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24話 ツンデレ

 


火蜂(ファイアビー)』を放り込んだ穴の中は真っ黒焦げになっており、炭化した植物で埋め尽くされていた。


 獣人族であるブランやジナは涙と汗を流しながら鼻を抑えている。よほど焦げ臭いんだろう。外で待ってりゃいいのに。


 ガダには他の人狼を連れてくるように言っておいた。

 この炭を運び出してこちらのダンジョンに持っていくのだ。一応魔物の死骸なので、ダンジョンで吸収させればいくばくかのDMPになるはずだ。


「こいつらは……食人植物(マンイーター)。植物系の魔物か」


呪線(ライン)』を伸ばして死骸に触れて解析を行うと、俺のダンジョンにもいた魔物だった。

 それにしてもデカイが……

 あっ。


 ===================

 ボラスボル

 種族 アルファ・マンイーター

 レベル 36

 DMP 6540

 HP 0 / 1384

 MP 0 / 460

 スキル:

 不滅 魔法適性(地3) 高速再生 体力吸収 硬質化 胞子(植物化) 増殖 眷属支配

 魔法:

 樹操

 ===================


 ……アルファだ。

 隠しボス的なやつを一方的に焼き殺してしまったらしい。


 まともに戦ったら結構厄介そうな能力を備えていたようだが……

 根を張ってて逃げられない以上、火を放たれたらどうしようもなかったわけだ。なんかごめん。


 こいつももちろん回収だ。

 これでマンイーター種を召喚できるようになる。後で作っておこう。



「さて……ここが別のダンジョンか」


 俺のダンジョンと同じく、一見するとただの洞窟である。コア近くは違うのかもしれないが。


領域(テリトリー)』を広げ、周辺を把握する。

 このマンイーター広場からは3方向に通路が伸びている。


 む。

 そのうち一つの通路から2つの生体反応が向かってくる。

 これは……人型っぽいな。


「なんじゃこりゃあ……忌々しいツタが全部黒焦げじゃぞ」


 デカいダミ声が響き、広間に入ってきたのは……小さいヒゲモジャの爺さん2人組だった。


 片方は頭にバンダナ、厳つい顔に立派なアゴ髭。ドワーフだな。

 もう片方はヒゲモジャどころか頭から足元まで真っ白な髭に覆われていて顔すら見えない。これは……ノームか?


「燃えてたんだから当たり前じゃろうが。相変わらずオツムが足りんのう」


「ケンカ売っとるんか、お前は。……おう、誰かおるぞ。お前らが燃やしたんか、こいつらを」


 こちらに気づいたドワーフはやはりデカい声で呼びかける。

 警戒は見えるが、敵対的というわけではないか。


「ああ。まずかったか?」


「そんなわけがあるか! こいつらのせいでワシらは10年閉じ込められてたんじゃぞ! 切っても燃やしてもすぐ生えてきやがるし……」


「まったく、こんなガサツな男と一緒に10年とは……とんだ災難じゃったわ。自慢の髭もこんなに荒れちまって」


「やかましいわ。こっちだって神経質なノームなんぞと……」


「待て待て、こっちの話の途中だろ。ケンカすんな」


「なんじゃ、若造……お前、ゴーレムか? そっちはエルフ、獣人? ヘンなメンツじゃのう。まあなんでもええわ、感謝してやるぞ」


 ゴーレムなのがどうでもいいのか。確かに細かいことは気にしない性格らしい。

 それにしても口が悪いな。


「ワシはノームのエンテ。こっちの口の悪いのがドワーフのダールじゃ」


「俺はアルフィンだ。こっちはコレットとブラン、ジナ。あんたらはここで何を?」


「ドワーフとノームって山の領地争いで仲が悪いって聞いてましたけど……」


 コレットが口を挟む。

 俺もそれは耳にしている。ラウジェスにもドワーフはいたが、ノームのことは散々悪し様に言っていた。


「言ったじゃろうが、閉じ込められておったのよ。この奥のミスリル鉱床を掘っていたらいつのまにかマンイーターどもが繁殖しておってな……あと仲は見ての通りじゃ」


 いつのまにか……って、どんだけ長いこと掘ってたんだよ。


「口喧嘩するレベルじゃなくて戦争するレベルの仲の悪さだと聞いていたが」


「ああ、ワシらは……それでお互い国を追放されとるからな」


「こんなヤツのために追放されるなど、馬鹿なことをしたもんだと後悔しきりじゃ」


「なんだと……それはこっちのセリフじゃ、この毛玉ジジイが」


 ああ、仲良しらしい。いいことだ。疲れた。


「……で、お主らは何者じゃ」





 ──────





「……まあそんなわけで、俺たちの住処の近くに人喰い植物がいたから燃やしたら、あんたらと出会ったわけだ」


「なるほど……エルフ、獣人に人狼か。面白いのう」


「随分と雑多な集落じゃな」


 ダールとエンテはボソボソと相談しだした。

 やっぱり実は仲いいのか。


「おう、ハニワの小僧……ワシらもそこに住んでやってもよいぞ」


「え、断る」


 反射的に俺は拒否する。面倒臭そうな連中だし。


 ダールは腕組みをしたまま固まり、エンテがダールにボソボソと耳打ちする。


「わ、ワシらがいるとなにかと便利じゃぞ……生活するのには道具が必要じゃろう。ワシは鍛治、コイツは細工が得意じゃ。鍛冶場さえ用意してくれれば、役に立ってやろうぞ」


「一応コイツはドワーフの国では名工の称号を持っておった。ワシも似たようなもんじゃ」


 ふむ……確かに。

 町との取引が難しい俺たちは道具を調達するのに苦労するだろう。

 人狼たちの武器や人間に戻った時──スローライフのためにも鍛治師と細工師を雇っておくのはアリか。


「……よし、住んでもいいが、面倒は起こすなよ」


「ありがた……い、いや、ワシらの腕を見て腰を抜かすなよ、若造」


 強がるダールとエンテは目に見えるほどホッとしているのであった。

 コイツらも帰る場所がないんだな……



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