砂緒リュフミュランの騎士になる、侵攻計画
「何ですって、リュフミュラン全軍でニナルティナに攻め入るですって!? それはお父様本気で仰っておられるのですか? あの城の惨状をお忘れになられたのですか? ……こ、今回は例え叱られたとしても、しっかり意見を申し上げたいです」
激しい戦いからしばらくが経ちまだまだ修理途上の王城の大広間では、リュフミュラン王と七華王女それに大臣や騎士団らが居並び重要な会議が開かれていた。
なんだか良く分からない煌びやかな騎士っぽい衣装に身を包んだ砂緒までも七華の横に居た。
以前は頭ごなしに七華の意見をねじ伏せていた頑迷な王は何事も発せず、ずっと戦争に反対する七華の主張を静かに聞き続けている。
七華が強く反対した様に会議では冒頭から大臣によって、リュフミュラン全軍によるニナルティナ侵攻が遡上に上げられていた。
「もうそろそろ話しても良いか七華よ? お前の意見は全くもって正しい。前回の魔ローダー発掘などとされた場所への進軍は如何にも愚策であった。儂も深く反省しておる」
「そ、は、はい……」
また頭ごなしに怒鳴り付けられると思っていた七華は王の率直な物言いに驚いた。
「七華よ、まあ聞きなさい。今回のこの方針、決して前回の様に浮ついた考えでの物では無いぞ。今回のこの方針を大臣らと内々に決定したのには理由がある。あれを見せよ」
家臣の一人が何かの書類を持って開き文面を掲げる。
「これが……何ですの?」
七華が怪訝な顔をする。
「これが何か判るか? これは代々賢王輩出国として名高いユティトレッド魔導王国国王殿からの親書じゃ。この様な物が届くのは我が国でも異例な事態なのだ」
「軍事強国としてのニナルティナと並んで、知性面でセブンリーフ大陸の盟主の座を争って来たユティトレッドですか……」
砂緒はよく分からない言葉が並んで眠たい気分だったが、良く耐えて聞き続けた。
「そうだ……その親書の中身を要約すると、セブンリーフで長らく争乱が続いた要因の一つはニナルティナの暴政、盟主気取りで他国への傲慢な態度、安易な侵攻の繰り返しがあると書いておられる。そして、今回の我が国リュフミュランへの大規模侵攻とその大敗北によって機は熟した、今こそ各国が連携してニナルティナを討つべしと書かれておられる」
「そ、そんな……」
「それだけでは無いぞ、今回の討伐軍にはユッマランド等の我らの南に位置する複数の国も軍隊を出すと書いておられる。さらに! ここからが一番重要なのじゃが、戦後には現ニナルティナ王国を東西に分割、東側を我が国の新領土に、西側を新ニナルティナ国としてユティトレッドの保護国とする……とある」
「おお! なんともう戦後の事までも……」
「鳶にチーズをさらわれる事にはならないのか?」
会議場がざわつき、口々に話す家臣たち。手を掲げ止め、王がさらに話を続ける。




