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出現!! 巨人神さま……


「スナコちゃんっ君はその野人の味方なのかい? まさか……野人に手籠めにされて言いなりにされているのかい?」

「んな訳あるかーっ」


 ミラが小さな声で突っ込んだが、誰も気にしなかった。


『違うわっ私野人の正体を見てしまったの』

「野人の正体? 何なんだいっ」

「スナコ正体って何だよ?」


 ルンブレッタだけでは無く、思わずセレネも叫んだ。


『そ、それは……』


「アーーッ」<お前達そんな無駄話してる場合じゃないぞ>


 野人の叫びをフェレットが同時通訳する。

 ズドドド……

 スナコとルンブレッタが話す間にも、おびただしい数のイノシシ型モンスター達がスナコ救助隊の周囲に迫っていた。



「洒落ならん数じゃねーか」

「お、おい魔法瓶(まほうびん)だっもっと魔法瓶をくれっ!」

「ホレ」

「僕も」


 ぽいぽい

 ドドーーーン ズーーン!

 ミラやジーノだけでは無く、ルンブレッタも加わり魔法瓶を投げまくる。その間は花火の様に猪型が吹っ飛んで行くのだが、爆発が終わると再び異様な数のイノシシ型が怒涛の様に迫って来る。


「ひぃいいキリ無えですぜっ」

「魔法瓶だっもっと渡せ」

「もう無いってば」

「魔銃を撃てっ」


 ドパパッパンッパーン!


「えーいボクらもがんばるピョンよ!」

「バカ姉だけには任せられ無いぽ」


 兎幸(うさこ)兎歩(うさぽ)も再び巨大マジックハンドで猪型を吹き飛ばして行くが、全く焼石に水である。

 ズドドド

 パーンパーン! カチッカチッ

 トリガーを引いても弾が出ない。


 次第に陸の孤島の様な大岩の中央に追い詰められたスナコ救助隊達は、すぐに弾薬不足に見舞われた。その大岩に向けて、目を真っ赤に輝かせた猪型モンスター達が辺りを埋め尽くす様に襲い掛かって来る。

 ズモモモモ……


「弾だっ魔銃の弾をくれっ」

「もう魔銃のタマもねーよ」

「アイスベルクッ!」


 シャキッ!

 一人セレネだけが必死に氷魔法で怪物達を攻撃して行く。



「兎幸ちゃん兎歩ちゃん僕らを救助してくれっ!」

「ごめんムリ。このUFOは砂緒(すなお)とフルエレしか載せない方針なんだっ!」

「我のUFOも星界の女王専用だぽ」

「心狭過ぎるだろオイ」

「方針とか言ってる場合かコラーッ!?」


 ミラとジーノはUFOに向けて怒鳴ったが、二人の意志は固い様だ。


『も、もう止めて上げてっ』

(マズイ、ルンが居るから思い切った行動が出来ない……硬化して依世(いよ)をぶちのめすか?)


 スナコは依世とセレネの間で揺れ動いていた。だが不思議と猪型はスナコには攻撃を加えない。


「スナコッ逃げれないのか? 早く逃げろっ」


 そんな事も知らずにセレネは魔法の合間にスナコに叫んだ。


「アーッ」<攻撃色の真っ赤な眼になった猪型の群れはもはや誰にも止められぬ。もう逃げ道は無いぞっ!>


『そんな事言ってる場合!? もう許してあげてっ』

「アーッ」<許す訳無いだろっククク>

「スナコ、お前無事なら逃げろって!」


 事情も知らずセレネはまた叫んだ。もうスナコ一人にはどうする事も出来ないカオス状態であった。

 パリッ

 無意識にスナコは指先に雷を発現させる。


蛇輪(へびりん)を通さぬ単身でどれ程の威力があるか分からぬが、久々に雷で攻撃してみるか? しかしそうすれば依世や皆にも当たるかも知れない、それじゃ本末転倒でござるよ)


 砂緒が内心逡巡している時であった。



 キラッバキャッ! ドギャッ!!

 何かが光った途端に突然猪型達が夜空に吹っ飛び始めた。

 ドバッビシャッ!


「何だっ何が起こってる?」

「アーッ?」<どうした猪型の戦士達よ?>


『野人よそこまでよっ私が相手をするわっ!』


 いつの間にか雪布留(ゆきふる)の乗る蛇輪が到着し、まるでゴルフのスイングの様に剣先で猪型をすくっては斬り、すくっては投げ飛ばしていたのであった。


「ヤッター雪布留さんだっ!」

「これで百人力っスよ」

「雪布留さんが来てしまったか、しかし今はその力に頼るしか無いようだ」

「正直僕はホッとしたよ、スナコちゃん今の内に!」


 ルンブレッタは少し離れるスナコに手を伸ばした。しかし彼女は複雑な顔をして野人を見守って居る。


「アーッ」<何故巨人神が人間の味方をする? 巨人神はトドロの森の守り神では無いのか?>

『あれは巨人様じゃ無い【魔ローダー】という兵器よ、逃げなきゃっ!』


 スナコは野人・依世の腕を引いた。



挿絵(By みてみん)

魔ローダー・蛇輪(へびりん)

挿絵(By みてみん)

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