けんか、魔ローダーを見に行く。
「今頃砂緒はあの姫と何してるんだろうなあ……俺はあの女の性格は嫌いなんだが、あの外見でもし迫られたら断る事は無いな」
「……最低な事言っているぞお前。まあでも……俺も同じだがな!」
義勇軍の男達は顔を見合わせて笑った。
以前は義勇軍の連中から邪魔者だとか馬鹿姫と呼ばれていた七華だが、今はキス姫とかエロ姫等と不名誉な名前で呼ばれていた。
「後ろ! 後ろ!」
笑っていた男の片方が急に笑顔が固まり合図を送る。男が振り返ると修理を終えた魔輪の動力を切り、押して歩いていた雪乃フルエレが二人の真後ろに居た。
「楽しそうなお話ですね。あ、どうぞ続けて下さい」
フルエレはすたすたと冒険者ギルドの駐輪場に向かった。
「お城で嫌な会議がありましたよ、つまらない話で閉口しました……」
「あれ、砂緒もう居たんだ?」
雪乃フルエレが意外な物を見る様にぼそっと言った。
砂緒は会議が終わると大急ぎで馬を飛ばし、冒険者ギルドに戻り早業でウエイター姿に着替え、もう色々な作業に従事していた。
最近はこの様なお城の勤めと冒険者ギルドの二重生活が続いていた。
「何を言っているのですか、いつもこの通りじゃないですか」
せっせと真面目に掃除や窓ふき、紙ナプキンを揃えたりコースターを並べたりしている。
「もう館からお城、そしてまた館と舞い戻ってくるの大変でしょう。砂緒はもうお城に住んじゃえば良いのだわ」
また始まったという感じでイェラが目を細めた。
「お姫様といつまでも幸せに暮らしました……みたいな感じで良いと思うの」
その言葉に少しカチンと来たのか砂緒が近づく。
「私は温和なタイプなのでいちいち怒らないですが、普通の男性なら激怒していると思います。私は最大限フルエレの事を配慮していますよ、いつまでねちねち言い続けるのですか、私の心は常にここにあります。ここは私の家で皆は家族なのです。出て行けと言うのですか」
いつもの率直な物言いでフルエレは言葉に詰まる。
「そうだフルエレ、こんど大きな戦争をやらかすとかで、フルエレに魔ローダーに乗って欲しいそうです」
「嫌に決まっているでしょ」
「そうだと思って予め断っておきました」
「ありがとう」
ここで砂緒は七華の真似をして、すっとフルエレの手を握ろうとしてみた。
「止めて下さい。何のつもりですか?」
フルエレは手をすっと引くと、砂緒から離れてしまった。




