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20話 スタートアップ

 


 人数が増えたのでダンジョンを整備しなければなるまい。俺以外は喉も乾くし腹も減るのだ。


 まずはコアルーム直上、最初にコアがあった部屋を居住区中心のホールとし、ダンジョンの属性ブロック作成機能で湧き水や料理用のコンロを設置。

 さらにコレットたちが自分の村の廃墟からテーブルや椅子などの家具を持ち込んで、なかなかサマになってきた。


 ホールの周辺にはコレットたち3人の部屋とザオウたち9人に3部屋、あと一応俺の部屋の計5部屋を用意。


 気温や湿度など調節できるので、できるだけ希望を聞いて過ごしやすい部屋にしてある。

 働いてもらうのであればモチベーションに直結するからな。


 ちなみに俺の部屋はがらんどうである。ハニワには触覚がないのでフカフカのベッドも必要ない……悲しい。


 人狼たちはまず安静にして奴隷生活で衰えた体を休めてもらわなければならない。


 が、暇さえあれば「アルフィン様のお役に立たなければ!」と狩りに出ようとしてしまうので、盗賊団のアジトで入手した映写魔道具を貸してある。


 ……もちろん、エロ動画は消して、代わりに俺の記憶から抽出した映画を入れておいた。

「遠い異国の物語だ」と言ってある。嘘は言ってない。


 ホールで全員あぐらをかいて物珍しげに見入っている。

 静かになったが、尻尾を振りながら見ているところを見るとよほど気に入ったらしい。


 そんな感じで一通りを整えた。

 次のアクションを起こさねばなるまい。





 ──────





 ホールに全員を集め、俺用に設えられた台の上に乗り、宣言する。


「ダンジョンパラダイスプロジェクト、スタートアップミーティングを始めます」


 わあー、パチパチパチ。


「……質問、いい?」


「なんだね、ブランくん」


「ダンジョンパラダイスプロジェクトって?」


「聞いたままだ。我々は今まで辛酸と苦汁を舐めさせられ続けてきた。才能により差別され、生まれにより疎まれ、過酷な地で不幸のドン底にいたのだ。ダンジョンによってその現状を変える。温かい寝床と美味しい食事、働かなくてものんびり遊んで暮らせる生活を目指す。それがDPP……ダンジョンパラダイスプランだ」


「異議なーし!」


「……なんか変わってない?」


 うむ、コレットくんは素直だな。

 ブランくんも見習いなさい。


「でも、具体的にはどうするんですか?」


「いい質問だ。ダンジョン生活を快適に過ごすには、DMPを得る必要がある」


「DMP?」



 ※〜 メンバーがじゃぶじゃぶ稼ぎたくなるような射幸心を煽りまくる説明文章 〜※



「すげー、ホントにそんなことが……!?」

「……!」


 キラキラと目を輝かせるブランとジナ。

 応用の可能性について語ったのだが……ちょっと誇張し過ぎたかもしれない。


「ちなみに現在のDMPの状況はこのようになっております──あれ、映らないな、ちょっと待って……ああ、出た出た」


 映写魔道具を使い、壁に表を投影する。

 プロジェクター代わりだ。


 ===================

 DMP現在値:9,450

 収支詳細(時間あたり)

 コレット +3.1

 ザオウ  +0.5

 ジナ   +0.4

 その他  +1.7

 魔物   +0.6

 魔力源  +0.3

 維持費  ー3.0

 ────────

 合計   +3.6

 ===================


「おー、わたし、高いです! へっへー、どうですか、狼さん!」


「ぬう。殿、何かの間違いでは?」


 ザオウが唸る……との?殿って言ってるよね?

 ……映画に影響を受けたのだろうか。触れないでおこう。


「オレ、ひょっとして……」


「その他だな」


 膝を落とすブラン。強く生きろ。


 意外なのはジナだ。……なんか誇らしげな表情なのは気のせいだろうか。

 原因は気になる。後で解析してみよう。


「これは平常時だ。皆のおかげでプラスになったが、活動してくれればさらに増える。あちらに訓練室を用意したから、体調が戻り次第……コラ、今すぐじゃない。慌てんな」


 弾かれたように立ち上がった人狼たちをまとめて『呪線(ライン)』で縛り上げる。子供かお前らは。


「ぬうう、拙者も訓練してすぐに追い抜いてやるからな……見ていろよ、小娘」


「へーんだ、そう簡単に越せないですよー! 6倍ですから、6倍!」


 仲悪いなこいつら。なんでだ。

 あといま拙者って……もう疲れた。ほっとこう。


 お次はマップを表示する。

 山脈を挟んで横断するダンジョン、その周辺地域だ。


「今のところ、我々のダンジョンはこうなっている。西のアバンドンド側に3箇所、東ラウジェス王国側に1箇所の出口がある。……さて、我々にとって目下の最大の脅威はなんだと思うね、コレットくん」


「えーと、ビーストイーターは倒したので……やはり盗賊団の残党でしょうか」


「そうだな。やつらはダンジョンの出口すぐのところにいる。こいつらをまずなんとかしたい」


 南西出口近くの小さな森にバツじるしをつける。


「では我々が参りましょう」


 ザオウが静かに呟き、人狼たちが呼応する。


「奴らには恨みがあります! すぐにでも行って殲滅して参りましょう! 命じてくだされ、殿!」


 殿じゃねえ。


「慌てるな。他にもお客さんの予定がある。ラウジェスの冒険者たちだ」


「アルフィンさんの仲間ですか?」


 そう。盗賊団の集落のある『見捨てられし地(アバンドンド)』と山を挟んだ反対側、ラウジェス王国の冒険者たちだ。

 タスカリアスの奮戦によって退却したらしいクザンたちだが、それで諦めるような連中じゃない。


「一度退却した冒険者たちは準備を整え、複数パーティーを募って再攻略を狙っているはずだ。ダンジョンコアと魔術装置を見られているしな」


 魔術装置は暴走によって吹っ飛んでしまったが。


「アルフィンさんの仲間なら説得できるのでは?」


「説得できそうな奴もいるが、そう単純な話じゃない」


 ルーリアだけなら説得はできるかもしれないが……冒険者たちはギルドとして動いているのだ。1人を説得したところで意味はない。


 俺の容姿(ナリ)も問題だ。

 魔物になってしまった元冒険者など、ギルドとしては恥でしかないだろう。

 俺が名乗り出たところで下手すると討伐対象になってしまう可能性もある。


「……そんなわけで、まずはダンジョンの防衛体制を整えることが急務となる。要塞化だ」


「なにかお手伝いできますか?」


「もちろんだ。準備を手伝ってくれ。ブランとジナ、人狼たちもだ」


 全員顔を見合わせて頷く。

 よし、プロジェクト始動だ。


やっぱり、キリよくここ(20話)までで1章とします。

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