七華と和解? 歓声の中、勝利と憂鬱b
『全く七華と来たら……こんな下賤な者共を付け上がらせてはならぬ。しかし今回は正規軍にほぼ損害が出なくて良かったわい。損害が出たのは市民と義勇軍のみ。あんな奴らはそもそも数に入れる必要が無いやつらじゃからのう。つまり損害ゼロでニナルティナ軍を壊滅に追い込めた訳じゃ。しかも魔ローダーと硬くなる化け物、最強の手駒が手に入ったわいははは』
『全くその通りで御座います。王はなんとも強運の持ち主で御座いますなふふふ』
砂緒と七華が並んで賞賛を受ける中、魔法力による音声拡張を外し、王と重臣が口元を隠し所謂オフレコで雑談をしている。
本来には誰にも聞かれず空中に消えていく言葉だが、魔ローダーのコクピットでは高い聴音力で、操縦桿前のミニモニターから音声が流れ続けていた。
『全く今回の戦は痛快で御座いましたな。敵を我が城に誘い込み袋の鼠にして全滅、歴史に残る大勝利で御座いましょう』
『ふふふまさに災い転じて福となす、いや、災いすら無いに等しいわい……』
「やめて……何を言っているの? やめて……っるさい……もうやめろっ!!!」
バキッザシュッ!!!
傷ついたイェラや惨殺された敵兵の姿が脳裏に浮かび、瞬間的に突然激怒したフルエレは本能的に魔ローダーを動かし、王の立つ大バルコニーの上の壁に巨大な手刀を突き刺した。
気が付くと王と重臣は腰を抜かし倒れこみ、城前の人々はシーンとなっていた。
「何をやっている雪乃フルエレ……」
イェラが呆れて眺める。
「こ、こら! 儂にこの様な無礼を働いて、ただで済むと……」
激怒した王が何やら弓でも撃てと兵達に指示しようとする直前、七華が走り寄り王を制止した。
「フルエレ! 雪乃フルエレ!! 我が父王の無礼、お許し下さい。そしてわたしくも今回の様に多くの名も無き者達の力を軽視していた事を思い知らされました。以前フルエレが仰って下さった様に、私も父からも義勇軍や冒険者ギルド隊のみなさんや市民の皆様に、深くお礼をする事をお約束しますわ!」
邪心の無い笑顔でフルエレを見上げる七華王女。
フルエレも先程の怒りを忘れて笑顔で七華を見返した。フルエレはようやく七華と通じ合えた様な気がして本当に嬉しくなった。
「砂緒さま、フルエレが笑って下さいました!」
直後、七華は近くにいた砂緒に再び強く抱き着いて胸を押し付けた。それを見てフルエレは途端に顔が曇る。バシュッとハッチを閉じてしまった。
「何よ……何よ……これじゃあ痛い私と素晴らしい王女みたいじゃないの! 何でよ……」
フルエレは再び操縦席で三角座りになると、ポロポロと粒の涙を落とし続けた。




