引き裂かれた姉妹!
ドドーーン! ズドォーーン!!
トドロの森の暗い夜空に魔戦車の魔砲撃の轟音が響き、その度に再びイノシシ型モンスターが雨あられと吹き飛んで行く。
ほにゃほにゃほーほにゃの~
ほにゃほにゃほ~にゃよ~
ほにゃっほにゃにゃほにゃにゃ~く
ほにゃほにゃほにゃにゃ~ろ
いつしかその轟音は荘厳なBGMの様に聞こえて来た。ホントホント。
「アーッ!」
蛇輪に握られた野人・依世は逃れようと必死に体を動かす。
「な、何ですって……この薄汚れた野人風情が、この栄光の同盟女王の私の妹の依世ですって!?」
雪布留は掌を口に当てながら、雷の背景を後ろに口走った。
「これこれ言葉を選びなさい」
「本気と書いてマジよ」
「私は貴方の性格を良く知ってますから聞き流せますが、知らない人が聞いたら超誤解されますよ」
「でへっ本気よ!」
シィーン
轟音の中、砂緒とフルエレの間に沈黙が流れた。
「で、この依世をどうされますか?」
「アーッ」
「そうねこんな依世が私の妹だと知れたら、私のコケンに関わるわね~どこに隠そうかしら?」
「これこれ依世をどうするかとは、どうやって元に戻すかの話ですよ」
シィーン
「貴方それ本気? さっきから聞いてたら砂緒って依世の味方みたいね。依世の事が好きなの?」
「何故そうなるのですかっ私ほど貴方に仕えている人間はいませんぞっ」
「ご、ゴメン怒った?」
(拙者が依世の事が好きですと? 絶対にその様な事はありません!)
「怒っておりません」
「アーッ」
「ではとりあえず皆に見えない様に依世を保護しましょう」
「そ、そうねえ」
「嫌そうに」
その一瞬の隙だったので御座います……
「ラ・マッロカンプ忍法お日様の術っっ!!」
ビガーーーーーーッ!!
突如フルエレと砂緒の前にまばゆい光が現れたので御座います。
「きゃーっ何何?」
「フルエレ、大丈夫ですかっくっ見えん」
いかな不死身の砂緒とて、突然のまばゆい光に一瞬迷いが生じた。
「アーッ?」
「依世ちゃん僕が助けるよっさっ早くっおりゃーーーっ!!」
ドゲシッ
突如現れた不審者は、身を隠していたラ・マッロカンプのウェカ王子であった。彼は野人が姿を消した依世ではないかと推測し、こうして助ける機会を伺っていたのであった。
カクンッ
ウェカ王子の渾身の一撃により、うろたえる雪布留の元、蛇輪の掌の力が一瞬緩んだ。
「さっ依世ちゃん二人でエスケープだっ!」
ウェカ王子はさっと笑顔で依世に手を伸ばす。
「アーッ!」(あっち行けっシッシッ)
どバシッ!
なんと依世は記憶を失いながらも本能でウェカ王子を拒絶した。
「依世ちゃん?」
「アオーーーンッ」(依世無事か?)
シュタタッ
代わりに依世の使い魔フェンリルのフェレットが飛んで来る。
「アーッスナコ、助ける!」
しかし依世はまだスナコが敵だと気付かずに助けようとしてしまう。
「ほっとけって!」
「スナコッ」
「依世無事かっ?」
「スナコッ」
「行くぜーーっ」
シュタタッ
依世は砂緒に手を伸ばしながら離れて行く。
『ちょっと雪布留さんどうしたのよっ大丈夫?』
ガシャンガシャンッ
そこへ油断したメランのル・ツー千鋼の天がハッチを開けながら接近して来た。
「メラン来るで無いでゴザルッ」
『え、どうしたって?』
『メラン、今ちょっと目が見えにくいのよっ』
『まっ大変じゃないどうしたの?』
その時、野人・依世の目が光った。
「あの巨人神、中乗れる、アレ、奪う、オレ勝つ!」
「分かったぜ依世っあっちの紺色の奴に乗るか、アオーーン」
シュターーーンッとフェレットは蛇輪の腕の上から飛び移り、開いたままのル・ツーの操縦席に入り込んで来た。
『んぎゃーっ犬が犬がキターーーッ』
「お前、降りろっ」
「ヒーッ野人さま、お許しをっ!」
「邪魔だっ」
どゲシッ
フェンリルが後ろ脚でメランを蹴り落とした。
「やーーーーん死ぬる~~~」
メランは飛行魔法が使えなかった……
「いけないフルエレッ!」
『分かったっ』
視界が回復した二人が一瞬で察知すると蛇輪の腕を伸ばした。
ぱっし!
危うく地上に激突する寸前で、メランは蛇輪にキャッチされる。
「メラン大丈夫?」
「はいはいなんとか、ありがとうね~」
「しかし、依世の奴なんて事を……」
ウィンウィンウィン
今、砂緒とフルエレの目の前で依世の操縦するル・ツーが立ち上がった。




