何が目的だっこのご老体は!?
「い、一体何事じゃっ!?」
『そうですよ、今日こそ何するですかっ』(良い事してたんですよ?)
「スナコちゃんちょっとこっち来なさい」
がしっスタスタスタ
雪布留はスナコの手首を掴むと恐ろしい勢いでご老人から遠ざかって行った。
「アーッ女学生さん……」
ご老人はか弱く腕を伸ばして悲しんだという。
ーネビュラ珈琲店内
「一体どういうつもりですか、道端で立ち往生してるお年寄りを助けただけですよ?」
ズズズ、カチャッ
お互い注文した珈琲を飲みながら睨み合った。
「ズズズ違うのよっ全くの逆よ、スナコちゃんが危なかったのよ、あのご老人の情欲にまみれ切ったいやらしい顔を見た? あれはオンブされた途端にスナコの身体中をまさぐり倒すつもりだったのよっ。けれどご老人を蹴り倒してイッちゃうといけないじゃない? だからスナコちゃんを蹴り飛ばしたのよ」
二人に一瞬の沈黙が。
「ズズズ、それはそれで一興ですなあ。ご老人がうへへへと私の身体をまさぐり倒した瞬間、あらぬ物があってドびっくりするでしょ、それはそれで面白いでは無いですかハハハハハ」
カチャッ、ドンッ!
雪布留は突然テーブルを叩いた。
「甘いわっチクロより甘いわよっご老人の中には、少年専門でまさぐり倒す人もいるのよっ! もしスナコちゃんが女装した少年だとバレた瞬間、興奮度はMAXで大喜びよ!!」
この異世界にもチクロはあったようだが、現代日本では使用禁止である。
「ごきゅり……ほほぅ? はぁはぁ」
「今何故ツバを飲んだの? 何故息が荒いの?」
「別に想像して興奮なぞしておりませんが」
「……貴方想像以上に頭おかしいわ。とにかく妖しいご老人には気を付けてね」
「ハハハご安心をズズズ」
カチャッ
ーそんなこんなで次の日
カランコロンカラン
「むむっこの下駄の音はゲ〇ゲの鬼〇郎か?」
スナコちゃんが一人で街を歩いていると、怪しい下駄の音が鳴り響いた。
「むふーむふーちこふちこふじゃ~~」
はたっと前を見ると、学生服に下駄を履いた長身のご老人が口にパンを咥えて歩いて来た……
「あわわわわわわ、昔のコントに出て来る東大生の様な学生帽を被り瓶底メガネを掛け、さらにバンカラの様な外套を纏いし老人が、パンを咥えているですと? ナニヤツ、怖過ぎるでござるよ。み、見なかった事にして道を避けよう」
ススス
ツツツ
スナコちゃんが道を避けると、学生服の老人も軌道修正して来る。
(ヒッヒィイイイッ拙者怖い物なぞ無いと思っていたが、今死の恐怖を感じているでゴザルよ)
「ちこふちこふ~~」
チラリッ
学生服のご老人は確実にスナコちゃんに間合いを詰めて来る。
(はぁはぁ何故で御座ろう、あのパンを咥えた人物にぶつからなければならない気がして来た)
「ちこふちこふ~はぁはぁ」
(しかしぶつかった瞬間、あのご老人こそ死にそうな気がして来た。あれが有名なぶつかりおじいさんか?)
スナコは覚悟を決め絶対に硬化しない様にして、ご老人に衝撃を与えない万全の態勢で身構えた。
「ちこふちこふ~」
(さぁばっち来い!)
シュバババーーーッ
だがぶつかるっという瞬間であった、どこからともなく雪布留が飛んで来て、綺麗にスナコちゃんにドロップキックを決めた。
どぎゃっ!!
ゴロゴロゴロ
転がるスナコ。が、その衝撃で雪布留の方とご老人がぶつかってしまう。
ぽよ~ん
雪布留のそこそこ育った胸はご老人を優しく跳ね返したという。
「きゃっ!?」
「あうっ何じゃ何じゃっ?」
どさっ
「った~い! どこ見て歩いてるんですかっ」
「それはワシの台詞じゃて! ハッこうしてはおられん、遅刻じゃ~」
もうとっくに放課後の時間である。
「おりゃーーーーーーーーっ!!」
「え、今度は何?」
ズドドドドド
遥か向こうから何者かが走り飛んで来る。
シュバッ
次の瞬間、光の速さでご老人を連れ去って行った。
「何じゃーーーーー?」
ズドドド……
「今のはセレネでした」
パンパンと砂を払いながらスナコちゃんが立ち上がった。
「え、セレネ?? セレネがどうしてご老人をかっさらって行くの?」
「分かりません、多分学生服を着たご老人が好きなのではないでしょうか」
「そんな訳無いじゃない……」




