メラン魔戦車孤軍奮闘、 住民の恨み……c
「どうしましょうか!? このままでは袋のネズミになります」
剣を取って戦うニナルティナ軍の戦士たち。
まさに外形的な立場は攻められる城を守る城兵の様に見えたが、実際には敵城の中言葉通り袋小路に追い詰められていた。
「もう降伏……しかないだろうな」
そんな言葉が出て来た時だった、ニナルティナ兵達が身を隠す建物の窓から鍋が投げ付けられた。
ガンッと鎧に当たって跳ね返る鍋。思わず上を見ると、恐ろしい形相で睨み付ける城壁内の家屋の住人の顔があった。
「死ねえ! ニナルティナ兵ども!!」
「殺された家族の仇だっ!」
その言葉を切っ掛けに棍棒や包丁をもった住人達が一斉に敗残兵に襲い掛かった。それは見るのも無残な凄惨な現場となっていった。
「ああ、ああ、なんて事、もう止めて! 止めてお願い!!」
高い魔ローダーのコクピットから眺めていたフルエレは、モニター画面に映る突然の凄惨な現場に成すすべ無く顔を両手で覆いながら泣き続けた。
「5両目っ!! 残り二つ!! 絶対に逃がさないわよ~~~うおらあああああああああ!!! もう私は誰にも媚びないっ! 戦士にも格闘家にもっ! 気に入られる為に義理で回復魔法はかけないっ! おほほほほほほ!!」
魔導士の少女が乗る魔戦車が、爆発する敵魔戦車の爆炎をすり抜けながら新たな敵を探す。
「ちょっと君、エース級の才能じゃないんですか!? でもハンドル握ったら人格変わるとか言うレベルじゃ無いですね……」
魔法剣士の少年が冷や汗をかきながら笑う。
「ま、魔導士さんす、素敵だ……」
「え?」
回復職の少年は操縦しながらも、魔導士の少女の勇姿を頬を赤らめながらちらちら見ていた。城の外側の戦いも中の戦い双方ともに、ニナルティナ軍の壊滅は決定的となっていた。
雪乃フルエレの乗る巨大な魔ローダーは搭乗時以降、さして戦局に寄与する事なく、ずっと突っ立って戦いを眺め続けた。