長めのプロローグ完
「ねぇ?これやってみない?」
そう言うとデカイ箱を突き出してきた
「なにこれ?」
「今、話題のフルダイブ式のVRゲームの本体。
それのセットと【サバイバー】のゲーム。」
俺の母親が自慢げに説明してきた。
「それって、入手困難になってるやつじゃ?」
「そうなのよ。何箇所も抽選に応募して、やっと当たったのよ。」
「それってさぁ、生体認証とか色々入力するからサブアカウントを作れなくて他の人に貸したりできないんじゃなかったっけ?」
「そうだけど…やってみない?」
「それずっと楽しみにしてたんじゃなかった?」
「謙一、あんたの気分転換になると思ってね。
このゲームの触れ込みは知ってる?」
首を振る、話題にはなってたけど中身までは知らなかったからだ。
「このゲームはね、五感を体験できるっていうキャッチで売り込みしてるのよ。
つまり、このゲームでなら美味しいものを食べることができるんじゃない?」
「え?」
「あたしは謙一が心配なのよ。
日に日に顔が暗くなっていって今にも消えそうな顔になってる。
これなら気分転換になるんじゃない?」
「…」
突き出された大きい箱をじっと見つめる。
これなら、自分の色褪せた世界を払拭してくれるかもしれない。
一筋の希望に見えた。
「…ありがとう。やってみるよ。」
「うん。頑張りなさい。」
そう言うと箱を渡し…
「あ、後でいいから代金は頂戴ね。
あと、あたしの分のセットはそれはそれで欲しいから謙一も抽選に参加しなさいよね。」
ながら、そういった。