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いざ、歓迎パーティーへ!③



「セリンセさんっ」

「ふぁい?」


 ノアと二人、お腹が空いたので食事をしていると突然後ろから声をかけられた。

 振り返るとそこには、男装着に近いジャケットパンツを着ているエルザ様の姿があった。


「ごふっ……」


 思わずその麗しいお姿に、口に含んでいた食べ物を吹き出しそうになる。すかさずノアにドリンクを手渡され、私はそれをゴクンと飲み込んだ。

 昨日の自信のなさそうなお姿から打って変わって、背筋は伸び、立ち姿は美しく凛としている。身長もピピより高く、何処の国の王子様でしかない。


「よ、よくお似合いです。突然のこの変貌には皆様驚かれたでしょう?」

「皆さん、私が誰かわかっていない様子で……」


 そりゃあそうだろう。昨日のご令嬢とはまるで別人だし、中性的なそのお姿は性別問わず確実に目を奪われるし、なんなら彼女に恋している人続出しているのでは…?

 案の定、ノアに向けられた視線とは別に視線を集中させていた。

 これもある意味天然の魅了の力だわ……というか、私の周りの顔面偏差値今どんな感じ…?

 今の状況ってきっとあれね。顔面偏差値の高いメンバーの中に一人だけ普通の子がいて、周りに『どうしてあんな子が?』って疎まれる状況ね……あぁ、私の顔ももうちょっと感情のわかりやすい顔だったらな……と思う。


「学園長と話をして、男性用の制服の許可もいただきました。これもセリンセさん達が助けてくださったおかげです」

「いえ…、その勇気はエルザ様のものです。私が手伝わずとも、そのままのエルザ様を見てくれる方はすぐに見つかりそうですね」


 こんなに魅力的なんだもの。もうルナシーに感染することもないだろう。

 元々彼女は打たれ弱くは無さそうだけど、そういう人でもルナシーに感染してしまうの……?負の感情が強くなると、誰にでも感染する可能性はあるってことなのかな。


「……あの、セリンセさん?」

「はい」

「よ、よければ私と、お友達になっていただけませんか?」

「わ、私とですか…っ?」


 素が出てしまい、人差し指を自分に差して確認する。まさかの申し出に驚いて目をパチクリとさせてしまう。


「実は、昨日のような格好で学園生活を送っていましたので、交友関係も薄く……本音で話せる友人がいないのです。でも昨日、セリンセさんに私のありのままを認めてもらえて、この方とお友達になれたらなと、初めて思ったのです」


 私自身空回ってばかりで、推しがいなければ大惨事になっていたことも多い。昨日だってそもそもピピノアが戦ってくれなければ、豹変化した彼女を元に戻すことはできなかった。

 それでもこんな風に言ってもらえるのは、私の存在も必要だと言ってもらえてるみたいで、嬉しい……


「その、わ、私でよければ是非……」


 こうしてお友達申請されることは初めてなので慣れておらず、あからさまに動揺してしまっているが、エルザ様はパアッと顔が明るくなると私の両手をぎゅっと握った。


「ありがとうございますっ!……実は今日も、スレンダーなドレス自体は好きなので、パーティーではドレスを着ようと思ったのですが、今日はセリンセさんとダンスを踊りたくてこちらを選んだのです」

「え…っ!」


 今なんと……?

 少し頬を赤らめて言うエルザ様は、美しさの中に愛らしさが垣間見える。


「私と、ですか……?」

「はい。セリンセさんさえ良ければ、私と踊ってもらえないでしょうか?」


 エルザ様に誘ってもらえてすごく嬉しい。……でも、食事をした後にノアのことを誘おうと思っていた。何しろ私はダンスが下手なのだ。今はアレクお兄様やノアの特訓のおかげでそれなりに踊れるようにはなったが、もしエルザ様の大切なお足元を踏んづけたりでもしたらと思うと恐ろしい。

 私はチラッとノアのほうを見た。


「いいんじゃないですか?俺は端から見てるので」


 そこにはにっこりと笑顔を貼りつけたようなノアがいて、静かに怒っている。

 な、なぜかしら?間違いなく笑っているけど怒っている顔だわ……


「セリンセちゃーんっ」

「うわっ」


 突然何者かに抱きつかれそうになったところで、即刻ノアが間に入り彼の行動を止めてくれる。


「先輩、死にたいですか……?」

「苦しいし、ノアくん目が本気…っ!」


 肘で首を絞められ嘆いているのはヒューゴ先輩だ。


「ノア、離してあげて」


 そう言うと、スッと仕方なさげに腕を離すノア。ヒューゴ先輩は「あいたたた……容赦ないな」と言いながら首を抑えている。

 こうして大袈裟に言っているのはきっと建前で、ヒューゴ先輩はノアを避けようと思えば避けられたはずだ。オスカルの護衛をしてるなら尚更……


「あなた、急に女性に抱きつくのは非常識ですし、次そんなことをしたら変態の罪で訴えますっ!」


 一部始終を見ていたエルザ様もすごい剣幕で怒っているのだが、美しさは維持されていて意味がわからない。

 どうして顔が良い人って何をしても崩れないのか……きっと変顔しても美人ね。

 あと、変態の罪ってネーミングなに?エルザ様、実は天然さん?


「やだなあ、ノアくんが絶対に止めると思ったから僕は……って…………」

「な、なんですか……?」

「君は、女か?」

「……っ、そうですが、何か…?」


 ヒューゴ先輩は何を思ったのか、エルザ様に詰め寄っている。


「ふーん、綺麗だな」

「…っ⁉︎」

「……どこかで見たことがあるような、ないような……」


 彼の考えるように更にエルザ様に詰め寄る姿に、昨日ヒューゴ先輩が言っていたことをふと思い出した。


『あ……でもまだ幼い頃ひとりだけいたな』


「初めてヒューゴ先輩から逃げなかった子、だったりして」


 それはボソッと言った何気ない言葉。だったのだが…………


「そう、かもしれない…っ」

「え……?」


 ほぼ冗談で言ったため、言った本人がまさかすぎて固まる事態だ。


「名前……君の名前を教えてくれないかい?」


 エルザ様はヒューゴ先輩の圧に少し動揺しながらも「エルザ・ウィリアムズ」と名乗る。すると彼女の手を取り、手の甲にキスを落とした。


「……っ、」

「エルザ……君は運命の人だ。どうか僕と婚約してくれ」

「は、はいっ?」


 うわ〜〜ヒューゴ先輩、全部急なんだってばっ!プロポーズだって早すぎるし……今回は冗談じゃないだろうに……あ〜っ、もうどうにかしたいっ!

 お互い恋愛不器用さんであるが故に、見ているこちらのもどかしさが収まらない。

 けど幼少期に一度だけ出会った子が、どうしてエルザ様ってわかったんだろう?直感?それともヒューゴ先輩が一目惚れして、過去を捏造してる……?


「君もここにいるということは、婚約者が見つかっていないんだよね?それとも気になる人がいる?」

「それは……いませんけれど、初対面での婚約は……致しません。申し訳ないですが」


 バッサリフラれるヒューゴ先輩。普通そうなるんだよ……あぁ、下向いちゃった……

 そんな彼を見てエルザ様は続ける。


「それに、私はウィリアムズ公爵家ではありますが、現状両親からは見放されてますし、私との結婚で待遇面を期待されても困るのです」

「……何を言ってるんだ?」

「私が公爵家の人間だから、婚約してほしいと言ったのでは?」


 きっとエルザ様は本来の姿を否定されすぎて、本来の自分が好かれることに鈍くなってる。だからエルザ様は家名でプロポーズされたと思ってるんだ……


「ちがうっ!違うぞ……!名家だからとかでは断じてない!……僕は君に、恋をしたんだ!」


 〜〜っ!

 こちらまで赤くなってしまいそうなド直球の告白に、私の頭の中では前世で聴いていた恋愛ソングが流れ出した。

 応援したい……ヒューゴ先輩の恋も…っ!




♢天の声♢


セリンセの頭に流れた恋愛ソングは、是非皆さまの好きな曲をあてはめて読んでみて下さい☆〜(ゝ。∂)

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