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月の下

帰り道、神社に寄った。


働きはじめてから7年。もうじき30歳。

「俺は何をしているのか?」

ここで足を止めたのも、最近の悩みも、これに尽きる。

このままで俺はいいのか、しかし、かといって、何をしたいのかもわからない。


中を覗いてみる。

広くは無いので、奥まで様子がわかる。

人はいない。

時計で時刻を確認してから、鳥居を潜る。



入って右手、手水舎で手を洗う。

金属の柄杓は安っぽい音を立てる。

くたびれた白いタオルが掛かっている。

柄杓の寄進者とタオルの刺繍が、同じ名前だ。

おそらく地元の商店だろう。

昔からだが、何故か使いたくない。

ズボンで雑に拭って本殿に向かう。


境内は清掃が行き届いている。


参道の中程、両脇に、石碑が立つ。

風化は進んでいない。

手触りは滑らかで、冷たい。

右手で文字をなぞってみる。

溝は深く、綺麗に彫られている。

縁に積まれた小銭は賽銭だろう。

こちらの石碑には「月在天上 」、

反対側には「地在月下」とある。

こういうものは、対句になっているものだ。


今風に言いなおすと、さしずめ


お月さま 空の上

この星は 月の下


といったところか。

ごく平凡な、真実だ。



神頼みも程々に、神社を後にする。

新たに得たものは、何も無い。

しかし、ひとつ、思い出したことがある。

かつて、中学校の教師が言っていたことだ。


誰もが、同じ空の下にいる。

助け合うために生まれてきたのだ。


俺は、誰かの助けになれないだろうか?

まずは、募金でもしてみるか。

何かするのに、理由なんていらないのだろう。

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