フルエレ対野人依世、人類史に残る魔呂戦……
「さすがバカ姉、たかが四つん這いになった巨大ロボット如きに大袈裟ぽ~~」
戦慄する兎幸のUFOの横で、兎歩が両手を広げた。
フィンフィン
蛇輪の操縦席内の砂緒と雪乃フルエレ、その他一名もル・ツー千鋼の天の余りの変わり様に唖然としていた。
「ふぅ、相手がどんな形態になろうと中に乗っているのはたかが妹の依世よ、千岐大蛇ビィームで一発で消し飛ばしてやるわっ!」
がしっ
フルエレは操縦桿を握った。
「やーめなさい、たとい依世とも言えど相手は妹ですぞ、生け捕りにしなさい」
砂緒はその手を剥がした。
「何するの? 邪魔しないで頂戴、スナコちゃんと言えど許さないわよ!」
「ダメですフルエレ目が怖いです。せめて金輪で足を撃ちなさいって」
「いやよ!」
「ちょっとフルエレさんあれは同盟の貴重な戦力ですよ、壊してどうすんですか? 魔ローダー操縦に長けてるって言うなら、捕まえてみんしゃい」
「あらメランいたの?」
「いるわ!」
「しかしメランの言う通りです、ぱかっと捕まえて下さい」
等と気楽に会話している時であった、四つん這いのまま動かないで遠吠えだけしていた【ル・ツーけものの姫モード】であったが、突然四つん這いのまま走り出した。
わしゃわしゃわしゃっ
「ひぃいいい気持ちわる!?」
「部長、部長、魔呂の事はほっといて下さいって、猪型を斬って!」
「もうこいつら一万匹越えてるっしょ? 無限か? イノシシ型無限か??」
陸の孤島の大岩に残されたセレネ達もル・ツーの異様な動きに目を見張った。
「セレネ王女ちゃん、手を抜くと本当に死んじゃうよ! おりゃっ」
バシャバシャッ
ウェカ王子が凄まじい剣技で猪型を斬り捨てて行くが、その勢いは増すばかりだ。
「フルエレッ来ましたっ金輪で足を撃って下さい!」
「嫌よっ剣で足を斬る!」
「大丈夫ですかフルエレさ~ん」
わしゃわしゃわしゃっ
四つん這いのル・ツーはグングン近寄って来る。
「さぁ来い!」
グイッ
フルエレは剣を構えた。
びよ~~ん
突然ル・ツーは四つん這いのポーズのまま空に大ジャンプした。
「何ぞ!?」
「動きが変だわっ」
「ちょっとフルエレさん空空!」
「分かってるわっ串刺しよっ」
カシャッ
フルエレは両手で剣を持ち上げる。その光景はル・ツー内の依世達にも当然見えている。
「おい依世、ヤベエぞ串刺しだぜっ!」
「アバッバッわかってる!!」
グインッぐりんぐりん
妙な姿勢で大ジャンプしたル・ツーは空中で身体を捻ると、足先を前にせり出して蛇輪が振り上げた剣を正確に刀身の腹から蹴り飛ばした。
バシャーーックルクルクル
「あっ」
フルエレが振り上げた剣は手から離れ飛んで行った。
グサッ!
またもやセレネ達の近くに突き刺さってしまう。
「あの人達あっしらを狙ってないっスか?」
「器用だよな」
ドシャーーッ
「キャーーーッ!?」
そのままル・ツーはボディプレスの様に蛇輪にのし掛かった。思わず叫び声を上げるフルエレ。
「ひぃいいい重い、重いわっ砂緒、タッチ交代よっ!」
ぴょいっ
雪乃フルエレ女王は、あっさりと砂緒に席を譲った。
「吾輩なにやら蛇輪を操縦するのは久しぶりですなあ」
「取り敢えず上に乗っかってるル・ツーをなんとかして下さい」
メランが叫んだ時であった。
ガブッ
突然砂緒の肩に鈍い衝撃が走る。なんとル・ツーに発生したオオカミの大口が蛇輪の肩に噛みついたのだった。
「オエーッ今度はル・ツーが噛みよったぞっ!」
「だから部長実況は良いですから」
ギャリゴリギャリッ
巨大な赤いオオカミのアゴで蛇輪を嚙み砕いて行く。
「スナコちゃん大丈夫!? タッチ交代して本当に良かったワ」
「他人事ですね? 魔力供給してても痛みは砂緒さんに行くんですねえ」
「安心して下さい全身を硬化したら痛みは消えました。今は気持ち良いくらいです」
ガリゴリガリ
「さすが変態ね」
「感心するわ! でも機体にダメージがあるから何とかしないと」
がしっ
言われて砂緒は蛇輪で噛み続けるル・ツーの胴体を捕まえた。
「わっ依世捕まったぞ」
「こんな奴、百裂蹴りだっっ!! おりゃおりゃおりゃ」
ゲシゲシゲシ
ル・ツーは噛みながら狼の脚で蹴りを入れ始めた。
「見ろ、人類史に残る魔呂の戦いだ」
「そうスか?」
ミラは変な構図にしか見えなかった……
 




