けんか、魔ローダーを見に行く。b
砂緒が何かの準備で館を出た瞬間にイェラがフルエレに接近して話かけた。
「何故いつまでもギクシャクしているのだ? 前はあれ程仲が良かったではないか」
「……私にも分からないのどうしていいか」
すぐに悲しそうな顔になるフルエレを見て話題を換える。
「猫呼が冒険者隊の中から死者が出たり、三毛猫仮面が相当にヤバイ奴だとかで、今メンタルが非常にしんどいらしいのだ、なんとかしてやりたい」
「私には……やっぱりどうしてあげればいいのか分からないし、何か言う権利さえも無いと思うの」
イェラがフルエレの言葉に動きが止まった。
「権利とは何だ……先程砂緒が言っていた言葉、家族というのは私も同じ想いだ。家族に権利も何もあるものか」
「本当に家族なのかな……」
「私は孤児なので本当の親も何も知らずに育った。だからこの館に来て、本当の家族が出来た気がしたのだ。フルエレお前がほわほわした優しい母で、砂緒が良く分からない痛い父、そして猫呼が可愛い妹だ。兎幸は神出鬼没の居候かな、そんな家族だ」
「え?」
雪乃フルエレは十五歳の自分などよりも遥かに年上のイェラの意外な言葉に驚いた。
「……お前より年上なのに娘はずうずうしいか?」
イェラが少しまずい事を言ってしまったと照れ隠しながら言った。
「うふふ、少しだけね」
フルエレは最近では見せなかった明るい笑顔を久しぶりに見せた。
「そ、そうか、やはり図々しいか、はははははははははははは」
イェラも普段見せない様な大声で笑い続けた。
「いいんですか~またまた冒険者ギルド放置しちゃって……まともに運営にタッチした事ありますか!?」
魔輪のサイドカーで猫呼が大声で叫ぶ。
「都合よく兎幸ちゃんが来たから今日はいいの! 二人に任せましょう!」
雪乃フルエレは、イェラの進言に従い猫呼を元気付ける為に、魔輪に乗っけて走っているのだが、猫呼は案外非常に嬉しそうで一安心した。
「どこか目的地があるんですか?」
「う、うん私の魔ローダーが酷い扱い受けてないか覗きに行こうと思って……」




