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分析



 翌日。

 学校…だるい。

 机に突っぶしたままダウンしたい気分。

 授業内容は一応頭に入れているが、正直迷宮帰り次の日に学校とか新手の拷問ですかとか思いましたハイ。

 筋肉痛…とは違う痛みが体を蝕む。

 強いて言うなら、精神痛ってとこかな。

 迷宮の中で実際魔物と命のやり取りをしたんだ。体は傷付ばよほどじゃない限り癒えるが精神的苦痛はどうにもなれなくて。


「よう若人よ無気力の様子じゃ見てられなくて一体どうしたんだい」

 担任のこの特有のウザさがさらに追い打ちをかける。


「昨日迷宮潜ったんですよ」

 察してくれ、頼む。


「ほほーう、なるほどなるほど、まあ生きて帰ってこれたんだからよかったじゃん」


 当たり前だ、まだこの歳で死ぬつもりはない。


「で?はじめての実戦は?」

「―――――――実戦って感じしかしません」


「あははーそっかそっかーいやー仲良し四人組もついにひよっこの冒険者か」

 うんうんと頷く先生、よきかなよきかなと。


 いえ、こちらではそれどころではないんですよ。


「何倒してきたん?」

 休憩中に私の机に来て根掘り葉掘り聞くつもりですか先生…

 目がキラキラとしてるし…

 他の三人が席を外してるのが恨めしい。


「ゴブリンとグラウンドハイエナですよ…」


「ほー、まあ悪くない。何匹?」


「ええぇーと、何匹だっけ…ゴブリンは六匹…グラウンドハイエナは四匹…合計十匹でポイントは24でした」


 グラウンドハイエナ一匹に3ポイントだもん。だけどあの速さで3ポイントは詐欺と思う。10ポイントくれ10ポイントを。


「ほ、初めてで十匹いくんかい、こりゃああれだ、みのりが中学で呼ばれていたアレだ、期待のエース。そう、仲良し四人組は冒険者界期待のエース」


 勘弁してください。

 というかうちのキル数ゴブリン六匹中三匹は碧だし、グラウンドハイエナも二匹取ってるようなもん。

 どっちかと言うと今の所エースというと碧ですね…あとは自分のこと槍術の申し子と思い込んでるみのり。あのテンションには見習うものがあるわ。


「先生」

 なんか聞かれっぱなしのが性に合わないんで、こっちもなんか聞いてやろうと思う。


「んー?」


「グラウンドハイエナの速度どうやってついていくんですか」


 先生はそんな質問されること予想すらしてないせいか一瞬固まった。

 数秒。


「あーあれについていくのは素でなら無理ですね、下層に限った話ならばどうにかなるんだけど中層じゃ人間の限界を軽々と超えてくる魔物ばかりになるから総合的にいって無理」


「じゃあどう対処するんですか」

 聞いてるうちに俄然興味が湧いたので、少し気力を取り戻す。


「それは冒険者やっていくうちにわかるんですよ、途中でやめちゃった場合除いて」


 なにそれ。

 答えになっていないよ先生。

 だけど先生はもうこの質問これで答えたつもりなのだろうか私の机から離れ、どこかに去っていった。



「休憩時間に先生に質問したことがあるんだけど」


 昼、私達四人が学食のいいとこを占拠し、昼飯を食べていた。


「なに~繭ちゃん何聞いとるん?」


「グラウンドハイエナの速度にどうやってついていくかって」


 それを聞いて碧の目付きが変わった。


「それで先生はどう答え?」


「いや、冒険者やっていくうちにわかるんだって。なんかなぞなぞみたいでちょっと意地悪」


 ぐったりとテーブルにダウン。

 失った気力は大きかったのだ。

 ただ、碧が、先生の答えを聞いて深く考え込んでる様子だった。









 私達に足りないもの。

 そう碧に言われた。

 いやそりゃああげたらキリがないよ足りないものって。


「まずこれを」


 碧がノートPCを出してきた。

 放課後、みんなもうほぼ全員家に帰ってるか部活で練習するやつだけの学校。

 そのノートPCにはある一つの動画が映し出されていた。

 冒険者ファイトドキュメンタリーだ。

 実際に存在する一定級以上の冒険者の戦いを映像に収めたものだった。


「へー碧こういうの興味あるのか」


 私が感心していると、

「違うわよ、このノートは私のだけれど動画自体はみのりが勧めてくれたものよ」


 ん?

 みのりが?


「なんで?みのりこういうの興味ある?」


「いや、あたしは槍術の練習になるかなって動画をあさっていたらこんなのみつけちゃってさ…てへ」

 ペロッと舌を出す。


「問題はこの動画にあるのよ」

 碧が指で示す。


「どこ?」


「一応この写ってるパーティーの情報調べたわよ、B級冒険者だそうよ。でもよく見て、彼らが戦っているこの魔物」


「んー?あれーこれって」


 碧がコクリと頷く。

 そう、彼らが戦っている魔物はインフェルノスコーピオン、中層の上部に生息する火も吹けるサソリの魔物。この魔物が有名なのはA級への登竜門としてよく試験に採用される。


 強さ的にA級中堅のパーティーでやっとまともに渡り合えるかくらいの強さ。


 でもここの戦っている人たちは…


「B級だよね?」

 私に言われて、満足したのか碧が微笑を浮かべ、「そうよ、自分の級別以上の魔物と互角に戦えるすべがあるわ」


 総合的に分析する。

 私達と動画の人々の違い。

 足りないもの。

 結果は―――――――――――


「結論から言うと、このパーティーまず全面的にバランスが良いのだ。盾役と攻撃役と補助役。トライアングルよ。見て、ここ、この人がスコーピオンの攻撃防いでくれてるでしょう、その隙きにアタッカーが攻撃を入れるの。そしてアタッカーがスコーピオンに狙われそうになったらまたシールダーとサポーターがひきつけてる」


「そしてこれ見て」


 碧が画面の一点に指を指す。

 あー

 たしかにそう言われればそういえばってことになるわよね。


「魔法かー」


 碧が指していた一点に映ってるのは―――――――エルフ。

 動画では単純に弓を使ってたが…

 でもエルフといえば――――――――――魔法。



「そう、私達は、まだ序の口に立ったに過ぎなかったわ」


 私達とこのパーティーの違い。

 それはパーティーメンバー、装備などと。

 でもそういった現金的や人事的な要素を取り除いて、今すぐ手の届くところにあるものは――――――――――魔法。


「盲点やったわ~確かに魔法は高価って聞いとるんだけどな」


「でもね、私調べたの、ついでにね。なんと初級魔法ぐらいは冒険者協会が無料でサポートしてくれるんだって」


 それは驚いた。

 初級と言っても有と無じゃ結構な違いが出る。


「無料とは景気がいいやな~」


 と。


「はえ~?ケーキがいい?えっと、ジュルリ、シュル、えーあーうん、ファミレスのほうがいいなって」


 その一言に私達の空気が瞬間絶対零度に凍りついたーーーーーーーーみのりを除いて以外の全員が…私達三人が…ギギギという効果音を鳴らしながら首をロボットのように動かし、三人が一緒にみのりを見つめた。


「はえーファミレスがいいって言ったじゃん?いこういこう」

 碧の顔が徐々にニコニコ笑顔になる。コワイ。


「みのりーん~♪あんたはぁ~今まで寝てたん?❤」


「いや、ね、寝てない!夢の中でちょっと狼と特訓してきただけ」


 おバカ正直でよろしい。


「そっかぁ♪それじゃあ夏休みころにはその特訓の成果を披露してもらおうかなーね~みのりん♪」ニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコ。




 ミーンミーンミーン…

 時期は夏休み直前。

 セミの大合唱は今日もフルボリューム。




途中で寝てたみのりん…あんたって子は…

3話です。

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