ

 仮面のK子はお菓子まっしぐらだ。

 ぽりぽりぽり

 彼女は仮面を装着したまま、リスの様にお菓子を食べ始めた。


「何をやっているんですか、私達は最強魔呂で同盟の連中と雪乃フルエレをガツンとやって、我ら神聖連邦帝国の強さをアピールするという密命があったではないですか、遊び惚けている場合ではありませんぞ」


 F子は仮面の下で眉間にシワを寄せて怒り始めた。


「もうF子は堅いんだからー、ここは秘密のアジトだしスナコ共は今日は王宮に行ってるらしいしで、肩の力抜けばいいのよ!」


「ふっスナコか、ヤツは私が倒す!」

「あんただけじゃないわ、私もアイツを倒す……その前にお菓子たべよ!」


 ボスッ

 K子はF子の小さい口にお菓子をねじ込んだ。


「むぐぐ、やめいポリポリ」


 ぼーっ。


「ねーねーどうしてXはアジトでも声出してしゃべらないの? てかアンタ女子の着替え覗こうとしてただろ、男のクセに犯罪行為よ分かっているの??」


「……」


 問い詰められても一言もしゃべらないX子。


「本心で言えば男のお前をアジトに入れるのも嫌だ。お前だけ廊下で見張りでもしておけ」

「ヌヌノノ5歳だからお兄ちゃん好きだよ」

「気を付けな、この変態に気を許しちゃダメだよ」

「……」


 モジッ

 何をいわれてもモジモジして話さないX。


「ちっだんまりかい、キャラに合わないね」


 ガシャーンガシャーン!

 突如、辺りに地震とは全く異なる微妙な振動がひびく。


「これは何だ?」

「多分ここの生徒共の魔呂だろ?」

「もっとお菓子食べるのーX子もお食べ?」


 はむはむ

 ヌヌノノはX子に餌でも与える様にお菓子をあげた。


「ほらよっ炭酸水だ」

「私は紅茶がいいなあ」

「和んでる場合か?」

「いいじゃない、私達いつだってアジトは放課後ティータイ……」


 ビュシューーッ!!

 紅茶を含んだK子の口から、突然大噴出が起こった。


「お、おいどうした?」

「アワワワあ、あれ見て」


 窓に指を差すK。

 ガシャガシャッ


『おーーいK子F子X子聞いてるかー、鳳凰騎かっぱらって来たぞ、お前らの野望も終わりだ!!』

『嘘よウソ、少し預かっているだけよ、ちゃんと返すから……乗り倒した後でウフフ』


 セレネと雪布留の声が大音響で響く。いまだ向こうは気付いて無い様だが、家庭科準備室の窓からは鳳凰騎と朱金剛の、まさに彼女達を探し歩く姿が見えた。

 ガサゴソ



「何やってるX隠れろ!」


 ガササッ

 三人はぼーっとしているX子を押さえて窓から隠れた。


「ここがバレたか?」

「いや違うでしょ」

「そんな事どうでもいいの、魔呂が取られたのっ!」


 ぽりぽりぽり


「隠れながらお菓子を喰うな!」

「音で気付かれるでしょ」


「んな訳あるかい」


 K子はF子に小さく突っ込みを入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ