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ワンダー7  作者: 二月三月
近接宇宙への挑戦

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計算迷宮(2)

 

「向こうの言い分は言い分としてだ」

 とにかくジムドナルドがうるさくてかなわない。誰か適当な人間を見つけると、見境なく講説をたれながすのである。本人は気分がいいだろうが、捕まった人間はかなわない。

「こっちが向こうの言うとおりにしなきゃいけない法はない」

 もちろん、宇宙船(ボード)の乗員は、誰もそんな気はないのである。

 それを踏まえて、わざわざ言ってくるのだから、腹も立とうというものだ。

「オマエ、ただ単に指名がなかったから拗ねてるだけだろうが、たいがいにしろ」

 こういう時のボゥシューは、まるで容赦がない。

「あぁあ?」ジムドナルドは、よくわからないうめき声を上げた「そういう下世話な話をしてるんじゃないんだよ。もっと高いところから物事を見すえて、俺達は価値の共有をはからなければならないんだ」

「そんなの、どうでもいいが、ワタシはダーに降りるからな」

「個別の話に物事を帰着するなって話をしてるんだよ」

「オマエが降りたくないないなら留守番してろ。ワタシは降りる」

「俺は、ダーに降りたいんだ」

「そういうことはワタシじゃなくて他のヤツに言え」

「誰に言えばいいんだよ」

「オマエが、まっとうなスジの通し方を知ってるんなら…」

 ボゥシューはここで一度、言葉を切った。ここで尻尾まいて逃げるようなら、可愛げもあるが…

 まだ偉そうにドヤ顔を晒しているので、ボゥシューはとどめを刺すことにした。

「そういうことは、第2類量子コンピュータに言え」

 

「サイカーラクラがね」

 イリナイワノフは、器用にピーマンを摘み取っていくビルワンジルの指先を見つめながら話す。

「この間から落ち着かなくて、大変なんだ」

「そうか」

 ビルワンジルはイリナイワノフに目を向けそう言ったが、両の手は、まるで別の生き物のように作業を止めない。

「やっぱり、いきなり呼ばれたら、いろいろ考えるよね」

「そうだな」

「ビルワンジルは心配じゃないの?」

「何が?」

「サイカーラクラのこと」

 食べごろの大きさのピーマンは全部取り終えた。ビルワンジルは、ようやくイリナイワノフに向き直った。

「オレも一緒に降りるさ」

「え?」

「イリナイワノフも一緒に行くだろ」

 ビルワンジルは当たり前のように言った。

「うん」

 イリナイワノフも当たり前に返事した。

 

「タケルヒノはダーに降りるかい?」

 ジルフーコは言った。

「まあ、ご指名だからね」

 コンソールから目を離さず、タケルヒノは生返事する。

「じゃあ、こっちのほうは面倒見とくよ」

 え? という顔で、タケルヒノがジルフーコを見る。

「ジルフーコは降りないの?」

 え? と、今度はジルフーコが驚いた。

「だって、キミが降りるんなら、ボクが残らなきゃいけないだろ?」

「残ってても、残ってなくても同じだよ。相手は第2類量子コンピュータなんだから、向こうのエリアに入ったら、こっちのコントロールなんかきかないよ」

「ああ、そうか」なにか、ジルフーコは納得して、肩の荷が降りた気がした「じゃあ、ボクも降りよう」

「そうだ、そのほうがいい」タケルヒノは不意に思いついたらしく、急に声が大きくなった「ザワディだ、ザワディを忘れてた。あぶない、あぶない」

「彼も行くのか?」

「当たり前だろ。置いていく気だったのか?」

 自分だって忘れてたくせに、ジルフーコは思ったが口にはしなかった。

 

「ヒューヒューさん」

「はい、何でしょう?」

「ヒューヒューさん、何かよくわかりませんが、みんなで行くことになったらしいです」

「みんな、って、どこに行くんですか?」

「ダーです。第2類量子コンピュータのところです。私、最初、3人だけって言われて、すごく不安だったんですけど、みんなで行くことになって、とても安心しました」

「あの…、サイカーラクラ…」

 ヒューリューリーはとても落ち着きなく体を振って、それは如実に発音にもあらわれた。

「みんなで行くって…、どういうことですか?」

「何人で来てもよいというお話だったらしくて」サイカーラクラは浮ついた調子で言った「私、そのへん、よく聞いてなかったんですけど、タケルヒノがみんなで行くことに決めたらしいです」

「大丈夫なんですか?」

「何が、ですか?」

 サイカーラクラが真顔で尋ねてきたので、ヒューリューリーにはそれ以上、体を回すことはできなかった。

 

 

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