謎の学校、謎の生徒からの手紙
「ンどらどら?」
パサリ
やたら権力者ばかりのこの部室喫茶店メンバーの中で、気立ての優しいミラが代表してめんどくさそうに手紙を広げた。
『ユティトレッド魔道学園の代表者であるスナコ共に告げる、我が名は東の地アラスカディア村立女学校・魔ローダー部キャプテン謎の仮面の少女Kだ』
「て、手紙に自分で謎の仮面の少女言うとるぞ」
「ヤベー奴そうだな!」
「良いから続けろよっ」
『あの、わらしが代表者言われてる部分はスルーですか?』
『代表者スナコよ、貴様から受けた屈辱は決して忘れん! よって我ら魔ローダー部は貴様と家来共に決闘の魔ローダー交流試合を申し込む!!』
「決闘なのか交流試合なのかどっちなのかイマイチ分かんねーよ」
「恥ずかしがり屋さんじゃないかしら?」
『貴様らが受けて立つ度胸があるならば、今後正式に送られる交流試合の申し込み要請を受諾せよ。くっくっくっ、スナコよ貴様が逃げない事を祈るばかりだ、仮面の少女K』
パサリ
読み終えたミラは手紙を畳んだ。
「ヤベエ、こいつ手紙の中に本当に笑い声書いてやがるぜ」
「ごくり、それは本格的にヤベーヤツだな」
「こ、これはカチコミやにゃいかっ」
猫呼は無理をして必死に毛を逆立て、猫感を演出したという。
しかし突然雪乃フルエレは肩を震わせ始めた。
キュキュッ
『雪布留どうしたの?』
「わ、わなわな、わなわなわな、許せないわっ正式に交流試合の申し込みをするって言ってるのに、スナコちゃんの大切な尻肉に矢を射るなんて……わたし、この挑戦状を受けるわっ!!」
「確かにスナコの尻に矢を撃たれ損だよな」
セレネも同調した。
「でもプシッて良い音がしたよな」
「おうしたした!」
「もう一回聞いてみたいにゃ」
猫呼はスナコの尻肉をじろじろ眺めながら両手を広げた。
『もうまっぴらゴメンでゴザルですよ。しかし東の地からここまで矢って届くんですかねえ?』
「それだっ!」
「つまり敵はもう学園内に潜んでいるのか!?」
「兎幸や兎歩に気付かれ無いで潜んでるって相当な手練れだわ」
「相手は同年代の女学生だから、普段潜むのは簡単かも知れないっスよ」
「そんな危険な奴が潜んでいるなんて……こりゃあ警備を厳重にしないとな」
しかしスナコの尻肉問題とは他に、セレネは考え込んでいた。
『どうしたでゴザルか?』
「いや、この挑戦状は神聖連邦帝国全体の意思なのか、そうだとすれば憂慮すべき事態だなと」
「セレネ私は違うと思うわよ! だって神聖連邦帝国と書かずに東の地と書いてあるもの。国を代表してる意思は無いのよ」
話を聞いていたミラとジーノがスナコをじろりと見た。
「スナコおめー何したんだよ、どんな恨みを買った?」
『相手を知らないのに恨みも何も分からないデス』
「きっとスナコちゃんは悪くないわっ、この子一人で東の地なんて行った事ないもの!」
「雪布留さん忘れたんですか、コイツ東の地に行った事あるじゃないですか」(あたしと)
ペシペシ
セレネがスナコの頭を叩きまくる。
「そうだっけ? でも女王姫乃ソラーレさんとは友好的なはずよっ」
姫乃ソラーレとは雪乃フルエレとそっくりな神聖連邦帝国の女王と勘違いされている姫である。以前スナコに化けている砂緒が侵入して唇を奪い、さらに城から連れ去ろうとしたアブナイ事実はあった。
(ごくり、そんな昔の事を逆恨みされたんでしょうか?)
だがしかし砂緒の憂慮とは別に、彼はもっと他に恨まれている少女の事を忘れていた……そうしてスナコは片手で尻を押さえながら帰宅して行ったという。
―数日後、部室支店
メンバーが段々と矢文の事を忘れかけていた頃……
ガチャッ
「あら皆さんお揃いですわね」
「なんだ貴様、ユーキュリーネを呼んだ覚えはないぞ」
ギロリとセレネが睨む。
「呼ばれた訳ではありません、生徒会長としてお知らせを伝えに来ました」
「何なに、何なの生徒会長さん!」
『凄く気になりますっ』
「あらスナコさん首相就任おめでとう御座いますわ」
生徒会長はうやうやしく頭を下げた。
「いやだからはよ用件言えや!」
「ふぅこれだからセレネさんは。用件とはこの学園に魔ローダー戦の交流試合の申し込みがあったのですわ」
ハッ!
それでようやく皆は思い出した。
『遂に来よったわっ!』
「はいはいはいはいはい受けてたちます!!」
雪布留はユーキュリーネに刺さるくらいに手を上げて叫んだ。




