対面、野人の正体……
ズドドドドォーーーーーーーーーン!!
全力硬化したスナコは白い大犬を突き飛ばし、代わりにスナコ自身が大空に吹き飛ばされた。
「アーーーーーーーーーーーーッッ!?」
「アオーーーーン」
しかし逆に大犬に乗った野人は寸前で爆発の火柱を避ける事が出来た。
シュタタッ
「隊長ーーっスナコが被弾しましたーーっ!」
「な、何ですって!? 許せないわ野人の奴めっ」
「雪布留さんアンタのせいなんやで?」
歯を食いしばる雪布留とジーノの横で、一人冷静なミラであった。
「ええい、仕方が無いわ! 全ての魔法瓶を一斉発破よっ」
「分かりやした!」
「やめとけって」
カチカチカチッ
発破ハイ(high)のゾーンに突入したジーノが、無情にも連続してレバースイッチを入れて行った。
チュドドドドーーーーン!!
もはや足の踏み場も無い程の爆発が連続で起こり、スナコ達が肉料理を食べていた場所は跡形も無く吹き飛んで行く。
「アーーーッ」
しかし運悪くその爆破の最中にズタボロのスナコが落下して来た。
ヒューーーーッ
「あ、おいスナコが落ちて来るぞ!?」
「気を失ってるんじゃね?」
カチッ
ドォーーン
「言いながらスイッチ入れるんじゃねーよ!」
「いやああスナコさん!?」
「ちょっともう作戦は中止ですわ!」
セリカとユリィーナが憤るが、もはや時間は後戻り出来なかった。と、その時であった。
「アオーーーーンッ!」
シュタタッシュタタッ
まるで炎を操る神が如く、次々立ち上がる爆発の柱の間を全て寸前で掻い潜り、白い大犬が大ジャンプすると、地面に叩き付けられる寸前のスナコを犬上に乗る野人が小脇にワシッと捕まえた。
「アババババババ!!」
「ちょっスナコちゃんが野人に捕まったにゃ!?」
猫呼が思わず叫び声を上げる。
「兎幸、兎歩何してるの!? 犬からスナコちゃんを取り返して!!」
「ていうかさっきからあの二人何してんだよ?」
ミラがイライラするのも道理、実は兎幸と兎歩の二人はずっとケンカをしていた。
「おいボクが野人を捕まえるんだっ!」
「間抜けな姉さんには無理だから黙って見てるぽっ!」
ゲシゲシッ!
「おいおい今はそれ処じゃねーよ、スナコが野人にさらわれたから取り返せって!」
ミラが二人に怒鳴るが。
「嫌だっ!」
「何でスナコなんか助けなきゃいけないんだよっ! 姉さんがやれぽ!」
「お前がやれよバカ妹っ!」
ゲシゲシッ!
さっきと真逆のケンカになり、結局二人は戦力外となった。
シュタタッシュタタッ!!
その間にも大犬は野人と気絶したままのスナコを乗せ、遥か遠くに逃げおおせてしまっていた……
「な、何て事なの!? 誰の責任でスナコちゃんがこんな事に……くっ」
雪布留は涙を流した。
「アンタのせいにゃんやで?」
猫呼達は煙がプスプスと立ち昇り、爆発の大穴がボコボコ空く部室館の裏庭を見て呆然とした。
「おー雪布留さん、野人捕獲作戦はどうなった?」
そこへ遅れてセレネがやって来た。
「部長すんません、スナコがさらわれました」
「何ーーーっ!?」
セレネはビヨーンと飛び上がる程驚いたという。
ートドロの森の一角
此処トドロの森には以前部で訪れた地下ダンジョンだけでは無く、あちこちに泉や沼などの隠れれる場所が点在していた。
ピチョーンピチョーン
スナコの頬に冷たい雫の感触が伝わる。
「ん、んん……」
薄っすらと目を開いたスナコはハッとした。
キュキュッ
『ん、んん……』
彼女は慌ててWボードに書き直す。
「ふっ気絶から目覚める時までボードに書くとは敵ながら見上げたヤツだぜ」
「アウッアウッ」
聞きなれない二人分の声がして、スナコはようやく頭がはっきりして来た。
『こ、此処はドコ? 貴方達はダレ?』(車、売る?)
スナコは首を振りながら、ようやく見え始めた視界の先に大犬と野人の姿が……
「へへもうボードは止めて直で話しな? ここにゃ他に誰も居ないし知らない仲じゃねーだろ?」
「アババッ」
スナコ、いや砂緒の中に一つの記憶が蘇る。
「貴様は依世の使い魔のフェンリルのフェレット?」
「へへっ良く覚えてたじゃねーか」
スナコに衝撃が走った。
「で、ではこの野人の正体は?」
パカリッ
野人が自ら無造作に謎の仮面を外すと、中から薄汚れた依世の笑顔が現れた。
「い、依世、貴様今まで何処にいた?」




