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なろうラジオ大賞3短編集

お味噌汁からオーパーツ

作者: ミント

 なんてことない日曜日の朝。ちょっと遅めのブレックファースト。ご飯に漬け物、焼き魚にお味噌汁。一口、味噌汁を啜ってみたらなんだか嫌な感触。


「お母さ―ん! 味噌汁にオーパーツ入ってるんだけどーっ!?」


 ◇


 アサリが吐き出したにしては、デカすぎるその石。驚いたのは、その見事な丸さだった。

「これ、ひょっとして『コスタリカの石球』?」

 お母さんに「そんなの入れるわけないでしょう」と言われあっさり引き下がった私は、石を前に頭を抱える。


 コスタリカの石球は製造方法も時代も不明だがその形がほぼ真球に近いことから、オーパーツの代表として挙げられる不思議な物体だ。飲む寸前になって気がついたから良かったものの、囓っていれば歯が欠けていたかもしれない。


 だけど、どうしようこれ。数分ほど悩んだ私はとりあえず……


 某フリマアプリで売ることに決めた。


「綺麗な丸い石です。拾いました」


 そんな商品説明をつけたら数時間後、三百円で買い手がついた。

 ラッキー! 臨時収入だ!


 ……ところが。


 次の日はコーンスープから黄金ジェットが現れた。

 その次の日はミネラルウォーターからクリスタルスカルが現れた。


 どれもこれも微妙に汁の色に紛れてんじゃねーよ! 「死因:オーパーツの誤飲」なんて死んでも死にきれねーぞ!


 そんなことを考えていたら、今度は学生鞄の中にアンティキティラ島の機械が入っていた。……食べ物の中じゃなけりゃオッケーってわけじゃねーよ! つーかいつ入った!?


 担任の先生に「何だこれは!?」と怒られた後。


 アンティキティラ島の機械は私の心と鞄の内側、そして内申点にたくさんの傷を残したまま世界史の先生へと引き取られていった。


 それからの私は、毎日オーパーツに遭遇した。

 ヴォイニッチ手稿。バグダッド電池。恐竜土偶に、カブレラストーン。


 クロムメッキの剣先が出てきた時には「何者かに命を狙われてるのか?」と本気で心配になった。


 そんな日々を過ごしていくうちに周りも私を「やたらオーパーツに遭遇する女子」として認識するようになり、「古代アトランティスの最後の末裔」だの「怪奇に魅入られた奇妙な世界の住人」などどこの中二病患者ですか? と言いたくなるような噂までされるようになった。


 そして今日。

「さすがにこれ以上はならないよね……」

 見事なナスカの地上絵——この場合は校庭だけど——を前に私は、溜め息をつく。


 先生たちにどうやって弁明しよう……と私は一人、思い悩むのであった。


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