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『年越し』のメタい姉とメタい弟




「新年あけましておめでとうございます!」


「はいはい、あけおめあけおめ」


 いつもの六畳一間から物語ははじまる。

 年が越しても俺たちはあいかわらずで、特に何かあるわけじゃない。

 いつも通り、まったりと部屋でくつろいでいた。


「お参りはちゃんと行った? おせちは食べた?」


「行った行った。食べた食べた」


 お参りは元旦の朝に行った。実家には帰ってないけど、元旦の昼に姉さんが持ってきてくれたおせちを食べた。

 もちろんこの物語では全く語られることはなかった。

 なんでやねん。正月ネタくらいやれよ。話題なかったんじゃないのかよ。


「ていうか数日経つと『お正月』って感じでもないぞ」


 テレビの特番も終わるし、連休もなくなるし。『お正月』なんて言っても、そんな気分を味わうのはせいぜい元旦から三、四日程度だ。

 

「まぁそうなんだけどね……。でもせっかくだし……」


 ぶつぶつと呟く姉さん。

 だったらお参りとかおせちとかの話やれよ!

 いや、それはそれで描写とか俺が面倒なんだけどさ。


「まあいいや……。それで今日はどうする? なんか話題あるの?」


 なんだか年明け前まで毎日物語をしていたから、間が空くのは新鮮だ。つっても前回の話から約四日後なんだけどな。

  

「ん、んー……じゃあ、今日は『物語の時間』についてで!」


「時間だぁ?」


 どういうこっちゃそりゃ。


「ほら、私たちって今まで毎日更新だったからなんとなく一日ペースで進んでるでしょ? こう、でも本当は物語の中の時間経過とか、色々あるじゃん!」


「色々あるじゃん、って言われてもな……」


 もうざっくり過ぎて意味分かんねぇよ。

 まぁでも、『作中の時間経過』について話せばいいんだな。

 ……やっぱ話題ないときは、姉さんがホント便利だ。どっかの妹も見習ってほしいとこだな。俺に妹はいないけど。

 話題の出し方が毎回無理やり感溢れるけど、それはご愛嬌。


「『時間経過』かぁ……。色々思うところはあるが、正直難しい話題でもあるんだよなぁ……」


「え? なんで? いつもみたいに偉そうに語ればいいんでしょ?」


「おい待てや、誰が偉そうじゃ誰が!」


 時に正論は人を傷つけるんだぞ! もっとオブラートに包め、オブラートに!

 ……完全に余談なんだけど、オブラートってオランダ語なんだってね。名称の由来は楕円を意味するオブラトゥスから来てるんだそうな。オブラトゥス。カッコいい。辺境の国の王様とかやってそう。

 どうでもいい話。


「ごほん……。まぁアレだ。よく物語で『それから二年……』とかあるだろ?」


 『三年後……』とか『数分のち』とかね。

 あれなんてまさに時間経過じゃん。

  

「あるねぇー。大体そのあと主人公が強くなったり、行方不明になったりするよね」


「それは知らん。安直に思えるかもしれないが、これがそもそも時間経過だ。すると逆に、時間を縮めることも出来る」


 『瞬く間に』とか『一秒を数えるまでもなく』とか『たった数秒の出来事が、無限に引き伸ばされたように』とかね。

 最後のはちょっと違うが、実際は数秒のことなのに主観では膨大な時間に感じるってことだな。

 どれも文字数の割に時間が短くなるっていう点では同じだけど。


「文字数の割に? どうしてそこで文字数が関係するの?」


「それは、物語の中の時間と物語を読む時間があるからだ。この二つは必ずしも同じ進み方をしていないはずなのに、読者は無意識で時間経過を意識する」


 無意識で意識。意味が分からんが、俺もいい言い回しが思い浮かばなかった。余裕で許して。

 

「『十年後……』とか『瞬く間に』以外にも、作中では当然時間が進んでいるはずだ」


 あ、もちろんずっと時間が止まってる物語もあるかもしれないけどね? 

 時間が止まってる限り物体は動かないっていう法則があるなら、登場人物が動いている限り時間は進んでるはずだってこと。

 そんな物語あるか知らないけど。……でも普通にありそう。

 まぁ主観で時間が進んでればなんでもいい。


「例えば、俺たちがこうやって会話している間にも作中の時計の針は進む」


 この物語で世界中のあらゆる時間が止まってようと、俺がこうやって語ってる分には『俺の主観』の時間は進んでいる。

 当然、それに同調しているはずの読者も、物語自体の時間は進んでいると思う、はず。

 ……これ説明するのすごく難しいな。ぶっちゃけ上手く説明出来てる気がしない。


「うん、よくわかんないね!」


「……もう気にせず続けよう。それで文字数の話になるわけだが。作中は時間を伸ばしたり進めたり、逆に縮めたり戻したりできるのに対して、読者が文字を読み進めるスピードは基本的に一定だ」


 盛りあがる部分では早く読んで、とかあるかもしれないけど大体一定のスピードで文字を追うはず。


「そこで時間のズレが生まれる」


 一度は体験したことがないだろうか。「あれ? そんなあっさりなの?」とか「え? なんか展開早くない?」っていう現象。

 もちろんそれらが全て時間のせいじゃないだろうけどさ。


「えー、やっぱりわからないよ! どういうこと?」


 だから俺も説明するの難しいんだってば。


「あー、あー……そ、そうだなぁ……。あっ」


 んじゃこういうのはどうだろう。


「姉さん、今日物語がはじまって、どれくらいの時間が経った?」


「え? んー……五分くらい?」


「いや、実は三時間だ」


「えええええええぇぇ!?」


 当たり前だけど嘘だ。

 って、この手法は前もどっかでやったな。 

 五分でも少し長い気がするけど、そんな感じ。

 

「作中で俺が『三時間経ったんだ』って言えば、作中では三時間経ってるはずだ。でも、実際『そんな馬鹿な!?』っていう意見がほとんどだろう」

 

 なんで? それは時間が一定のスピードで進んでいるから。

 どうして一定なの? 俺は時間を縮めたり伸ばしたりという文章を入れていないから。

 じゃあ三時間で納得できないのは? 文字数に比べて、明らかに俺が言った『三時間』という時間が長いから。

 これが現実で三時間かけて読むような会話なら、それでも納得したかもしれない。……そんな物語絶対書かないけど。

  

「よく『間が少ない』とか言うのもそれと同じだと俺は思ってる」

 

 会話だけの文章だと、矢継ぎ早に時間が進むから間が少なく感じる。


「『~と姉さんが言った』よりも『~と言い、姉さんは首を傾げた』の方が、時間が経過する。『首を傾げる』分、ワンアクション多いし、文字数も多くなるからな」


 こうやって『何分後』とか『瞬く間に』とかを使わずに作中の時間を調整する。

 そんで緩急つけてテンポをつくるわけだ。

 ……俺は意識しても全然出来ないけど。


「ほー。時間経過って難しいんだねぇ」


「いや、めちゃくちゃ難しいよ」


 出来ないことを説明してるわけだけど、ほぼ感覚の問題だし。

 ホントはいい例がいっぱいあるんだけど、人様の作品紹介するのも悪いしさ。説明しづらいったらないんだよ。

 ……あ、自分のはいい例じゃないので読んでも真似してはいけない。むしろ悪い例として反面教師にしていただきたい。


「感覚で書いてるから説明しても泥沼になるんだよなぁ……」


 まあでも会話文を例に出すと、まだいくらか分かりやすい。

 人が喋る速度も大体一定だからだ。常に早口とか間延びした喋り方するキャラもいるけどさ。

 

「この物語だと、時間を伸ばそうと思ったらモノローグ足しまくるか、会話しまくるしかないな」


 ちょっと会話するごとに姉さんの様子を描写したりすれば、ちょっとは長く感じると思う。

 もしくは俺の心理描写をもっと増やせば、多分長く感じると思う。

 あとは単純にもっと喋る。絶対嫌だけど。


「……まぁ、時間経過に関してはそんなところだな」


「ふーん……。お姉ちゃん、よくわかんないってことがよくわかりました!」


 あぁうん。俺自身もよく分かってないのがよく分かったよ……。 

 なんかごめん。こんな話題にノッてごめん。

  

「勢いだけで説明はできないな」


「やっぱりプロットくらい立てたほうがいいんじゃない?」


「……それはヤダ」


 進めたいときに気の向くままに。これ、そういう物語だから。

 なお、俺の日常はほぼ考慮されない模様。

 だって主人公だもん。とほほ。

 そうして年を越しても俺たちは物語を続けていく。

 改めて、あけましておめでとうございます。 

 三流アマチュア小説書きの物語の主人公になった俺と、同じく登場人物にされた姉の物語は、続く。

 作者が飽きるくらいまでは、続く。

 







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