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『山場なし』のメタい姉とメタい弟

 今日も物語ははじまる。

 いつもの六畳一間――って、もうこの下り、飽きたからいいだろ。前節も短いからって止めたしさ。

 部屋があります。部屋の中にパソコンデスクがあります。それに向かい合うように、俺が座ってます。姉さんはその左隣に置いてあるベッドの上で座ってます。はい、オッケー。

 これで想像出来ただろ。

 え? 出来ない?

 じゃあもうなんか適当に姉と弟が座ってるでいいよ。


「……弟くん、風景描写が投げやりすぎるよ」


「そりゃあ投げやりにもなるわ」


 ここまで一気に進んでる。書き貯めって大事。ただ、もう疲れてきたから休みたいのも事実。

 あっ、別に俺は疲れてないけどね。ほら、三流アマチュア小説書きと俺は別人だから。あくまで俺は主人公だから。

 投げやりになってるのは別の理由。


「俺さ……全然アニメ見てなくね……?」


 もっと言うなら、全然休んでなくね?

 今どれくらいだっけ。予定だと第五話だっけ。その間に、姉さんとどれくらい会話したっけ?

 その中で、俺がアニメ見てる描写どれくらいあったっけ?


「えっと、一応私が来てないときはゆっくり休んでるんじゃない?」


「馬鹿言え。休めてる訳ないだろ」


 こちとら、平凡な男子高校生だぞ! 

 しかもいつの間にかバイトしてる描写も入れられたせいで、自由時間が更に減ってる!

 大人しく親の仕送りで生活費をまかなってるとかにすれば良かったものを……!


「そういえば弟くんって、何のバイトしてるの?」


「コンビニだよ、コンビニ。短い時間で勤務シフトの自由度も高いからな」


「あー、コンビニ……。あれかな? イライライケレーとか言うのかな?」


「お前、北海道民とアイヌ民族に謝れよ!」


 あと俺にも謝れよ。

 流石に『いらっしゃいませ』と『イライライケレ』は聞き間違えねぇよ。ボケがわかりづれえよ。読者も思わずハテナマーク通り越して、失笑するわ。

 ちなみにアイヌ語で『イライライケレ』は『ありがとう』の意。『いらっしゃいませ』と『ありがとうございました』でダブルで違う。わかりづらい二重ボケだ。

 わかりづらすぎて、俺もツッコむべきか迷った。

 

「と、とにかく、弟くんは時間が欲しいんだね?」


 俺の剣幕に驚いたのか、姉さんも取り繕うように言葉をかけてくる。

 

「まあそうだな。出来れば姉さんが今すぐ帰ってくれれば、助かる」


 無理だと思うけど。

 そういう風に出来てないし。

 

「それは無理だけど……」 


 ですよねー。

 逆に出来てしまったら驚きだ。『イライライケレー』しか今のところ話してない。トリビアを紹介する物語ではないはずだ。

 じゃあどんな物語だって言われても、それはそれで返答に困るが……。


「あっ、じゃあこういうのはどうかな? 帰るわけにはいかないけど、今日は二人ともゆっくりする!」


 おぉ、姉さんにしてはナイスアイディア!

 物語上、出さない訳にはいかないが何をするかは自由だからな。こういうのもたまにはいいだろ。

 日常回も大切って、誰かも言ってた。


「じゃあ俺、アニメ見てるから。姉さんは適当にそこらへんでくつろいでてよ」


「うん! じゃあゆっくりしよー!」


 そう言って姉さんはベッドに寝転がると、携帯電話をいじりはじめた。

 あんなもん持ってたのか……。

 よくよく考えれば、パソコンがあるんだ。携帯電話くらいあって当たり前。

 つーか、そんなもの描写するくらいなら早く俺たちの容姿を決めてくれよ。いつまで容姿不明のままなんだ。

 まあいい。それはまた今度だ。

 とにかく今はアニメが先決。


「んじゃ、よろしく」


 そう言ってパソコンに向き直ると、撮り溜めていたアニメを視聴する。

 いやぁ、予想してない形で時間が出来たな。

 今日こそ久しぶりに有意義な休日が過ごせそうだ。


「……」


 ……三十分後。


「…………」


 …………一時間後。


「………………」


 ………………三時間後。


「……………………」


 ……………………五時間後。


「…………………………余計疲れるわ!」


 なんだよ、この『……』の描写!

 もうちょっとなんかあっただろ!

 もしかして無音か!? 無音なのか!? 他に何か流しとく文字なかったのか!?


「それは……。ほら、三流アマチュア小説書きだから……」


 三流でももう少し上手な間の使い方するわ! 

 しかも結局俺、アニメ見てんのかよ! 見てねぇのかよ!?


「ちゃ、ちゃんと見てたよ? でも、アニメとか下手に描写すると設定増えるから――」


「――……もういい。諦めよう」


 俺は物語外でアニメを見ている。それはもう猛烈に見ている。そういうことにしてくれ。

 ひとまず今日のところは、アニメ鑑賞おしまいだ。

 俺は一息ついて、背もたれに体重を預ける。

 五時間も座りっぱなしだから、流石に疲れた。

 ――って、おい俺五時間ずっと座りっぱなしかよ!? 新手の拷問じゃねぇか!

 

「五時間なら、トイレもいかなくて大丈夫だから平気だよー」


「そういう問題じゃねぇんだよ! くそっ、いいよな、姉さんは。そういうの関係ないから好きな体勢でいられてさ」


 俺はそうもいかないが、姉さんは俺に感知されない範囲では自由だ。

 仮にこうやって描写してない時間に、姉さんが一人エ○ザイルごっこをしていたって、俺がそう言わなきゃ誰にも分からない。


「私、一人エグ○イルごっこなんかしないよ!」


 変わらずベットで寝そべりながら、姉さんはそう返す。

 

 あれ? でも逆を言えば、俺の言葉で姉さんは自由自在……?


 そんなことを考えていると、姉さんが蔑んだ目で俺を見ていた。


「……流石のお姉ちゃんも、弟くんのこと軽蔑します」


 ていうか、はっきり言われた。

 一部の方、大歓喜である。

 もちろん俺は一部ではないので、普通に凹む。

 デモ、俺、白色ハ忘レナイ。ゼッタイ。

 いや、今までの話とは全然関係ないけどね? うん。


「ま、まあアレだな。山場がない話っていうのも、ちょっと面白味に欠けるよな」


 俺は強引に話題を変える。

 決して姉さんの目が段々と険しくなってきたからではない。

 俺、負けてない。負けてないんだからぁっ!

 なんか俺のキャラ不安定じゃない? ……今更か。


「……はぁ。そんなに山場って大事なの?」


 最初のため息は何に対してですかね、姉さん。俺、すっごく気になります!

 でもせっかく機嫌が直ったんだ。乗らない訳にはいかない。このビックウェーブにな。


「そりゃ山場は大事だ。物語にも起伏っていうものがある」


 人生は山あり谷ありとは誰の言葉か。

 姉さんのボディラインにもぜひ反映してあげたい。どっちかというと見渡す限りの平原だもんな。ピクニックにはもって来いだが、冒険には足りない。

 って、そうじゃなかった。


「全部が全部ってわけじゃないけど、やっぱり変化が少ない話はつらい」


 よく例えられるのは、『お前、三食毎日カレー食えるの?』だ。

 これに対して、『朝はカレーパン、昼はスープカレー、夜はカレーライス食べるから平気』とか『ラーメンなら平気』とか言う奴は、多分捻くれてる。

 つーか、それでも普通に飽きると思うんだけど。毎日白米食ってる俺が言えることじゃないけどさ。


「そういうものなのかなぁ……。でも山場ってどうやって作るの?」


「それが分かれば、俺も苦労しない」


 一般的には『盛り上げたい場面』を山場とか言う。

 どうやって盛り上げるかは、知らん。なんかそれっぽく作ればいいんじゃなかろうか。

 そここそ腕の見せ所。というか、一番の見せ場なんだから、自由にやりたいことやればいい。

 あくまでそれまでの過程は前座、くらいの気持ちでもいいんじゃないか。


「ふーん……。じゃあ今日は山場なしだね」


「まあそうなるな」


 むしろこの物語に山場とかないけど。

 いや、あるかもしれないけど、少なくとも俺は感じないな。

 主人公が感じないんだから、多分読者も感じないだろ。

 

「さて、じゃあ今日はもう帰るね」

 

 姉さんはベッドから起き上がると玄関へ向かう。

 って、この描写ももういらなくねぇかな。

 姉さんは帰った。はい、おしまい。これでいいじゃん。

 俺も疲れたし、今日はもう寝よう。

 

「……結局、今日何もしてねぇな」


 それでも物語は続くんだから、別に山場とかなくてもいいんじゃね?

 三流アマチュア小説書きの主人公になった俺と、同じく登場人物にされた姉の物語は、続く。

 作者が飽きるくらいまでは、続く。

 



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