勝利! 有未レナード脱出…
コツン!
「?」
雪乃フルエレが魔ローダーの操縦席で途方に暮れていると、小石の様な物が当たる音がして、敏感な探知機が危険物を警告する。
モニターにアップで映し出されたのは、砂緒が二発目の小石を投げようとしている所だった。
「あ、砂緒来てくれたんだ! はわわ止めて止めて傷が付いちゃう!」
フルエレは慌てて立膝を着くと掌を差し出し、砂緒を自分の操縦席に案内した。開けと願えばバシャッとハッチは開いた。
「来てくれたんだ……凄く不安だった」
「何をしているのですか? もう殆どの敵が狩られていますよ。最強の武器を手に入れて最初にする事が何もしない事とはどういう了見ですか。今からでも走って行って、踏むのが嫌でしたら石を投げるなりデコピンで5人くらい吹き飛ばすなりして加勢しましょう!」
「何でそんな酷い事ばかり言うの!? 今はただ一緒に居て欲しい……」
「酷い事をされた人々の為に皆さん戦っているのです。フルエレは急に神か何かにでもなったおつもりですか? じっとしているならばここで居てて下さい、私はイェラが気にかかるので探してきます」
「最近急にイェラさんの事ばかり言っててどうしたの?」
「急では無いです。それに彼女はどんな酷い目に遭っても、やたら苦情ばかり言わず黙々と戦っています」
砂緒は言った直後に今の言い方はまずかったと後悔した。
「あ、そう行ってらっしゃい」
「はい、ではお言葉通り命令に従います」
後悔の最中に自動的に売り言葉に買い言葉になっていた。砂緒が無言で出て行った後にフルエレはハッチを閉じると座席で三角座りをして膝に顔を埋めた。
(今は慰めて欲しかったのに……)
有未レナードと部下の眼鏡は城壁内の東面で、残存している兵や部隊が居ないか探し廻った後、西面での惨事を目撃し仕方なく東面に戻っていた。
今は一番最初に城内にトンネルで殺到した時に司令部として接収した館に戻って警備兵達から隠れていた。
「仕方がねえな眼鏡、お前は軍に関係あるもんは全部外して、一般人の振りしてなんとか逃げろ。ガラでは無いがまあ俺は西面の方へ一人で斬り込んでくるわ。俺という天才軍師が居たレジェンドをしっかり子孫に伝えてくれよな!」
有未は親指を立てるとウインクした。
「嫌です! 今から行っても無駄死にです止めて下さい。それに私だって捕まって酷い目に遭うかもしれません! もうここで一緒に死んでください。……私司令官の事がずっと……だから最後にぎゅっとして下さい」
「…………………………お?」
眼鏡の子分程度にしか思っていなかった部下の突然の告白に戸惑う。
「お前…………もしかして眼鏡を外したらめちゃめちゃ可愛いとかそういうパターンかよ? そうだなァ、それもいいかなあ~よし、どうせ死ぬなら死ぬ前に二人でめっちゃめちゃ愛し合おうぜっ!」
「え? ええ? そ、そこまでは言ってないですけど!?」