砂緒リュフミュランの騎士になる、侵攻計画b
「ユティトレッド王は今回の討伐戦を、セブンリーフで長らく続く戦乱の終わりの始まりにしたいと書かれておられる。セブンリーフ大陸北方列国の中で我が国は、田舎者だの無名だの雑魚だの言われておった……それが遂に歴史のキャスティングボードを握る立場に立ったのじゃ! それもこれもそなたの隣に座っておる砂緒殿と雪乃フルエレ殿のお陰なのじゃ」
王は七華に聞こえる様な声で、祝賀の場で小馬鹿にしていた二人すら持ち上げてでも理解を求めた。
七華に決定権は無いとは言え、今回の決定が多くの者の賛同を得て絶対に実行をしたい、王の大決断であると伺わせた。
「砂緒殿、そなたはどう思うかな?」
砂緒は全く物怖じせずに語り出した。
「城の中街の中の世論を見聞きした内では、被害の大きさからニナルティナを許すな! という意見が多数ありました。その上で各国の援軍があるのであれば渡りに船、どうして断る必要があるのでしょうか。この機に国の危険を除去する事が国民の平和の為と言えましょう」
砂緒は世に聞くお遊戯会のつもりでノリノリで語った。
「おおなんと心強いお言葉か。して魔ローダーの少女のご助力は得られそうかな?」
「それは無理です。今彼女と私は非常に険悪な雰囲気があります」
会場内から失笑が漏れる。同時に会議室の白い布が掛けられた長いテーブルの下で、顔は前を向いたまま密かに隠れる様に、七華が白い手袋の長く細い指を絡めて来た。
何を考えているのだこの女は……と思ったが砂緒も指を絡み返した。
「それにそもそも彼女は戦が嫌いです。協力を得るのは容易な事では無いでしょうから諦めましょう。各国の援軍があれば十分でしょうし」
砂緒なりの雪乃フルエレの配慮だったが、今は王の真横でその娘と密かに手を握り合っていた。最近はこういう遊びにも慣れてしまって来ていた。
「しかし……その前にする事がある」
今回はいつになく温和だった王が、突然いつもの冷血な顔に戻る。
「大臣立て。そなたは先の戦いで無謀な作戦を立案し、国を亡ぼす寸前まで追い込んだ張本人である。さらに複数の内通者であるとの密告がある。引っ立てよ」
魔ローダーが発掘される場所に軍を派遣しようと立案した大臣が、いきなり衛兵に引き立てられる。
「王よ! 何かの間違いで御座います! 愚策の立案についてはどの様な罪も免れません、しかし内通は何かの間違いで御座います! どうぞお調べ直しを!!」
悲痛な顔で無実を訴えるが王は無視して衛兵に指示し、元大臣はどこかへと引き摺り連れていかれた。
「……怖いですわ……」
七華は恐怖で引きつった顔で砂緒を見つめて来て、テーブルの下では手を握る力をぎゅっと強めた。砂緒は、しかしご安心を私が守ります……などとスピナの様な事を言うのはよしておいた。
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